第53話

第2章 51話「風の中の約束」
11
2025/09/13 12:09 更新
陽射しが少し傾き始めた午後。
店先の花たちが、風に揺れてささやいているようだった。
(なまえ)
あなた
……このチューリップ、明日には咲きそう。なんか、待ってるみたい
(なまえ)
あなた
(誰かの言葉を、誰かの手を)
佐野万次郎
咲いたら、見せて。俺、あなたの下の名前が選んだ花、好きだから
(その言葉に、少しだけ照れくさそうな笑みが浮かぶ)
松野千冬
珍しくまともなこと言ってるじゃないすか。春の魔法すか?
羽宮一虎
いや、あなたの下の名前の魔法だろ。……なあ、今度さ、みんなで花見とかどう?
場地圭介
花見?お前が言うと、酒と騒ぎしか浮かばねぇな
三ツ谷隆
でも、いいかもな。あなたの下の名前、休み取れそう?
(なまえ)
あなた
うん、みんなが来るなら……準備、頑張るよ
(なまえ)
あなた
(こうして季節が巡るたび、少しずつ距離が縮まっていく)
龍宮寺堅
じゃあ決まりだな。来週末、あなたの下の名前の花屋集合。
風が吹き抜ける。
誰かが笑って、誰かがうなずいた。
その瞬間、まだ言葉にできない約束が、風の中に溶けていった。

プリ小説オーディオドラマ