Kenjaku side
_________ 10月19日 。
もはや渋谷事変まで、二週間もない 。
ここらで面倒事は片付けておきたいところだ 。
目の上の瘤である、上層部以外の高専側の内通者の存在 。
________ 与幸吉と縛りを結んだのは、
宿儺が受肉する前のことだ 。
高専内の情報をこちらに渡す代わりに、
彼の呪いに蝕まれた身体を完全に治す...それが縛りの内容 。
彼の持つ傀儡操術は情報入手に適している 。
現に、この半年余りの間に高専側の人間に
存在を疑われることすらなかった 。
しかし、交流会で大事を起こした今 。
高専側の人間も既にある程度は察しているだろう 。
その内通者が、消去法で彼だということも 。
交流会の際、"京都校の人間には手を出すな"と
言われたが生憎こちらはそんなもの知ったことではない 。
元より、利害が一致しただけ 。仲間ではない 。
縛りの解消を行ったのち、彼は私達を殺しにくる 。
それは彼も私達も、最初から承知の上 。
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高専側の動向はこちらに筒抜けだ 。
今日、与幸吉に尋問がかかることも 。
高専側に彼が捕まる前に私達は場所を変え、
真人の無為転変により縛りの解消をした 。
五体満足となった彼は、私達の知らないところで
彼の術式の極致ともいえるものを造り出していた 。
究極メカ丸絶対形態"装甲傀儡究極メカ丸試作0号"...
何とも仰々しい名前だが、彼に似つかわしい 。
瞬間の呪力出力は、特級をも凌ぐ...
しかし、彼のどこにそんな力が?
考えるのは後にして、まずは外部との連絡の遮断だ 。
五条悟に連絡がいけば、計画が全て水の泡になりうる 。
楔形の帳を地面に突き刺せば、
見えない壁が忽ち外界とこちらの世界を隔てていく 。
... 彼の勝利条件は、五条悟 。
それさえ防いでしまえば、勝ち目はない 。
真人と彼、どちらが負けるか 。
どちらに転がったとしても、私には利がある 。
彼は真人対策もしっかりしているし、
勝率は存外トントン 。
そうしたら________
消耗した真人を取り込み、うずまきで術式の抽出をしつつ
残った与幸吉を殺す...かなり、理想的だな 。
そんな欲望を抱えたまま戦闘を傍観していると、
ついに真人が領域展開をした 。
まさかここで呪力を消耗するとは思わなかったが、
十日もあれば呪力は回復する 。
さすがに領域展開をすれば、彼も対処の仕様がない 。
残念ながら、真人を取り込むのはお預けなようだ 。
そう誰もが確信したであろうその瞬間、
突然領域が崩れた 。
想定外のことに伏せていた顔を上げて目を向けると、
真人の身体が千々に弾けている 。
何故だ?
__________ そうか 。
領域は、あらゆる術式を中和する 。
領域内では、あの五条悟にすら攻撃が当たる 。
それを真人の体内に打ち込み、内側から展開すれば...
真人の術式関係なしに魂は傷付けられる訳だ 。
これは新しい発見 。
窮地に立たされた者は、
こんなにも面白いものを見せてくれる 。
しかし、その面白いものも_________
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私がそう聞けば、真人はあくまでゆとりを持って
先程攻撃された肩を回しながら答えた 。
遠目で見ていたから分からなかったが、
なるほど、真人らしい戦法だ 。
真人を取り込むことこそ叶わなかったが、
どちらにせよ収穫はあった 。
嘱託式の帳の予行練習も、ここで済ませられた 。
これで渋谷事変にて私は自由に動ける 。
渋谷事変当日 。
五条悟の封印まで、
私は決して高専側に存在を悟られてはならない 。
帳に込められた呪力までも、
"夏油傑のもの"だと気付かれてはならないのだ 。
そして、来る10月31日 。
________ 私の願望の第一歩が、ようやく始まる 。
*ようやく渋谷事変です















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!