衣装に身を包んだメンバーたちが、最終確認に入る頃。
東京ドームの楽屋は、さっきよりも少しだけ空気が弾んでいた。
リーダーが柔らかい声で言いながら、俺の袖をつまむ。
鏡越しに見るリーダーは、かなり近い。
袖を直す指が腕に触れて、その距離の近さを感じた瞬間。
背中から感じる空気が変わったのが分かった。
同じく鏡越しに映る顔。
何も言わない沈黙であるはずなのに、あまりにも分かりやすい。
まぜちが笑い混じりに言うと、リーダーは首を傾げてから続ける。
苦笑いで返したけど、リーダーは特に気にする様子もなく、さらに距離を詰めてくる。
言われるままに止まる俺。
その間、背後から視線がずっと刺さっている。
短い返事が聞こえた。
今度は、通りかかった心音が、状況を一瞬で把握したように口を開く。
俺が聞くと、心音は口角を上げた。
鏡越しに後ろを見れば、案の定、腕を組んだぷーのすけが立っていた。
ぷーのすけから返答がきたと同時に、ようやくリーダーが距離をとる。
俺が笑うと、リーダーもふわっと笑った。
褒めは素直に受け取らなかったけれど、満更でもなさそうに笑顔を浮かべた。
そのやり取りにぷーのすけが我慢できなくなったみたいに口を挟む。
リーダーが冗談っぽく言った、その瞬間。
その言葉に、思わず吹き出した。
難しい。
ぽつりと言った心音にまぜちが頷く。
さっきから短いぷーのすけの一言一言に違和感を持って、抱いていた疑問を投げかける。
少し間が空く。
俺がそう言うと、ぷーのすけは一瞬黙った。
リーダーは驚いた顔を浮かべた後、すぐ柔らかく笑う。
人ではない対象のぷーのすけの曖昧な答えに、楽屋が笑いに包まれた。
まさかぷーのすけが俺とリーダーの距離感を気にするとは思ってなくて、同時に少し嬉しくなる。
照れたのが自分でもわかって、視線を逸らした。
師匠が、穏やかな声で割って入る。
俺がそう返すと、師匠は少しだけ目を細めた。
その横で、きのこくんが勢いよく頷く。
思わず笑いが起きて、張っていた空気がほどける。
小さく息を吸って、ぷーのすけの近くに行って目を合わせる。
ぷーのすけは一瞬驚いた顔をして、視線を逸らす。
少しの沈黙の後、ぷーのすけが小さく言った。
楽屋の外から、開演前のアナウンスが流れる。
ぷーのすけが差し出してくれた手を取って、ステージの手前までの短い距離を二人で歩いた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。