案内されて着いた先は、
まさかの高級焼肉店として名高い叙々〇。
こんな所に私みたいな貧乏人が
入っていいのか分からなくて、
扉の前で固まってしまう。
……というか、足が震えてきた。
舌打ちと共に朝日を睨みつければ、
そんなの気にしていないような笑みで
手を引かれる。
3方向からグイグイと、押され引っ張られ……。
こうして私は、半ば強引に
叙〇苑の入口をくぐった。
いや、くぐらされた。
店内に入れば、高級そうな
匂いが鼻を満たして、
これだけでご飯食べれるな……
なんて思ってしまう。
高級店特有の接客。
効率重視のチェーン店とは違う、
美しさを追求したような、
この接客態度にすら
お金がかかっているような話し方。
乃依に両頬を引っ張られ、
ほっぺの肉が伸ばされてジンジンする。
でもバイト漬けの私には
誰かとご飯に行くのも、
こうやって戯れるのも、
全部が新鮮で、全部が真新しい。
その後、私たちは
案内された半個室の席へと座った。
席に座れば、すぐに朝日から
メニュー表とタブレットを渡される。
足の次は、メニュー表を持つ手が震えてきた。
0の数を数えて、数えては震えが強まる一方。
それから、続々とテーブルに運ばれてくる
肉たちを朝日が焼いてくれた。
高級焼肉は言わずもがな美味しくて、
さっき乃依に引っ張られた頬が
冗談抜きで落ちるかと思った。
それと……談笑しながら食べるから、
もっと美味しい気がした。
そして食べ始めてから数十分、
私は誰も触れなかったその話題に
自ら触れた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!