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第2話

懐かしきあの場所
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2026/08/10 08:44 更新
今日は冬が余命宣告されてから二日目だ。
今は二人で外を歩いている。
無意識に手も繋いで、
私は冬にくっつき、甘えている。
いなくなることが怖くて
離れられないのだろうか。
冬
…なんで手繋いだの?
春
え?
冬
いや、いつも遠慮するのに積極的だなって。
春
んー、わかんない。
冬
…なにそれ。
二人で微笑みながら適当な会話をする。
これだけでもよかった。
冬と話すだけで十分楽しかった。
冬
ん、着いたよ。
今は歩いてすぐ来れるが、
ここはとってもいい雰囲気のカフェだ。
私が告白してから初めてのデートは
ここで起こった。
春
何頼む?
冬
んー…春はなににする?
春
冬のに揃える。
冬
じゃ、パンケーキでいいか?
春
…いま私と揃えるからって
頼みたかったの遠慮したでしょ。
冬
だって好きそうじゃない?
春
いや…そうだけどさ。
礼儀を遵守して、こう言う遠慮もしてくれる
優しさが、私は大好きだ。
春
トッピング変更は…
冬
クリームとチョコソースと
スプレーチョコ追加と
ブルーベリー抜きでしょ?
春
ふぇ!?
つい驚いた。
変更したかったものを全部当てた。
覚えてるのだろうか。
春
…な、なんで覚えてるの。
冬
初めて来たとき思い出に残ったから。
春
…はずいよ…///
冬
顔真っ赤。
春
いわないで!///
冬は余計なことを言う。
女子の天敵である。
そうして、注文がまとまった。
ベルを鳴らすと、すぐに店員さんが来てくれた。
冬
スペシャルパンケーキ二つ。
片方はクリーム増し、チョコソース、
スプレーチョコ追加と
ブルーベリー抜き。
もう片方はいちご増しで。
注文を繰り返される丁寧な接客を受け、
私たちはパンケーキを心待ちにした。
春
…そう、私がさっき顔赤いって
言われたので思い出したけどさ。
冬
思い出し方どうなってるの…
春
冬って顔赤くなることないよね。
冬
んー、そうか?恥ずいことは恥ずいぞ。
春
私たちが付き合ってから同棲し始めて、
一緒にお風呂入り始めてから、
1ヶ月くらい顔赤かったとか冬が言ってた。
冬
かわいかったよ。あの時の春は。
私はまた顔を赤らめたのを自覚した。
…しかし、引っかかった。
「あの時」に。
春
…あの時、ってどういうこと。
冬
今も十分かわいいぞ。
春
…あの時と比べたら?
冬
んー、ずっと変わらない。
でもずっとかわいい。
春
…ならいい。
私は恥ずかしかったのを誤魔化すように
携帯を触り始めた。
誤魔化しに気づいたのか、
冬が話しかけてきた。
冬
春って好きな漫画とかあるの?
春
…んー、あんま読まないな。
冬
女子って本とか漫画とか好きそうなイメージ。
春
私は誰かと過ごせればとりあえず楽しいから。
冬
じゃあその「誰か」の中で
誰がいちばん?
春
…ねぇ、言わせないで。
冬
なんて?
春
言わせないでって。
冬
なにを?
めんどくさい絡みをしてくる。
でも別にこういうのが嫌いなわけじゃない。
冬は昔からとてもからかい上手。
春
…
冬
俺じゃないの?
春
そう。
ちょうどいいと思って簡単な返事をしたのに
冬
文章で。
春
…冬がいちばんだよ。
冬
ん、うれしい。
春
…わざわざ言わせなくていいじゃん…///
冬
ほら顔真っ赤。
春
だから言うな!///
冬
今度は耳まで真っ赤。
春
いい加減にしてよぉ!///
冬
ふふっ。
冬は面白がってる。
今度仕返しを考えておこう。
こう見えてあまり純粋じゃないのは
冬には秘密にしている。
そうして会話をしていたら、
パンケーキを運んでこちらに向かう
店員さんが見えた。
私たちの席に近づき、
豪華なパンケーキを二つ、机に置いた。
冬
うん、今日も美味しそうだな。
春
一口交換しよ。
冬
ん、いいぞ。
冬は自分のパンケーキをナイフで切り、
私のパンケーキの乗る皿にイチゴと共に置いた。
でも私の求めていたことには届かなかった。
春
…冬は気づかなかったかぁ。
冬
…なんのこと?
私は無言で自分のパンケーキを
フォークに刺し、冬に差し出した。
春
あーん。
冬
っ…
春
ほら、食べて。
それか、いらない?
冬
…もー。
冬はそれだけ呟いて食べてくれた。
開く口はいつもより小さくて、
かわいらしかった。まるで女子のように。
春
冬が女子みたい。
冬
…小学生の時に春に言われた。
春
そんなこと言ったっけ。
…で、どう?パンケーキ、おいしい?
冬
…おいしい。
春
どんな味?
冬
…どういうこと。
本当に鈍感である。ここまでされてわからない。
かなりの純粋だ。
春
私のフォークだよ?
私、一口食べてからあげたの。
冬
……感想、言わなきゃだめ?
春
言って。
冬
…甘い。
春
私の味は?
冬
……
春
…珍しいね。冬が恥ずかしがるなんて。
冬
恥ずかしがってなんかな─
春
じゃあ、目逸らさないで。
冬
…むり。
春
ずる。私と違う。
そうやって話していたら、
あっという間にパンケーキは消えてしまった。
春
ごちそうさま〜。
冬
美味かったか?
春
うん!
まだ昼の2時。
明日もまた出かける。
でも、百日毎日遊ぶと言うわけで、
一日に二店までしか行かない、というのを冬と決めた
春
今日は家に帰ろ。
冬
わかった。
春
また明日も出かけるよ。
冬
ふーい。
気の抜けた返事だ。
本当に覚えててくれるだろうか。
春
楽しみ。
冬
だね。
そう言ってまだ人のいる帰路を、
他人(ひと)に見せつけるように
手を絡めて歩いた。なんだか気持ちがよかった。
いなくなるまで間もない生活の始まり。
終わってしまったらもう冬は亡(な)い。
だからこそ。
    〜あと、99日だけ、愛してあげたい。〜

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