第17話

「まだ、名前は変わらないけど」
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2026/06/27 21:28 更新
夏休みが終わって、9月が始まった。

教室の窓から入る風は、
少しずつ秋の気配を帯びていた。
教科書やノートを広げながら、
俺は、何度も時計の針を見てしまった。

(…まだ、かな…)

帰りのホームルームが終わると、
俺は少し早めに生徒会室へ向かった。
秋の文化祭の準備を兼ねた会議があると、
連絡が来ていたからだ。

生徒会室のドアを開けると、
すでに、全員が集まっていた。




「お、らぴす」

「らぴすもきたし、
さっそく、会議始める?」




らいと先輩、ロゼ先輩が続けて
言葉を発する。




「そうするか」




会議は文化祭の出し物や、看板作り、予算の話が
中心だった。
他のみんなが冗談を言って笑い合う中、
俺は、メモを取りながら、先輩の横顔を時折盗み見た。

先輩は真剣に話を聞き、
時折シャープな指摘をしていた。

あの夜のどこか甘い雰囲気は一切なく、
今の先輩は「頼れる生徒会長」の顔をしている。




「この部分、意見あるやついるか?」




先輩が全体に向けて問いかけた。
俺が少しだけ手を挙げると、
先輩はすぐにこちらを振り返った。




「えっと……もっと明るい色を足した方が、
来場者が目を引くと思います」




俺が答えると、先輩は小さくうなずいた。




「なるほどな、さすが。
じゃあ、その方向で調整しよう。
後で一緒に色選び手伝ってくれるか?」

「……はい、喜んで」




他の生徒会メンバー達は
「お、息が合ってるな」なんて笑っている。
シンプルなやり取りだけど、
先輩とこうして、通じ合えている時間が、
胸の奥をじんわりと温めてくれた。








__








会議が終わったあと、
残った数人で片付けをすることになった。

資料を棚に運んでいると、
先輩がすぐ近くにやってきて、俺の肩をポンと叩いた。




「夏休みも色々付き合ってもらったのに、
学校始まって、早々、また手伝わせてしまって悪いな。
ありがとな」

「いえ、先輩の役に立てるなら楽しいですから」




俺が笑顔で返すと、先輩は
「お前は本当にいい後輩だな」と言って、
少し照れくさそうに頭を掻いた。




「夏祭り、楽しかったな」




先輩が、周りに聞こえないくらいの低い声で
耳元に囁く。




「……はい、俺もです」

「特に、花火」




先輩の真っ直ぐな視線に、俺は声が出せなくて、
ただ、赤くなった顔を隠すように、
何度も大きく頷いた。




「よし、じゃあ早くこれ終わらせよう。
終わったら、二人でジュースでも買いに行こうな」




先輩は嬉しそうに目を細め、
また、楽しそうに資料をまとめ始めた。
窓の外からは、部活動に励む生徒たちの声と、
少し涼しくなった秋の風が、聞こえてくる。

まだ『ただの先輩と後輩』という名前のままだ。

__だけど、夏が終わっても、俺たちの距離は、
あの夏祭りよりも、確実に近くなっていた。

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