全日本選手権、当日
会場の廊下は、張り詰めた空気と熱気に包まれていた
あなたは出番を控え、
集中を高めるためにバックヤードを歩いていた
角を曲がった、その時だった
薄暗い通路の隅で、壁にもたれかかる影
独特の威圧感、そして微かに漂うタバコの匂い
あなたは足を止めず、
ぷいっとそっぽを向いて通り過ぎようとした
3年間無視し続け、先日のリンクでも
冷たくあしらった相手だ。今さら話すことなんて──
ガシッ
通り過ぎざま、強引に腕を掴まれ、
そのまま背後から引き寄せられた
視界が回転し、気づいた時には、
純の硬い胸元に背中がぴったりと押し当てられていた
耳元で、低く、震えるような声が響く
純はあなたの肩に深く顔を埋めるようにして、
呪文のように囁いた
劇的な台詞
映画のようなシチュエーション
普通の女の子なら腰が抜けるようなシーンだが、
あなたは一瞬の沈黙の後、真顔で言い放った
夜鷹純は、バツが悪そうにスッと腕を解いた
だが、その表情はすぐに元の冷徹なものへと戻る
その時、純のポケットの中でスマホが激しく振動した
画面には「光」の文字
純はそれを見るなり、深く、忌々しそうに舌打ちをした
次の瞬間、あなたは目を疑った
純は手に持っていたスマホを、
ためらいもなく壁に向かって全力で投げつけたのだ
──ガシャアァァァン!!
粉々に砕け散ったスマホ
純はさらに、その破片を足でゴミ箱に押し込むと、
仕上げとばかりにゴミ箱を思い切り蹴り飛ばした
虚しい音が響き渡る
純はスマホを失ったことなど微塵も気にする様子なく、
悠然と去っていった
最悪の再会に頭を抱えていると、
遠くから焦ったような声が聞こえてきた
あなたは、背後の惨状をコーチに見られないよう
隠しながら、大急ぎでリンクへと走り出した













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。