駅に向かって並んで歩き出す。
彼女の真っ直ぐな髪が夜風で揺れた。
you「…佐野さんって、今彼女いたりしますか…?」
その声が少し不安げに震えていて、まだ名前のつかない関係なのに、どうしようもなく愛おしさを感じる。
EIKI「いないよ」
you「そうなんですね…!てっきり一緒に住んでらっしゃるのかと思ってました」
EIKI「え?なんで?」
you「だって…飲み会いつもいないって聞くし、接待とかも…あ、調べてるとかじゃないですからね!経理部なんで!」
慌てて弁解するように話す彼女に、思わず笑みがこぼれる。
EIKI「飲み会に出ないのはあなたの苗字さんも同じやんな?あなたの苗字さんこそ、彼氏いないの?」
余裕ぶってさり気なく聞いたつもりが、自分でもわかるくらい語尾に緊張が混ざってしまった。
you「いないですよ、笑 もしいたら今日だって参加してないよ」
時折混ざるタメ口が、最初より近づいた距離を表しているようで嬉しくなる。
EIKI「そっか。……じゃあさ、あなたの苗字さんが良ければLINE交換したい」
もう迷いはなかった。
ただ今、君にもっと近づきたかった。
you「はい、ぜひ!」
EIKI「ほんと?よかった……はい、これ。」
お互いのスマホを重ねて、友達の欄に追加された彼女の名前を確認する。
you「瑛宜さん、っていうんですね。お名前」
彼女は俺と同じようにスマホに映し出される名前を見て、独り言のように呟いた。
EIKI「……嬉しい」
you「…え?」
EIKI「名前。これからは瑛宜って呼んで?」
you「…できるだけ、頑張ります、」
そう言ってそっぽを向いてしまう。
その一つ一つの仕草が可愛くて、もっと知りたいと欲が出てくる。
you「…じゃあ、瑛宜さんもこれからはちゃんと名前で呼んでくれる…?」
EIKI「え、」
そう言う彼女は、揺れる瞳で真っ直ぐに俺を見つめていて。
照れたと思えば、そんなふうに俺を射抜くように悪戯に笑う、まるで小悪魔だなと不意に感じた。
EIKI「……あなた」
you「…ふふ、はい。合ってますよ」
EIKI「なんか…恥ず」
you「あはは!耳赤いよ〜」
EIKI「ちが…寒いから!それは!」
テンポ感が良くて飽きない君との時間が、このままずっと続けばいいと、そう思う俺の心情とは裏腹に、
気づけば駅のもう目の前まで来ていた。
年末の盛り上がりなのか、駅は人でごった返していて気を抜くとすぐにはぐれてしまいそうだった。
EIKI「大丈夫?これ、帰れそう?」
you「うん!最近はずっとこんな感じだし大丈夫だよ」
EIKI「よかった、じゃあ…」
またねと言うにはまだ名残惜しくて、口ごもる俺を見かねて苦笑しながら君が言った。
you「送ってくれてありがとう!瑛宜さんと話せただけで、忘年会に参加した甲斐があったよ」
you「気をつけて帰ってね」
そう笑って人混みの中に紛れていこうとする君。
俺は気づけば、離れていくその手を無意識に掴んでいた。
驚いて振り返る彼女に申し訳なさが浮かびつつも、
もう、焦る気持ちは抑えられなかった。
EIKI「…ごめん、その…急すぎて驚かせると思うんやけど、今日あなたと初めて話して、今どうしようもないくらい、あなたのことが気になってる。」
恥ずかしさや気まずさで目を背けたくなる気持ちをグッとこらえて、君を見つめた。
みるみるうちにその頬が蒸気して、瞳が潤む。
その反応、期待していいかな?
俺、多分もう君を知らなかった頃には戻れないから。
EIKI「だから、これから俺のこともっと知って。好きになってもらえるように頑張るから」
相変わらず騒がしい街で、今この瞬間だけは、
君と二人きりになれたような気がした。
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まさかの二部構成、最後まで読んでいただきありがとうございました。
だいぶ中途半端かつ、これといって盛り上がる場面も書ききれなかったです。ほぼ没なので今後思いつき次第書き直したいと思います。
まだ瑛宜さんの解像度が低すぎて…
よければリクエストや感想、アドバイス諸々待っています♩
次回もお楽しみに。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!