第7話

# 距離
326
2026/02/07 09:00 更新





衣装に身を包んだメンバーたちが、最終確認に入る頃。
東京ドームの楽屋は、さっきよりも少しだけ空気が弾んでいた。
rn
あっきぃ、ちょっと動かないで
ak
え?
リーダーが柔らかい声で言いながら、俺の袖をつまむ。
rn
ここ、少しだけシワ出てる
ak
本当だ、ありがとうございます
鏡越しに見るリーダーは、かなり近い。
袖を直す指が腕に触れて、その距離の近さを感じた瞬間。
背中から感じる空気が変わったのが分かった。
pr
同じく鏡越しに映る顔。
何も言わない沈黙であるはずなのに、あまりにも分かりやすい。
mz
莉犬くん近くないっすか?
rn
そう?
まぜちが笑い混じりに言うと、リーダーは首を傾げてから続ける。
rn
あっきぃが動くから
ak
俺動いてないですよ
苦笑いで返したけど、リーダーは特に気にする様子もなく、さらに距離を詰めてくる。
rn
ほら、首元も
ak
え、そこはもう___
rn
動かないの
ak
……はい
言われるままに止まる俺。
その間、背後から視線がずっと刺さっている。
pr
……
mz
なあ、ぷーのすけ
pr
mz
今何も言わないの逆に怖いんだけど
pr
別に?
短い返事が聞こえた。
mz
気にしてるでしょ
pr
してへん
mz
わかりやす
今度は、通りかかった心音が、状況を一瞬で把握したように口を開く。
so
…なるほど、
ak
なんだよ
俺が聞くと、心音は口角を上げた。
so
…いや、分かりやすいなって
ak
誰が
so
後ろ
鏡越しに後ろを見れば、案の定、腕を組んだぷーのすけが立っていた。
ak
ぷーのすけ?
pr
何や
ak
リーダーの隣羨ましい?
pr
ちがう
ぷーのすけから返答がきたと同時に、ようやくリーダーが距離をとる。
rn
直ったよ
ak
ありがとうございます!
俺が笑うと、リーダーもふわっと笑った。
ak
リーダーは本当によく気が付きますよね
rn
そうかな〜?普通だよ!
褒めは素直に受け取らなかったけれど、満更でもなさそうに笑顔を浮かべた。
そのやり取りにぷーのすけが我慢できなくなったみたいに口を挟む。
pr
はいはい、確認終わり
mz
ぷーのすけなんで仕切ってんの?w
rn
次は俺がしてもらう番?
リーダーが冗談っぽく言った、その瞬間。
pr
なし、
rn
へ?
pr
あっきぃの確認は俺がやる
rn
それはもう今終わったよ?
pr
念の為もう1回やります
その言葉に、思わず吹き出した。
ak
そんなに心配?w
pr
心配やなくて確認
ak
一緒じゃないの?
pr
…ちがう
難しい。
so
…近いのは、気になるんすね
mz
そりゃそうだろ
ぽつりと言った心音にまぜちが頷く。
mz
気にしてる本人だけ自覚ないパターンだよ、あれは
pr
俺は自覚してるわ
さっきから短いぷーのすけの一言一言に違和感を持って、抱いていた疑問を投げかける。
ak
…拗ねてる?
pr
拗ねてへんよ
ak
じゃあどうしたの?
pr
……普通、別にいつも通り
少し間が空く。
ak
普通でそれなら、拗ねてると思います
俺がそう言うと、ぷーのすけは一瞬黙った。
pr
………近すぎ、
ak
リーダーが?
pr
…そ
リーダーは驚いた顔を浮かべた後、すぐ柔らかく笑う。
rn
えっと…ごめんね?
pr
いや、莉犬くんは悪くない…
ak
じゃあ誰が?
pr
………距離感
人ではない対象のぷーのすけの曖昧な答えに、楽屋が笑いに包まれた。
まさかぷーのすけが俺とリーダーの距離感を気にするとは思ってなくて、同時に少し嬉しくなる。
mz
ほら、あっきぃも原因分かってる顔してる
ak
…まぁ
照れたのが自分でもわかって、視線を逸らした。
ak
近いのなんていつものことだけど…
pr
そうやって気にしてないのが問題
mz
言われてますよ奥さん
ak
誰がだ!
cl
はいはーい、そこまで!
師匠が、穏やかな声で割って入る。
cl
あっきぃの隣ポジを推しの莉犬くんに取られて嫉妬しちゃったぷりちゃんのことはよーくわかったよ!
pr
全部言うじゃないっすか
rn
ごめんねぇ、ぷりちゃん
pr
なんだか、哀れみの目を向けられている気がする
mz
気のせいじゃないぞ〜
cl
くふふ、なんだかんだあきぷりらしくて悪くないよね
ak
…そうですか?
俺がそう返すと、師匠は少しだけ目を細めた。
cl
うん、ちゃんと良い顔してる
その横で、きのこくんが勢いよく頷く。
di
きのこもそう思います!!
ak
声大きい
so
お前が言うか?
ak
だまれ
di
すみません!!でも本心です!!!
思わず笑いが起きて、張っていた空気がほどける。
cl
ほらみんな!そろそろだよ!
小さく息を吸って、ぷーのすけの近くに行って目を合わせる。
ak
…ごめん
pr
え?
ak
距離、気を付ける
ぷーのすけは一瞬驚いた顔をして、視線を逸らす。
pr
別に…そこまで言うてへんよ
ak
でも
pr
少しの沈黙の後、ぷーのすけが小さく言った。
pr
じゃあ、今日ずっと隣おってや
ak
…!
ak
……ぷりーぬ推しが可哀想だよ?
pr
そこはうん、って言うとこやろ
ak
くふふw
楽屋の外から、開演前のアナウンスが流れる。
pr
…ほな終わったら、ってことで
ぷーのすけが差し出してくれた手を取って、ステージの手前までの短い距離を二人で歩いた。

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