第15話

episode.14 バレンタイン【🏹】
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2026/02/13 21:00 更新
あなた
み゛っ!?
こんなところでなにをしているんだろう。
そう思ってそっと肩に触れたら、あなたの下の名前ちゃんは潰れた悲鳴を上げて、大きく肩を振るわせた。
西園寺羽京
ごめん、びっくりさせちゃったね
そう声をかければ、あなたの下の名前ちゃんはこちらに振り返る。
その表情は、驚きと恐怖で満ちていた。
あなた
う、羽京さん……!
初めて会話をしたあの日とよく似た、被食者のような目。
何か、小さな包みを大切そうに両手で持っている。
西園寺羽京
お邪魔しちゃったかな?
そう言って立ち去ろうとすれば、裾をくい、と引かれた。
到底人など止められないような、弱い力で、きゅ、と握られている。
あなた
邪魔では、ないです……
顔を下に向けて、震える声でそう言うあなたの下の名前ちゃんを見て、また、少しだけ気分が昂ったような気がした。
あなた
その、探してて……
探してる?
なにか、失くし物でもしたのだろうか。
西園寺羽京
一緒に探そうか?
あなた
えっと、そうじゃなくて、その、
あなたの下の名前ちゃんが、言葉に詰まった。
ゆっくりでいいよ、と声をかけ、その小さな口が開かれるのを静かに待つ。
あなた
羽京さんを、探してて
西園寺羽京
僕を?
それでこんな森の中まで。
まだ雪も積もっていて、寒いだろうに。
それに、普段なら動物だの虫だのを怖がって、一人じゃ森に入ろうともしないのに。
そこまで火急の用事があったのだろうか。
それなら、悪い事をした。


あなた
はい。これ、渡したくって……
大切そうに抱えていた包みを、控えめに差し出してくる。
西園寺羽京
開けても良いかな?
その包みを受け取って、訊いてみる。
なにか、ものをもらうようなことをした記憶も無いが、一体なんなのだろうか。
あなた
あ、えっと、どうぞ……
結ばれたリボンをシュル、と解き、箱を開ける。
西園寺羽京
……チョコレート?
あなた
は、はい。石神さんと、作りまして
あなた
”代用チョコレート”です
あなた
まだ試作ですし、少し早いんですけど、バレンタインです……
なるほど、バレンタイン。
化学に秀でたあなたの下の名前ちゃんも、一緒に作業をしたのか。
西園寺羽京
食べてもいい?
あなた
もちろんです
あなた
あ、でも、まだ数が無いので、人目につかないところで……
そんな貴重なものを僕にくれるなんて。
嬉しいなぁ、とか思いながら、チョコレートを口に運ぶ。
西園寺羽京
すごい! ほぼチョコレートだね
甘いや、なんて言いながら、食べ進める。
あなた
良かったです
あなたの下の名前ちゃんはそう言って、安心したような顔をする。
かわいらしいなぁ、なんて思いながら食べるチョコレートは、とびきり甘く、おいしく感じた。
あなた
……あの
しばらくして、あなたの下の名前ちゃんが小さく声をかけてくる。
あなた
そろそろ、ラボに戻りたくて……その、森を抜けるまで、一緒に来てはもらえませんか……?
「勢いでここまで来たので、怖くて……」と、徐々に声を小さくする。
やっぱり、怖かったんだ。
西園寺羽京
いいよ、じゃあ行こうか
そう言って、その小さい手を引いた。
一旦、チョコレートのお礼ということにしておこう。

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