第11話

名もなき者のメッセージ
723
2022/01/28 11:02 更新
???
…_やぁ、親愛なる我が同胞諸君。
鬱先生
えっ!?!?
急に喋り出したぞコイツ…!!
ロボロ
前に録音してたものが再生されたんやろ。
…でも一体誰からや…?
周りに“奴ら”がいない事を確認し、三人はペンから再生される声に耳を傾けた。

録音されていた声は低音で落ち着きがあり、男性である事が分かったがノイズ音が酷く、その人物が一体誰なのかは特定出来なかった。
???
この音声を聞いていると言う事は、黒眼鏡をつけた男に遭遇したか。
…いや、道中にこのペンが落ちてしまえば、その男については知る事はないのか…
???
フッハッハ!何と効率の悪い情報共有法だ!!
自分で考えておきながら笑いが止まらん!
ロボロ
何悠長な事言っとるんコイツ…💢
鬱先生
ホンマやな…。
殴りたくなるわ。こっちは大変な事になってるっていうのに…。
シャオロン
……💢。
鬱先生
…シャオちゃんもコイツに小馬鹿にされている感は伝わってるんやな。
???
…さて、笑い話もここまでにして。
これを見つけてくれた我が同胞に伝えなくてはならない。
???
この世界の異変を…。無差別に人を喰らう“彼ら”の正体…。
そして、その特徴と、現段階で分かっている“彼ら”の治療法について…。
鬱先生
…!!?
ロボロ
なん、やて…!?
???
私は今、“彼ら”の研究をしている組織と接触している。その組織の詳細はまだ謎だが、○○年××月△△日までで得た情報を君達に伝えたいと思う。
助かる人数は多い方がいいからな。
ロボロ
○○年××月△△日って…。
昨日やないか……。
???
まぁ、唐突に言われても信じない者もおるだろう。
聞きたくないと思うならばボタンを押すがいい。再生は止まる。
一般人にはショックな内容になる可能性があるので注意する様に。
鬱先生
こっわ!!コイツ!!
…でも、なんでよく分からん野郎がそんな大事な事知っとるねん!?
ロボロ
俺にも分からんが、貴重な情報や。
最後まで聞いてみんか?
鬱先生
…せ、せやな。
シャオロンやトントンの事も分かるかもしれんしな…。
シャオロン
……。
???
…聞きたいか。
勇気ある諸君に私も敬意を示して話すとしよう。
???
まず、“彼ら”は何故人を襲うのか?
それは、異常なまでの「食欲」からなる。
???
そして、その「食欲」を増進させているものは新種のウイルスだ。
鬱先生
ウイルスって…。
…それに、「食欲」って食う事?
???
今分かっているのは、そのウイルスに感染したものは「食欲」のみを本能として解放し、無差別に人を喰らっている事だ。動物も例外ではない。
その「食欲」は腹が満たされてもなお止まらず、胃に溜め込んだものを吐き出しながら目に付きやすい人間を襲っている。そして喰われた人間は、傷口からウイルスが入り、30分もしない内に“彼ら”の仲間入りとなる。
ロボロ
…嘘やろ。
???
個体差はあるが、“彼ら”は目も耳も聞こえている。動きも普通の人間と変わらない。一番の特徴は、血の匂いに敏感な事だな。隠れるなら十分に警戒して行うように。
そして“彼ら”を徹底的に潰すなら頭か心臓を狙え。腕一本千切れたぐらいでは止まらないゾ。
鬱先生
頭か、…心臓って…。
初めて人を殺した感覚が蘇る。
あの時はコネシマやシャオロンを助けたい一心でナイフを突き立てたが頭ではなく背中を刺した記憶がある。
考えられるとすれば、背中越しに刺したナイフが、奇跡的に心臓を貫通した事になる。もし、数センチでもズレたり、他の部位にナイフを突き立てていたらと考えると、寒気が止まらない。
鬱先生
…ウウッ、吐きそう。
???
…しかし、“彼ら”とはまた違う例外がいる事が分かった。
ロボロ
例外…?
???
そう。
“彼ら”と同じ感染者でありながら、「食欲」に支配されない個体。
つまり、感染者でありながら人を襲わない個体がいるのだ。
ロボロ
…!!?
鬱先生
…それって……!?
シャオロン
……。
ロボロ
確かに、シャオロン噛まれてから食欲減ったみたいやもんな…。
口に食べ物詰め込まな飲み込まんかったし。
???
何故その個体が生み出されるのかはまだ解明できていない。
感染者は全ての目の色素が抜け青白くなるのだが、例外は全て目の一部しか色素が抜け落ちておらず、人間本来の目の色がある。
???
こうした例外の感染者の方が、ワクチン接種後に回復する可能性が“彼ら”よりもはるかに高いと私は推測している。
鬱先生
何!?国はもうワクチンを開発したんか!?
???
ワクチンはまだ試作段階らしい…。全国民の手に届くまではかなり時間が掛かりそうだ。それまで、君達が生き残っていればこの崩壊した世界を終わらせる事が出来るという話になるがな。
鬱先生
あ、もう俺無理。ダメかもしれん……。
ロボロ
諦めんなや大先生。
???
ここまで話した事が、現段階でわかっている“彼ら”の生態。そして治療法についてだ。
…これで私が知っている事は全て話した。
ま、せいぜい生き残れ。同胞諸君。
ロボロ
成程…。まずシャオロンは今は安全なんやな!
チーノ達のいい土産話が出来たな大先生!
ロボロ
コイツが何処のどいつかは知らんが、もし本当ならワクチン開発も国が進めてくれてるみたいやし!あとは死ぬ気で生き残る事を考えようやないか!
鬱先生
まぁまぁタメにはなった話やけども…。
トントンは結局どっちなん?
ロボロ
え?
鬱先生
コイツが言うには、“奴ら”と「例外」がいるんやろ?
トントンは両目とも青白かったけど、俺らを襲ったけど喰おうとはせんかった。
これはなんの違いと思う?
鬱先生
まず、トントンは何で俺らを襲ったん?
シャオロン
……。
ロボロ
あー…、確かにそうやな。
腹減ってる訳でもなさそうやったし…。
トントンはまだ地面に倒れて気絶している状態。
彼の状態はまだ分からない事が多いが、ずっとこのままにするわけにもいかない。
???
…_……。
???
…それと、もう一つ。
鬱先生
……?
???
…身内に伝えたい事がある。私情だ。
ロボロ
なんや。私情なら俺ら関係ないな。
???
「エーミールが囚われている。」
レコーダーから急に彼の名前が上がった。




突然の出来事すぎて、三人は同じ体制で固まったまま口が塞がらない。
鬱先生
……。
???
エーミールが何者か知らない奴は関係のない話だ。
ボタンを押して構わない。
鬱先生
……。
シャオロン
……。
鬱先生
………え?
ロボロ

はああああっ!!!?

その単語を聞くなり、鬱先生が持っていたペンをロボロは取り上げ、レコーダーに向かって「どう言うことや!!?」と問い詰めた。

落ち着けロボロ。俺も同じ気持ちや。
???
場所は○○県の半島に位置する廃墟施設。
その地下で“彼ら”の実験を行なっている場所がある。私とエーミールはそこにいる。
???
私自身も身体の自由を制限されている身でな。自力で救出が難しい為、こうした周りくどい方法で助けを求めている訳だ。
鬱先生
…何でコイツがエーミールの名前知ってんの?
???
何故私がエーミールを知っているのか?だって?
鬱先生
…!!?
???
そんなもの決まっているだろう。
???
私は…、  いや。
???
我々は、「世界創造を企む秘密結社」の一員なのだから。
ロボロ
…!?!?
こいつもしかして…!!
鬱先生
……お前…。
???
いいかお前ら!!敵は“奴ら”以外に人間も含まれる!!軍や科学者を信用してはならない!!
???
これは「戦争」だ!!国家vs我々の生存を賭けた戦いになるだろう!!
チーノ
あ!!いた!!
ロボロ〜!!大先生〜!!助けて“くれ!!
鬱先生
…!?チーノ!?
お前何でここに来たん!?
録音された音声に集中しすぎて、チーノが近付いてきた事に声をかけられるまで気がつかなかった。
チーノはここまで休みなく走って来たようで、ヘトヘトではあったが、時間が惜しいと言わんばかりに二人の手を引っ張って助けを求めて来た。
ロボロ
何があったチーノ!?
チーノ
お、大きな”化物”が、突然、襲って来て…。
チーノ
ゾムさ、と、ショッピが、二人を見、見つけてこいって…。
俺を逃して…。
鬱先生
はぁ!?おいすぐ向かうぞ!!
チーノ
こっ、こっちです!!
まずは二人の救出が先だ。
チーノに連れられゾムとショッピの元へ向かう。




レコーダーの内容は信じ難いことばかり。そして、一度に情報を取り込みすぎて整理がつかない。
初めこそ信用していなかった。






何処ぞの野郎からの、“奴ら”の情報なんて鵜呑みにするほどアホではない。
しかし、主の正体が誰なのか分かれば、後はそれに従って行動するしかない。






身内に向けて伝えたいと願った内容から推測するに、声主の正体は決定的だった。
エーミールが生きている可能性があるなら尚更救出に向かうべきだ。








何故従う事が出来るのか?



それはロボロやシャオロンも同じ気持ちと思う。







彼を信頼しているから。
仲間のSOSには、出来そこのない屑でも答えたい。   それだけや。

















???
近いうちに君達に会えたならば、その時に詳しい話をしようではないか。
???
汚くても生き残れ。
この声が、我が同胞諸君に届いている事を願っている……。
…__……ブツっ!




















グルッペン
…総統グルッペンより。











作者
この作品も、やっと後半戦です!
いつも見てくれている皆様!楽しんでくれている皆様!本当にありがとうございます!
いつまで続くかなと思っているそこのあなた。後半分ほどで完結する予定です。これからも楽しみにしてくれたら幸いです。よろしくお願いします。

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