7月に入ると、校舎も少しずつ夏の匂いが混じり始めた
窓の外では笹が揺れ、
廊下では色とりどりの短冊が飾られている
あなたが足を止めると、しゅうとが笹を見て言った
〜〜書き書きタイム〜〜
かざねがりもこんの短冊を覗き見ようとする
すると、りもこんは一歩下がった
ふうはやも悪ノリする
一瞬迷ったものの、言ってくれるらしい
そこへ、ちょうどそこを通った先生が
そして職員室へ去っていく
沈黙
2人がニヤニヤと笑った
りもこんが固まる
目が遠くなるりもこんを隣にして
ふうはやが迷いなく書き終えた
わかりやすく動揺して
一方、しゅうとはペンを握ったまま考え込んでいた
もう開き直ったりもこんが全力で茶化しにいく
しゅうとが少し照れくさそうに笑った
その言葉に、空気が柔らかくなった
ふうはやが笑った
余裕の笑みを浮かべる
風が吹く
短冊同士が触れ合う音がした
四人の背中を見送り
あなたはもう一度笹の前に立った
まだ、自分だけ書いていない
何気なく視線を上げる
色とりどりの短冊
四人の願い
少しだけ、ほんの少しだけ気になった
もちろん探すつもりはない
それでも目に入ってしまう
風が一枚の短冊を揺らした
『第一志望校に合格できますように』
あなたの指先が止まる
誰の字か分からない
四人の誰かかもしれない
違う人かもしれない
それでも
胸の奥が、小さく痛んだ
そうだ
四人は三年生
受験生だ
そこまで考えて、小さく首を振る
今はまだ
そんな先のことより。
あなたは静かにペンを持った
昔ならきっと、
『毎日笑えますように。』
そう書いていた
笑顔は願うものだった
頑張って作るものだった
でも今は違うから
自然に笑える
この人たちといると
だから願いも、少しだけ変わった
短冊にそっと文字を書き、
誰にも見られないように結びつける
風が吹き
五枚の短冊が、夏空の下で静かに揺れた
まるで、それぞれの秘密を優しく隠すように




















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!