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第1話

君の名前は? 前編
31
2026/03/12 04:00 更新
神
ここは、とある国のとある城の中。
     おぎゃあおぎゃあおぎゃあ…!!
神
産声と共に聞こえてくる大勢の人の歓喜の声と安堵のため息。
産婆
産婆
おめでとうございます…!!男の子ですよ
王様
王様
ーー…!!頑張ったな…ッ!!
妃
はい…っ、ありがとうございますっ…
神
2人の腕の中で気持ちよさそうにすやすやと眠る子供。
妃
名前はどうしますか、?
妃
せっかくですし、縁起の良い名前が良いですね…
赤ちゃん
赤ちゃん
あう…っ、ぅあッ…!(手伸ばす
妃
…!(ギュッ←手握る
赤ちゃん
赤ちゃん
あー…♪(ニコッ
妃
まあ…っ!ふふ、可愛いですね…(ニコッ
王様
王様
名前は後でいい。まずは休みなさい
王様
王様
本当に良く頑張ってくれた…ありがとう
妃
こちらこそ、ありがとうございます。あなたの支えのおかげですよ(ニコッ
王様
王様
はっは…そうか…よかったよ、私も君の力になれていて
その子供は周りから愛され、恵まれながら瞬く間にすくすくと成長した。
神
その子供は、桜色に光る鮮やかな桃色の髪と目をしていた。
神
それを目にした人々は、「何か良いことが起こる前兆ではないか」と噂するようになった。
神
そのため、「直接見てみたい」という者が増えた。
神
時には良くないことを考える輩も現れた。
神
そのため、城のセキュリティはかなり強くなった。
神
そんな中でも、その子供はすくすくと成長していった。
神
その子供の人懐っこさもあり、たくさんの人から愛される人となった。
それから3年後。
   おきゃあ…!おぎゃあ…!!
また城の中で産声が鳴り響いた。
女の子だった。
この子はどんな子に育つのだろうと希望を膨らませている中、聞こえてきたのは産まれを祝う言葉でも、安堵のため息でもなかった。
きゃあッ…!!
聞こえてきたのは、小さな悲鳴だった。
王様
王様
なんだ、これは…
妃
どうしてこんな子が…っ
赤ちゃん
赤ちゃん
う…、?
赤ちゃん
赤ちゃん
あ〜…、!あ、う!(手伸ばす
妃
っ…!(パシッ
神
妃は、子供から伸びる小さな手を振りほどいた。
神
その子供は、ギラギラと赤く光る眼に、真っ黒な髪の毛をしていた。
神
その子供の不幸は、これだけでは終わらなかった。
「ひいっ…!」

「近づいたら呪われる」

「よくのうのうと生きてられるわね」

「早く殺せ!」

「目が合ったら殺される」
神
その子は、愛されなかった。
神
愛ではなく、嫌悪を振りまかれた。
神
冷たい目線を、何度も送られた。
神
思いがけない言葉も飛び交った。
神
それを、周りは「不幸の前兆だ」と言った。
「あんな子を育てるなんてどうかしてる」

「子供より国民を優先して欲しいわ」

「あんな子供がいると思うと仕事に集中できない」

「いつかうちにも不幸が訪れるのかしら…」

「早く殺せ」

「そんな子供うちにはいらない」

「愛情なんか必要ない」

「早く消えろ」
神
そしてとうとう、その周りに耐えられなくなった王様と妃は、その子を人通りの少ない場所にそっと置いた。
妃
ごめんなさい…っ
王様
王様
……誰か来る前に早くしなさい
妃
ええ…ごめんね…っ、大好きよ…ごめんねっ…
赤ちゃん
赤ちゃん
あう…?(手伸ばす
妃はその手を無視し、王様と馬車へと向かった。







それからずっと、満月の光る道の端で、赤ん坊の鳴き声が鳴り響いた。
誰も、見なくなった。誰にも、愛されなくなった。
数年後─…
メイド
メイド
ないこ様!!早くお着替えになってください!!
桃(10歳)
桃(10歳)
やだもんねーっ!!
メイド
メイド
あっ、ちょっと…!お待ちください!
俺はないこ。138cm、31kg。まだまだ成長する!!
好きな物は遊ぶことと食べること。嫌いなものは他の国の人と話すことと書類整理。
そんな俺は今、メイドと鬼ごっこをしている。
アニキじゃあるまいし、そう追いつかれることはないだろう。
それに、人間は1度いた場所には戻ってこない。
すなわち、最初にいた俺の部屋は必ず見に来ない!!
だから今俺は、自分の部屋に隠れている。
我ながら完璧な作戦…!!(ドヤッ
桃(10歳)
桃(10歳)
はーあ、なんて俺が戴冠式なんか行かなきゃいけないんだか!
桃(10歳)
桃(10歳)
大人で勝手にやってよ!俺には関係ないんだし…
ガチャ
桃(10歳)
桃(10歳)
……え?
水
…あ、やっぱりここに居たんですね、ないこ様
桃(10歳)
桃(10歳)
げっ…ほとけっち…
水
はい、ないこ様の大好きなほとけっちです
水
1週間後には戴冠式が控えております。早めに服の採寸なども行っておきたいのですが…
桃(10歳)
桃(10歳)
いや!!
水
どうしてですか?
水
戴冠式、楽しいですよ?"美味しいお料理"も沢山ありますよ?
桃(10歳)
桃(10歳)
う゛…
水
要らないんですか?美味しいお料理。食べなくていいんですか?美味しいお料理
桃(10歳)
桃(10歳)
い、いや!!
水
…どうしてですか?
水
理由を教えてください
桃(10歳)
桃(10歳)
嫌なもんは嫌なの!
桃(10歳)
桃(10歳)
理由なんてない!!
水
そういう時ほどありますよね、理由。何年一緒にいると思ってるんですか?
桃(10歳)
桃(10歳)
いうて3年じゃん
水
……ですが、このまま出席しないのは…
桃(10歳)
桃(10歳)
………
必殺、無視!!
水
言ってくだされば、なにか僕に出来ることがあるかもしれません
水
それにその理由によっては、1週間後の戴冠式の参加を断らねければなりません
水
できる限りでいいので、話してはくれませんか?
水
ちゃんと聞きますから(ニコッ
桃(10歳)
桃(10歳)
……
桃(10歳)
桃(10歳)
おかあさんと、おとうさんが、色んな国の人と話す時に…なんか、その…相手の機嫌を取ってるみたいな感じがしてやなの
桃(10歳)
桃(10歳)
俺も、王様になったら、おとうさまとおかあさまみたいに色んな人の期を取りながら話さなきゃいけないのかなって…思っちゃう…
水
……なるほど
……「わがまま言うな」って怒られるかな
水
ないこ様は、きちんと最後までお二人のご様子を見たことがありますか?
桃(10歳)
桃(10歳)
様子…?
水
はい。お父様とお母様が色んな国の人と話している時、ないこ様は毎回部屋に行ってしまいますよね
桃(10歳)
桃(10歳)
………そう、かも
水
でしたら、まずはそこからではないですか?
水
ないこ様が、この国を引き継ごうとしている気持ちは良いことです
水
それならば、今の王様であるお父様のことを、お母様のことを、よく観察するのも今ないこ様が出来ることではありませんか?
桃(10歳)
桃(10歳)
……たしかに
水
ですよね?では、今ないこ様にできることはなんですか?
桃(10歳)
桃(10歳)
……戴冠式で着る服の採寸
水
そうです。偉いです、さすがないこ様です
桃(10歳)
桃(10歳)
ふふんっ
桃(10歳)
桃(10歳)
もっと褒めて!!
水
ふふっ…はい、もちろんです(ナデナデ
水
今回の戴冠式は、よく頑張りましたねないこ様
桃(10歳)
桃(10歳)
えっへん
桃(10歳)
桃(10歳)
大天才の俺にかかればこんなこと簡単だよ
水
ほんとそうです!ないこ様天才です!!
桃(10歳)
桃(10歳)
ふふん、ふふふんっ
水
それでは、明日は他の国にお邪魔するので、今日はここまでにしてもう寝ましょうね
桃(10歳)
桃(10歳)
えーっ!!まだ喋りたい!
水
とてつもなく嬉しいのですが…
水
明日の方が大事ですので…
水
明日の用事が終わりましたら、たくさん話しましょうね(ニコッ
桃(10歳)
桃(10歳)
…!!
桃(10歳)
桃(10歳)
うん!!!



桃(10歳)
桃(10歳)
ねぇほとけっち
水
はい、なんでしょう?
桃(10歳)
桃(10歳)
なんか眠れる歌歌って
水
歌…ですか…?
水
僕、あまり上手ではないのですが…
桃(10歳)
桃(10歳)
下手でもいいよ
桃(10歳)
桃(10歳)
歌って
水
はあ…よろしいのですか…?
桃(10歳)
桃(10歳)
俺がいいって言ってるからいいの!
桃(10歳)
桃(10歳)
早く!なんでもいいから歌って!
水
えー…と、じゃあ…
水
〜〜…♪
桃(10歳)
桃(10歳)
ふふ…ほとけっち…歌…じょうず…だね…♪
水
ほんとですか?よかったです♪
水
〜〜〜…♪
桃(10歳)
桃(10歳)
…スゥ…スゥ…
水
〜…♪
水
……ふふ、おやすみなさい、ないこ様





八年後
ガチャッ!
桃
ほとけっち!!!外!!行こ!!
水
何かと思えば…ないこ様ですか
水
書類のサインは終わったんですか?
桃
まだ!!
桃
気分転換に外行こ!
水
はぁ…(頭抱
桃
だって〜!!城の中は広いけどつまんないんだもん!
水
探検とかすればいいじゃないですか
桃
適当…
桃
てか、探検って言ってもどこ歩くのさ…?
桃
この城見飽きた、外行きたい
水
まあそう仰らずに
水
この国にまつわる都市伝説をご存知ですか?
桃
都市伝説!?✨️
桃
なにそれ!!聞きたい!!
水
ふふっ、落ち着いてください。今話しますから
桃
早く!
水
それは、今よりもだいぶ昔の出来事であります。
とある山に暮らすおばあ様が、「道に迷った」という青年を家で養いました。
ところが、その青年は何も言わずにご飯を食べ、お風呂に入り、歯磨きをし、そして眠りに入りました。
不思議なことに、その青年は一度もおばあ様と目が合わなかったのでございます。
そしてその翌日。おばあ様が目を覚めると、枕の元に大量の金が。そして「世話になった」と不器用な字で書かれている紙。
こんな大金、どうやって用意したのだろうか、とおばあ様は不思議に思いました。
桃
どーせそれ、どっちかが幽霊だったってオチでしょ?
水
…ふふ、違いますね
水
それから数年後、そのおばあ様は亡くなりました。
その報せを知った青年は、もう一度その山の家に訪れました。
するとそこには、「健康に気をつけて」と思いやり溢れる字の文と、大金が置かれてありました。
そう、この2人は親子だったのです。青年は家を尋ねておばあ様を見た時、瞬時に気が付きました。しかし、おばあ様は全く覚えておりませんでした。まさか、目の前におるのが、生き別れになった息子だとは気づかないまま、一日を過ごしていたのでございます。
「あの時もっと話しておけばよかった」と大変深く、深く後悔した青年なのでした。
桃
なにその感動する話…
桃
…てか、それがなんで都市伝説なの?
水
このお話をきっかけに、山で養われる時は、必ず文と金を残していく、という皆の習慣が付いたのですよ
桃
え!そうなの!?
水
はい、知らなかったでしょう?
桃
うん!知らなかった!
水
では、仕事をやりますので、部屋にお戻りください
桃
ちぇっ…釣れないなぁ









桃
…はぁ
親もメイドも執事も、みんな過保護すぎて俺は外に出たことがない。
外に出れても、それはただの親の仕事の付き合いだ。
俺ももう18歳だ。もう結婚もできる立派な大人だ。
それなのに、みんなはまだ俺を心配する。
外も衛兵だらけで、簡単に外に出られない。
桃
…衛兵……あ!
そうだ、アニキに頼もう。














桃
えーっと…アニキどこだ?
誰にもバレずに衛兵達の訓練場に来た。
相変わらず暑苦しいなここ。
桃
アニキ…アニキアニキ…
呪文のように彼の呼び名をブツブツと唱える。
トントン(桃の肩を叩く)
桃
わっ!?(小声)
黄
お前何しとんねんこんなとこで
桃
あ、アニキか…
桃
あ、ちょうどいいや!ねぇアニキ!
桃
俺の事外に出してよ!
黄
……は?
桃
俺の事、外に出してよ!
黄
いや聞こえてへんわけちゃうで
黄
どういうことやねん?
桃
いやー、俺さ、外出れないじゃん?
黄
今出れとるやん
桃
違うんだって!城のまわりにいっぱいウジャウジャ衛兵いるでしょ?だから、衛兵ぱぱっと退かしちゃってくんない?
黄
はぁ゛……
黄
何のために俺ら衛兵がおると思ってんねん…
桃
ねっ?アニキ…お願い…✨️
黄
……知っとるか?
黄
ほとけってな、怒ると怖いんやで
桃
なにその脅し方。こわっ
桃
一瞬だけ!ほんの一瞬!
黄
その言葉に何回騙されたと思ってんねん
黄
ダメなもんはダメや
黄
さっさと中戻れ
桃
ちぇっ…
アニキも無理だったか…
この前はこれで成功したのに。
すぐにほとけっちにバレてめっちゃ怒られたけど。













桃
あーあ…
毎日暇。メイドと遊びたくても、「身分が〜」って言い訳して遊んでくれないし。
1度だけでいいから、外で自由に走り回ってみたい。
誰の目も気にせず、買い物とかしてみたい。
もっと、色んな場所に、自分の足で行って、たくさんの美味しいものを食べてみたい。
父様と母様は自由に外出れてたくさん出かけてるのに、俺だけ城の中一人で留守番は酷すぎる。
水
…またアニキの所に行ってたんですか?
桃
げっ…ほとけっち…
水
げってなんですか。悪巧みしようとしてますね
桃
…なんで俺は自由に外出れないの?
水
危ないからですよ。みんなも、貴方のことを心配しているです。
桃
俺もう大人なんだけど
桃
もう一人で歩けるし誰もいなくても生きてけるよ?
水
はぁ…それは、今貴方がお城の中にいるからでしょう?
水
メイドも執事もいるんですから、生活は苦しくないはずです
桃
でも…っ
水
でもじゃありません
水
あなたは2年後、この国を収める国王となるのです
水
その自覚が、今のないこ様にはないように見えます
桃
あるわけないじゃんッ…!!
水
…!
桃
俺だって、しっかり国王として頑張らなきゃって思ってるよ…!!
桃
でも、もう2年後には国王になる俺のことをいつまで経っても「危ないから」とか「心配してるから」って変な理由考えてずっと城の中に閉じ込ませるの!?
桃
そんなのっ…あんまりじゃないかッ…
水
……甘えたことを言わないでください
水
あなたは、ダイス王国の第一王子です
水
この国の未来を託された御方なんです
水
王様と妃の元に産まれたのであれば、それは避けられない道でございます
桃
………った!
水
…え?
桃
こんな家に産まれたくて産まれたんじゃないッ…!!
水
っ…!!
桃
こっちは親を選べないんだよッ…!?
桃
小さい頃は、俺だって褒められればいいって思ってた
桃
でも、今はそうじゃない
水
……
桃
今の俺は、昔の俺じゃないっ…!!
桃
昔の俺も、今の俺じゃない…!!
桃
だからっ、もう昔みたいな扱いは嫌なんだよッ…!!
水
……言いたいことはそれで終わりですか?
桃
っ…、そうだけど
水
では、こちらも言わせてもらいます
水
僕たち国民は、あなたの誕生を大いに喜びました
水
その桃色に光る髪も目も、全て「幸せの前兆だ」とみんなが信じていました
水
そしてすくすく成長したあなたは、見事に国の顔となるほど、立派に育たれました
水
そして、国民のみんなにたくさんの幸せを届けてくださいました
水
その裏には、たくさんのあなたの努力がございます
桃
…っ、!
水
それを知っているのは、僕たちだけでございます
水
城の外では、あなたの努力も、全て水の泡となってしまうほど、誰も救ってはくれません
水
それでも、あなたは、外に行きたいと願いますか?
水
必死に貴方を守ってきた僕たちの努力も、簡単に踏みにじるおつもりですか?
桃
っ…そんなこと…ッ言われたら…何も言えないじゃん…
水
はい、知ってます。あなたは優しい方ですから、他人の悲鳴を知らないフリなど出来ません
水
…あなたのことは、僕がたくさん知っています
水
ですが、あなたの痛みは僕も分かりません
水
話していただき、ありがとうございます
桃
…!
水
僕も、正直な所、最近の王様とお妃さまは、ないこ様への執着がすごいなと思っておりました
水
僕めも一緒で構わなければ、外へ行きませんか
桃
え…っ、!
水
アニキも一緒に連れていきましょう
水
そうすればきっと、王様も許してくださいます
桃
やつたー、!ほとけっちありがとう!!
水
いえいえ、その代わり、帰ってきたらしっかり仕事やってくださいね(ニコッ
桃
……はい

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