「由希。」
「なーに?」
登校は樹と一緒だけど、
下校は菜乃花と一緒。
二人っきりの帰り道、
菜乃花が真剣な顔をして私に話し始めた。
「由希はさ、樹くんのこと好き?」
「好きじゃないよ。」
「本当の本当に?絶対?無理してない?
ここまで相談しといて何だけど、これで由希も実は…みたいなの、嫌なの。
由希が辛い思いして欲しくないし…」
やっぱり菜乃花は、優しい。
「…だから、大丈夫だよ。
心配性なんだから〜」
「そっか。」
樹のことを、好きだと思ったことが無い。
友達としても、
幼馴染としても。
好きとかじゃない。
いつの間にか、隣にいる。
そういう奴だから。
「私ね、告白しようと思う。」
「樹に?」
「うん。」
「そっか。
放課後呼び出すパターンと、
休日3人で遊びに行って二人っきりにしてあげるパターンと、
2つあるけど、どうする?」
「…え?」
「だから、どうする?って。」
「…由希、大好き。」
「言う相手が違う。」
「今は由希が好きなの〜!」
「あ!!樹!」
「え、どこどこ!?」
「嘘つき。結局、樹じゃん!」
ずっとこうやって笑っていられればいい。
菜乃花の悲しそうな顔は見たくない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。