朝の教室はまだ少しざわついていた。
そんな教室を横目に、席に向かおうとした私は、椅子の脚に鞄を引っかけた。
床に倒れ込む寸前、横から伸びた手が鞄を支えた。
彼はそう言って、私の頭をコツン、と小突く。
私は心臓の音が煩くなるのを抑えながら顔を上げ、彼を見上げた。
一拍、間が空いて、会話が止まりそうになる。
ただの独り言だった。
リアクションなんて求めていなかった一言に、
彼は返事に困ったような顔をして、
視線を逸らし小さく頷いて言った。
私はより一層速く波打っている心臓の音を隠しながら席についた。
彼の隣だけ、なんだか暖かくて。
そんな恥ずかしいこと、絶対彼には言わないつもりだけど。
ふと隣を見ると、彼も席について、机の上を片付けているところだった。
気づいてしまった想いを、私はまだ名前にできないままだった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。