第7話

嫉妬
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2022/10/14 11:56
北斗side.





京「なにしてたの」


その声は怒っているわけでもなく、責めているわけでもなく、ただ悲しさを噛み締めたようなか細い声だった。


京「...言えないなら、いい」


北「……ごめん」


京「なに、ほんとに言えないことなの?」


北「いや、そういうわけじゃない…んだけど」


ふーん。とそっぽを向いてしまった。


完全に呆れさせた。


もしもこれが“嫉妬”だと言うのであれば俺はやり方を間違えた。


京「北斗が言わないなら俺が言うけど」


北「え?」


京「………………………た」


北「ん、ごめん。なんて言った?」


すると、あちらに向いていた京本が体ごと俺の方へ向いた。


ただし、視線は落とされて目は合わないけれど。


京「...正直、なんか、モヤモヤした」


北「え...それって」


“嫉妬”?


京「ばか」


北「いやストレート」


京「...俺、今めんどくさい?」


北「そんなことない。あるわけないじゃない」


そっと包み込むと、素直に背中に腕を回してきた。


北「実はね、京本に嫉妬させたかったの、俺。」


京「は?」


北「ジェシーがあんなことしてきたのは予想外だったけど」


京「いやちょっとまって、は?」


俺の行動の意を知って、腕を解こうとジタバタする京本をさらに抱きしめる。


京「まてっ、離せ!1回説教させて!」


北「いや」


京「俺はっ!……ヤキモチくらい普通に妬く」


北「え…?」


あっ。思わず、腕を解いてしまった。


今、なんて...?


いや、聞こえてはいたけれど頭が追いつかない。


京「当たり前でしょ...恋人、なんだから」


この人は、どこまで俺を堕とせば気が済むのだろう。


好きとか愛してるとかそんな単純な言葉では綴りきれない。


貴方へのこの想いはどこへ注げばいいのか。


...きっと貴方なら全て受け入れてしまうんだろうな。


俺より少し華奢な身体を寄せて、その小さなぷっくりとした唇に口付けをした。


一瞬不服そうな顔をしたが、すぐに柔らかい笑顔と可愛らしい仕返しをくれた。


京「...これからはあんましないで下さい」


北「はい、もちろんです...」


京「俺も...もっと分かりやすくなれるように頑張るから」


北「いーよ、京本はそのままで。」


俺だけしか見れないようにしてやるから。


樹「あのー、お二人さん?お取り込み中失礼するんだけど、撮影始まるんだわ」


北「おっまえ、」


京「はーい」


焦る俺を他所に何事も無かったかのように樹の方へ歩き出した。


北「...やっぱり頑張ってもらえばよかった」


京「ん、なんか言った?北斗」


北「んーん、なんでもない」


京「ほら、行くよ」


不意に手を差し出され戸惑ったが、進んでしまうその手をしっかりと捉えた。


北「ん」





今回の俺の作戦は成功だったのか、はたまた失敗だったのか...。


この結果がどうだったのかは、これを読んでいる君が決めてくれ。


俺、松村北斗はこれからも彼には振り回されるだろう。


俺にはそんな感想しか残せない。

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