朝が始まった。
目覚まし時計を止め、速攻で髪の応急処置をした後、私は早足でリビングへ向かう。
私の両親は2人共夜遅くに帰ってきて、朝早くにいなくなる。
普通ならなんとも寂しい家庭だが、私は全く気にしていない。
いつも朝食が置いてある冷蔵庫には、スナックパンなどの菓子パンが色々入っていた。
あ、インターホンが鳴った。
第1土曜日と第3日曜日は、勇乃さんと朝食を摂る。
勇乃さんがスナックパンを咥えたまま、私の髪を手で梳いた。
私の顔が赤くなったのは、自分でも分かった。
豪快に私を座らせて、勇乃さんはヘアゴムやら何やらで私の髪を改造し始めた。
本人代理が自我を持たないでください。
勇乃さん好みの髪型にされた後、散々賞賛を受けつつも割とあっという間に朝食を平らげてしまった。
虚勢を張り上げながらも、冗談のつもりで言った。
ここからは家族から隠してあるバイクの点検だ。
私のバイクは我ながら美しく、そして華奢でもあった。
まあ、勇乃さんのバイクには及びませんが。
前輪の部分に蜘蛛の巣が張られている。
いた。何の種類の蜘蛛かは分からないが、見た感じ害は無さそうだ。
その場面の想像で口を笑わせながら、その蜘蛛を持って家に戻った。
偶然家の前を通りかかった知らないお婆さんからは、何か見てはならない物を見てしまったかのような視線を向けられた。
団の話し合いから帰ってきた私は、そのままソファに寝転がった。
スマホをいじっていて、何気なく瞬きをして目を開けたら夜だったはずが朝になっていた。
スマホの充電が凄く減っている。
疲れていたからか、気づかないうちに寝落ちしていた。
何故か私に掛かっている掛け布団は帰ってきたお母さんがやってくれたのだろう。
昨日は土曜日だったから、今日は日曜日。
団の数人で出掛ける約束があったんだった。
私はまた速攻で準備を終わらせ、家を飛び出していった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。