Liiy's side
あーもう!ムカつく。
なんでうちの使い魔はこんなに可愛さのカケラもないんだろう。
なんでうちらが言い争ってるのか。
目の前でケンカしてる男2人がいるからだ。
ケンカしてたら普通止めるよね?ね⁇
それをコイツ___うちの使い魔、リオールが止めてくるからこうして言い争ってるんだよ!
リオールの制止も無視してうちは2人に向かって走り出した。
ダメだ。
完全に2人のペースに流されてる。
うちが止めなきゃなのに、
数10メートルほど向こうでほら見ろざまぁって顔で見つめてくるリオールが憎らしい。
自分が入る隙はもうないと判断して油断していた。
いきなり話を振られて思わずおかしな声が出てしまった。
正確に言えばメイサーの人___ホトケさんというらしい___の声が最初に聞こえてきたから気づいたのはまぁ黙っておこう。
優しいなんて初めて言われたな。
大抵うるさいか短気って言われるし褒め言葉も明るいとか元気くらいだし。
そりゃ知ってるし‼︎
推しだからなそりゃ。
すたぽらの棍使い兼回復担当、ユウ・キサラギの名前はすたぽらをよく知らない人でも聞いたことはあるはず。
普段のゆるふわショタなオーラを持ちながらもいざ戦闘をすると素早いかつメンヘラメイサーに豹変するとか。
仲間を傷つけたものは1人もしくは1匹残らず物理的あるいは精神的に詰めるとか。
その速さときたら50メートル3秒にも及ぶとか何とか。
さすがにこれはガセだと思うけどそれくらいすごいってことだよね。
薬学も独学で身につけて独自の回復ポーションを作っているとかとんでもない情報も時々聞く。
推しが視界にいる幸せに頭がバグりそうになっていたけれど、それを悟られるわけにはいかないので必死に平静を装ってなんとか会話を続けた。
今更ながらケンカ常習犯2組に挟まれるユウさんが可哀想に思えてきた。
ナイコさんは何かを察したらしい。
スーパーカップル?
アイスみたいな名前……お腹空いたな。
初対面だけど見た感じ同い年か少し年上くらいに見えたからついタメになってしまったけど、当人が気にしてなさそうだしいいか。
ちょうどアイスのこと考えてたらバニラアイスが出てきた。
どう見ても市販のものなのは美味しいし気にしないでおこう。
Ruia's side
Lily's side
初めて呼ばれた。
身長的にうちよりちょっとだけ年上な気はするけどユウさんとはまた違ったショタ感といいますか。
ユウさんがほわほわ系ショタだとしたら彼は元気系ショタってとこか?
んー、どっちも超タイプ!
てか可愛いってコサメちゃんに言われてもなにも言わなかったのに気づいた。
コイツ、人選んでやがる………
まぁでもハウンドっぽいって言ってもらえて嬉しそうだし黙っといてやるか。
わんわんって呼ばれるのを極度に嫌うからな……
猟犬って何気に初めて呼ばれたのでは。
そういえばこんな可愛い顔してんのにグレートソード軽々と持ってるよこの子。
ギャップ萌え?
ええやん((((?
ふとうちの耳が何かの音をキャッチしたので思わず動きを止める。
そう。
どうやらうちは他の人よりもちょっとだけ音に敏感みたい。
こういうとき便利だよねっ。
まぁデメリットは耳元で叫ばれたら一瞬で耳傷めること?
それはさておき。
音の感じからして南東の方だな。
すかさずボウを背中から出して打つ。
矢は十数メートルほど飛び、近くの草むらに突っ込んだ。
すると何やら黒いかげが草むらから出る。
と、軽い掛け声とともにコサメちゃんによってそのかげはぶった斬られる。
見るとそのかげの正体はモルモックル……このあたりの定番モンスターだった。
半ば引っ張られるようにして連れて行かれたのは、第2エリアの水晶の海岸だった。
なんか………うん。
名前の通りめっちゃきれいな海岸だよね。
そしてなにより、めっっっっっっちゃ広い。
水平線の先には太陽や月、それから星くらいしか見えるものがない。
ただ水生モンスターの量も多いから、ライドできるサイズの使い魔でも連れてないと海は進めない。
まぁビーチにもそこそこモンスターいるんだけどね。
ぽんっとコサメちゃんが手を置いたのは、おそらくヤシだと思われる大きな木だった。
コンッと軽い音で木にアローが刺さる。
次は………なんだ、低木?みたいな。
キレイなピンクのプルメリアが咲いてる。
案の定アローは変な方向にふっ飛び、偶然にも近くのヤシの実にクリティカルヒットした。
笑ってんだか喜んでんだか知らないけどリオールが珍しく煽ってこなかったからよしとしよう。
いや、煽ったつもりなのかもしれないけどうちがあまり気にしなかっただけだ。
集中ね………
昔からアカデミーで勉強するよりもフィールドワークで真剣片手に駆け回る方が断然好きだったうちには1番ほど遠い言葉だと思う。
図星。
…………集中ってどうやるんだろ?
息吸ってー、吐いてー。
×10
うん、なんか落ち着いた気する。
目を閉じて耳だけに全神経を集中させる。
風が吹いてくる音、吹いていく音。
ザラタンが水面を泳いでいく音。
グリフォンが山へと飛んでいく音。
そしてその山の頂上にいるフレスベルグが飛び立とうとする音。
それらの音を聞きながら、風の動きにアローを乗せる。
コサメちゃんは自分のことかのように喜んでくれて。
見てるこちらまで楽しくなる。
平和平和。
やっぱりここは優しい世界だ。
誰も裏切らない、仮に裏切られても自分を信じてくれる人がいる。
こんなにすてきな世界、他にないよねっ!
超高速で指示を出したけれど、コサメちゃんはしっかり理解してくれたらしくすでにグレートソードを抜きダッシュしていた。
相変わらず重量を感じさせない身軽な動きで目の前のモンスター___槍使いのモリーアンの槍を弾いた。
ついさっき習得したばっかりだから多少雑かもしれないけど、さっきよりも確実に速く“モード”に移れたと思う。
手応えバッチリ!
イマイチ遠すぎてどうなったか目視できないけれど大丈夫だと思う………思いたい。
すごーく物騒なとんでもないワードが聞こえてきた気がするけど黙っておこう。
それはさておきコサメちゃんとうちがリオールにワーキャーワーキャーまくしたてるようにして話していること状況はなんだ。
そして本人(人じゃないけど)もご丁寧にしっかり全部に受け答えするなかなかカオスな絵面。
なんとなく分かった。
うちがスランプなってた理由。
リオールとケンカするのに必死で周りが全然見れてなかったから命中率も落ちちゃってた。
それでいっつもイライラしちゃうからすぐ怒ってたのかなぁ。
だから周りからもからかわれたりしてたのかも?
分かったらなんかうちがすっごく小さなことで悩んでたような気がしちゃうから不思議だ。
これも全部、コサメちゃんのおかげだな。
いくらか心に余裕ができた気がする。
























編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!