【紫耀サイド】
一通り泣いて、涙も少し落ち着いたところで
ひとつ呼吸をした。
そして楽屋の扉をゆっくりと開けた。
廉からそう聞かされた。
本当は悲しくて辛いはずなのに。
いつも笑ってた。
紫耀...、あとは頼んだで。
そう言われた。
今の俺に海人を支えることができるのだろうか。
なにも気づかなかった俺に。
不安はあったけれど、とにかく俺は
海人に想いを伝えたい、そう思った。
開けた楽屋で海人はジンに抱きしめられていた。
岸くんはひとり目元を押さえていた。
そう言葉を投げ掛ければ、海人はジンの胸から
ゆっくりと顔を上げた。
その顔はやっぱり泣いてなくて。
少し困ったように笑っていた。
家につき、腰を降ろす。
そういって笑い、珈琲を準備する海人。
よく見れば腰あたりが細くなったような気が
するし、頬もこけた気がする。
肌も以前のような艶は減ったようにみえる。
飯をあまり食べてないような気はしてたけれど
こんなにも見た目に出ていたなんて。
俺は自分のことで精一杯で海人のこと
みてなかったんだって痛感した。
自分の体をみる海人。
海人のほうを向いて頭を下げた。
海人の言葉は強く俺がこれから言おうとする
言葉を否定した。
ギュ、と抱きしめられて俺の胸の中で
そう自分の決意表明かのように伝える海人。
もう海人の中ではたくさんのことを考えて
悩んで悩んで出した結果なのだろう。
俺ができること。
それは海人の決意を無駄にしないことなのかも
しれない。
俺は海人の両肩を両手でつかみ
海人を見つめた。
伏せていたその潤んだ瞳が俺を捉えた。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。