テスト2日前の放課後。
本当なら、家で
真面目に勉強しているはずの時間。
私は なぜか、テサンとふたりで
近くのCDショップに来ている。
ご満悦な様子のテサンの手に握られているのは
さっき 買ったばかりのバンドの アルバム。
この人は、
学校では本当に ニコリともしない。
クラスのお調子者がふざけていても、
みんな大爆笑の中
1人だけいつも白けた顔をしているし。
だけど、
だけど、
私といるときの テサンは、
よく笑っている気がする、なんて。
ちょっと、自意識過剰すぎるのかな。
CDショップを出ると
あたりは 夕日のオレンジ色に染っていた。
大通りを抜け、並木道に出ると
私が毎日 使っているバス停が見える。
道に沿った坂の上に 私の家があって、
詳しい場所は知らないけど、
その反対方向に テサンの家があるらしい。
つまり、バス停が
私たちの分かれ道なのだ。
お喋りしているうちに 、
いつの間にか バス停は目の前。
じゃあね、また明日、と言い合って
テサンと反対方向の 帰路に着く。
テサンのサボり癖は相変わらずだ。
数日 休むなんてざらにあるし、
その理由も大したことじゃない。
だから、私なりのおまじないというか。
「また明日」と言えば、
彼が サボらず来てくれるような、
そんな気がして。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!