

困惑するように、でも少しだけ安堵するように揺れる魔女帽子と、
冷静さと同じくらいの警戒心を抱えたような白い髪。
見慣れた一挙手一投足になんだか安心する。
二人は夕立渚朝と日登叶哀。
俺達二人と同じく幻創学園の生徒であり、そして所謂俺達の友達である。
…そのいわゆる”友達”が俺達二人にとっては凄く少ないというか、いや勿論孤立してるとかではないんだがこう、同年代のめっちゃ仲いいダチって言うとこの二人位だから(年齢的には一個違いではあるけども先輩後輩だとかそういう感じは1ミリもない)。後俺ら二人もお互いにともだち…では、まあ、あるのかも、しれないけど。改めて考えると。
成程。…ただ俺達だけに降りかかった突然の試練、と言う訳ではないらしい。
明るい(そしてクソ煽りする)渚朝とどちらかと言うと大人しめな印象を受ける(そしていつものようにツッコむ)叶哀。日常茶飯事だ。
正反対…少なくとも似た物同士とかにはとても見えない二人だけども、実際凄く仲は良いし基本いつでも二人で一つって感じで同じ場所にいる。後しょっちゅう煽り合ってるけど普通に仲が良い事も(無駄に)お互いプライドが高いだけな事も知っている。しょっちゅうつるんでいたから当然わかるし知ってる。
金属が立てた鈍い音を今でも覚えている。叶哀は普通に取ったんだろうか。そう考えると無理やり外した俺ちょっとバカみたいじゃない??
とまあそんな事はどうでも良いとして
現状記憶があいまいになってる感が否めないのだが、そんな二人の事は忘れる事なくずっと覚えていた。声が聞こえた瞬間に反応もしたしね。
で、そんな二人も俺らと一緒に巻き込まれたみたいだった。…果たしてこの二人だけか、と聞かれると、…それはなんか勘的には違う気もするけど…
【 夕立渚朝の絆のカケラ 】、【 日登叶哀の絆のカケラ 】_____…も一緒だな。
わざわざ言われるまでもなくとっくに今の時点で5つ、規定量の最高まで埋まっている。伊達に友達をやってない。
____そんなこんなで、
いつもの4人による幻創学園探索大計画が結成されたのだった。
…見知った顔がいるってだけで安心感が更に凄い。
し、
それとはまた違う、何か別の、もっと遠い場所にある____
___そして、もっと巨大な「なにか」が、脳の奥でどうにも引っかかる気がするのも、
…密かに、けれど、確かに事実だった。
計ったように各々のポケットから出てきた見覚えのないそれを見比べる。
閉じ込められた時に入れられてたんだろうか、黒い、スマホと同じくらいの大きさの…電子の板。もっとも、大きさや形が同じってだけでスマホとは何だか違う気がするが。
_____画面を叩いてみると、ピ、と「 幻創学園電子生徒手帳 」という文字が浮かび上がる。…横向き運用なんだろうか。やっぱりスマホとは似て非なる…ってのはどうでもよくて。
まばらに押す音と共にそれが映し出される。マッピングされた見取り図の様なマップと、現在地と_____ここは、表示されてる通り3階廊下。うん、俺らの居場所と一致してる。映し出される地図も記憶にぼんやりとある通りだ。
マップの各地には何やらポインターみたいに光が点在していた。この階だけじゃなくて、一階、二階、中庭だとか、兎に角色んな所に。
前できゃいきゃいしてる二人を見ながら二人後ろで並んで進むのでした。
廊下を曲がって少し進むとそこには一つの同い年位の男子がいた。
水色の髪を控えめにゆらゆらと揺らしながら何かを考え込んでいるそいつは、俺達を見るとぱ、と顔を上げて

本当にこの不可思議なスポーン場所・方法は全員共通なんだろうか。…何でそんな手段を?
どうでも良いような方の一つの言葉に何故だか脳裏が反応した気がした。
何故?…ってのは、今すぐじゃなくてもいいか。

才能内緒とか良いんだ、って一瞬思ったけど、…そりゃ良いか。言わなきゃいけない理由も無いもんな。
なんてぼんやりと思ったのは、
” 近くで見て来た筈なのに ” ぼんやりそう思ったのは、
____もう慣れたから、なのかな
体の方向を変えて指差したのは俺達がまだ言っていない更に奥の廊下だった。…成程?
なんて言ってじゃあまたねー、なんて笑って手を振る叶音の更に奥へと進んだ。
普通に明るくて良い奴に見える。フレンドリーってかコミュ力高いというか。
…なんだけど、
…ただそれだけ、だよな?
その明るい笑顔の奥に、なんだか「何か」があるように見えたのは
気のせい、なんだろうか
どうせならそうであってほしいけどな
そんな違和感を少しでも咀嚼するように、
少しだけ足を速めながら3人とこの状況にしては下らない事を話していた。
____確かに、その場所に人はいた。
けどそこに怒鳴り声なんて飛び交っていないし、漂う空気はただ静かで、そこだけ切り抜いた様に落ち着いていて、…そもそも、そこに立っていたのはただ一人で。

” …本当に? ”
本当に、一人だったのか?
脳の奥がちか、と反応した。いつもの勘、…嘘?
その笑顔のまま吐かれた言葉がどうにも怪しくて、靄が掛かってるように聞こえた
嘘だとして、何で嘘なんだろう。仮に本当だったとしたら何で俺の脳裏は反応したんだろう。
…反応しておいてあれだけど、だからといってそこまで直接的に重要な嘘かと聞かれるとそれはそれで何か違う気がして、じゃあ何で
…何かあったのか?
とりあえず笑って話を振った。…今は良いか。

そいつは恭しく笑顔を浮かべて恭しく頷いた。…所作の一つ一つがこう、麗しい?ってのとはまた違うけど、こう気品みたいなものがあって…神父ってのも納得できる。
全体的に大人びてる…というか余裕そうな雰囲気があるけど、こいつも俺らと同じく高校生…なんだよな。
…その笑顔が本物の、”ただの善人”のものなら良いんだけどな。
…さっきから二連続で邪推してるみたいで何かあれだが、いや、うーん…
その顔は、雰囲気は、両手を結んで祈りを捧げる様だった。…そうだよな、神父で、しかも「超高校級」なんだからそりゃあ信仰してる”神様”がいるんだよな。
…神様、かあ…
その笑顔は、日常を慈しんで楽しむようなものではなくて
一変したように、非日常を手繰る____愉しむような、そんなものにすら見えた
その笑顔は不明瞭な未来すら面白がっているように見えた。こいつは人間だ。人間だし、人間に見える。___…けど、どこか、”それだけじゃない”ような、そんな気もして。
ほんの少しだけ真剣な表情になって、それでも足は止めずに、そんなこんなでその場から離れる事にした。…予想通りチェックポイント的な光は、後から確認すれば赤色に変わっている。
…価値観なんてそんな簡単にわかるものでもないけどさ。
【 体育館前廊下 】
ここから近いし光が一緒に3つもあるし、と向かった廊下を曲がる。
___あ、本当にいた。何やら親し気に話す背丈が3つ。



薄桃色の髪の奴がこちらに気づいて振り向いて、
電子生徒手帳(やっぱり改めて他の奴らの手にも渡ってるっぽい)と大きな扉を交互に見てた黒髪の奴もその素振りで気が付いて、
いち早くこちらに気づいて体を縮こまらせていたもう一人の黒髪の奴は少しだけ委縮するみたいに呟いた。全員女子だ。
本当に明るい奴、って感じがした。そしてそれにツッコミ入れたりして笑ってる、本当に「子供」って笑えるっぽい程度には大人びていて相手より身長も高い奴と、すぐ隣同士の二人とは少しだけ離れたところで口を挟んでる奴。

放つ言葉はハキハキと通っていて、本当に誰とでも仲良くできるようなそんな雰囲気。
…強いて言うなら、長袖。
そこらを走り回る様な元気溌剌な雰囲気とは少しずれるというか、ワンテンポ遅れてやってくるような何かがある気もするけど、
何かあったのだろうか、とほんの少し点灯した脳裏をまあ今はいいか、と覆う。

令嬢、と肩書を言われると納得する。確かに洒落た服着てるし、こう、雰囲気が…
何か有名どころの家なんだろうか。知ってるかな、とちらっと隣を見たけど海原も多分顔的に知らないっぽいな…
でも実際、その立ち振る舞いだとか所作だとか、そういう一つ一つの「お姫様」感が凄いのは事実だった。自然と目を惹かれるような感じ。

そんな事あるのか?ってレベルのスペックだな…
まあ、確かに本人が言った通りこの学園には超高校級の不幸だとか不運だとか、そんな感じのマイナス方向に突き抜けた様な才能を得る奴もいるし、おかしくはないのかもしれない。それにしたって劣等生って肩書きはどうなんだとは思うけど。
…後、”マイナス方向の才能の肩書きを貰った”って言うなら、すぐ近くにも心当たりが____________
友優は本当に友達思いというか、兎に角ムードメーカーでたくさん周りのことを見てるって感じがする。…後何も言ってなくても表情で思ってることがわかりやすすぎる。
うーーん賑やかだな凄い
三人とも性格というか雰囲気は違うけど普通に仲も良さそうで、…まあ三人っていうか一人はほぼ黙って見てるだけだけど、それによって気まずさとかが生まれてる感じもしないし。
あ、やっぱそうなんだ
勘的にはそうかなーって思ってた。…ということは本当にコミュ力高いんだろうな、後馬が合うっていうのか
そんなこんなで解散する事にした。
少しだけ安堵するような表情で息を吐いた渚朝と、そのすぐ隣を歩く叶哀を横目に、
…ほんの少しほっとした事は、海原も同じみたいだった。
【 食堂 】


何やらそこにあるものをまじまじと見つめる二人の男女の姿があった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!