朝…
交番にて。
窓から差し込む、やわらかい光。
コポコポ、とコーヒーメーカーの音。
平和。
完璧に平和。
アリスは欠伸を一つ
制服の襟を整えて。
髪を軽く結び直して。
コーヒー(砂糖とミルク入り)を飲む
いつものルーティン。
笑い声、終わらない朝
カチ、カチ、カチ…壁の時計が鳴る
アリスはふと、顔を上げた
カチ、カチ、カチ、カチ、カチ、カチ……
やけにうるさい
秒針の音が
やけに近い
その時、コン。とドアが鳴る
ノックの音だ
外へ出る。
誰もいない。
風もない。
足音もない。
ふと、足元から焦げ臭い匂いがする。
下を向くと古びたトランプ。
……少し焦げているようだ
描かれているのは……
ハートのエースだろうか?
詩理亜が何気なくポケットに入れる。
何気なく
本当に、何気なく。
その瞬間。
カチ、
カチ、
カチ、
カチカチカチカチカチ
時計の針が暴れ出す。
ありえない速さで回る。
時間が壊れたみたいに。
突如、なんの前触れもなしに
ぴたりと止まる。
時計が指していたのは【 10:16 】。
⬆ メモしながら
笑うアリス。
いつも通り。
変わらない。
ぱらりと
机の書類が、ひとりでにめくれる。
風なんて、ないのに。
一枚だけ。
ぴたり、と開く。
失踪者リスト。
昨日までなかったページ。
そこに、印字されていた。
【失踪者: 。】
名前が、ない。
空白。
ぽっかりと。
不自然に。
まるで、最初から“誰もいなかった”みたいに。
その時。
詩理亜の背中が、ぞくりとした
――違う。
これ。
“まだ書かれてない”のではなく……
……〝消されている〟のでは……?
まるで
最初から誰もいなかったみたいに。
そういえばさっきのノックもそうだ、
確かに音はしたし気配もあった。
……なぜ?
ではなぜ居なくなっているのか
ポケットの中。
さっきのトランプが、熱い。
まるで心臓みたいに。
どく、どく、と。
その時、アリスが無防備に、
何気なく笑う
次回へ続く
















![[P] せめて 貴方の一番星になりたい !](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/PLJgjrnF9qXYITOqLbW5mzmhPFX2/cover/01KK9A3FC0RFZ9PDGN28SYQHQA_resized_240x340.jpg)



編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!