家に着いた。
姉は心配しながら私の体を拭いてくれた。
その時は意識が朦朧であまり聞こえなかったのだが、ある一言ははっきりと聞こえた
その一言で2人は走り出した。
靴も履かずに、小さな手を繋いで、
雨で体が冷え手足の感覚が鈍くなりながら、
ただただ走った。
途中で疲れ果てて転んでしまった。
膝と手から血が流れる。
姉の方を見たら何故か上を見て震えていた。
恐る恐る私も顔を上げると長髪の老いた男性と着物の着た美しい女性が立っていた。
男が言った。
私は怖かった、逆らったら死ぬ。
幼いながらも恐怖という感情で体が動かなかった。
姉はそう言った。
されど7文字、たかが7文字、でもその7文字には姉が悩みに悩んで絞り出したんだと、わかった。
姉と男が先に歩いた。私も行かなきゃ、でも足が思うように動いてくれない。
その時、女性が手を差し伸べてくれた。
その人が考えていたことはわからないけど、私は初めて姉以外からの優しさを目で見たのかもしれない。
あぁ、人からの優しさってこんなに暖かいんだ、体は冷えきってきたが、
何故か心がとても暖かった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!