第80話

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2021/04/02 05:07
夢が見える。

獣の巨人,ジークが荷馬車の上で倒れていて

その荷馬車をリヴァイが動かしてる。

ジークの腹部には雷槍が刺さっていて…



「俺は…救ってやったんだ…」



ジークが何かを話してる…

呟いてるだけだけど,走馬灯みたいに…何かを喋っている




「…ソイツらから産まれてくる子供の命を…この残酷な世界から…そうだろ…?」

「…また足が伸びてきたみたいだな」

「だから…見ててよクサヴァーさん‼︎‼︎」

「!」




ジークが暴れて…雷槍が吹き飛んで




『リヴァイ‼︎‼︎』




「あなたさん⁉︎」

『…ぁ…』

「大丈夫ですか…?」

『ミカサ…』

「…兵長はここにはいません。」

『…』




……変な夢…。




「ミカサ,あなたさん起きた?」

「うん…」

「大丈夫ですか?」

『アルミン…私…何が…』

「ジャンによると…フロックに麻痺薬を打たれて,倒れたらしいですが…」

『……まだ,身体が充分に動かないわ…』

「…あなたさんに倒れられたら,僕達に光の手はありません。どうか,そのままで」

『…えぇ』

「あなたさん!」

『…コニー…ジャン…』

「もう…身体は大丈夫ですか…?」

『そうでも無いわ…』



「あなたさん,起きたか?」



「ブラウスさん…」

「顔色はそこまで良くなっとらんねぇ。まだ休んでると良い」

『…ありがとうございます』

「お茶は飲めそうかい?」

『はい』



ブラウスさんから紅茶を受け取ると,私はコートを脱いで

中に着ていたフードを被った。

ゆっくり紅茶を飲んで…蹲って考えた。

どうすれば良いのか…

ここから皆を連れて,どうやって脱出する…?



『…。』



見えるかな…。





「アルミン,超大型の力で牢屋を脱出する事は出来ないか?」

「超大型巨人はこんな器用な事は出来ない。エレンのようには…」

「…」

「で…何でお前はエレンにタコ殴りにされたんだ?そろそろ話してもいいだろ」

「…ミカサを言葉で傷付けたから,僕から手を出して…殴り返された」

「は…?」

「ミカサを傷付けたって…どんな風に?」

「それは…」

「やめて。」

「っ…」

「もう良い。」

「いいや,良くねぇ。どう傷付けたのか,話してくれ」

「…おいもう充分だろ,ジャン。奴は完全にクソ野郎になったって事だ。1番大事だったはずの2人を,意味もなく傷付ける程,もう我を見失っちまった」

「…奴が正気だとするなら,意味もなくそんな事するとは思えない」

「「っ…」」

「何か…そこに奴の真意があるんじゃないか?」




『……ジャンの言う事は正しい。』




「「「!」」」

『…私も,彼が昔の単純な子には思えない。何か意図があるように思う』

「…あなたさん,ここから出られませんか?」

『…今考えてるんだけどねぇ…事を大きくするのは今の私達は絶対にしては行けない事だ』

「どうしてです?」

『…エレンがいつ,我々のところに飛んでくるか分からないだろう?』

「「「っ…」」」

「なんか…あなたさん。いつもと違いますね」

『そうかい?』

「ほら…その喋り方」

『えへへ。ちょっとね』



コツコツ…



「「「!」」」




「お久しぶりです。シガンシナの英雄の皆さん。このような場所での再会,大変心苦しいです」





「…おい…」

「!」

「お前もそっちかよ!出せよ!」

「余談禁止で散々振り回しといて…ムシが良すぎるんじゃないか?」

「っ…」

「ジークとエレンが接触を果たすまで,ここで大人しくしてろ」

「お前…」

「良かったな,イェレナ」

「…」

「上手く事が運んで,気分が良いだろ。エレンはお前の返してジークの思い通りに動き,マーレを襲撃し,エルディア国民の支持を受け,脊髄液入りのワインで兵団を支配した」

『…。』

「これでお前達は,エルディア国民と始祖の力を手に入れて…マーレを滅ぼして祖国の復讐を果たす」

「…」

「それが,この島に来た本当の目的だったんだろ」

「…島を発展させただろ…。100年遅れの,未開の島を」

「あ?」

「お前らが快適に過ごす為にだろ。島の統治者となるお前らが」

「騙された奴が負けた。たったそれだけの事だ」

「グリス…俺達を売って,下僕に昇格したみたいだな。このチクリ野郎…!」

「バカか。悪魔共に肩入れして裏切ったのはお前だろ?」

「何だと…?」

「悪魔の末裔の芋臭ぇ女なんぞに泣いて鼻の下伸ばしやがって…!」

「っ!」

「おい!」

「テメェ殺すぞ‼︎」

「寄せニコロ!」

「毎晩毎晩…あの女の事聞かせやがって…ソイツが死んで正気に戻るかと思った俺が馬鹿だった。

「テメェ今なんつった⁉︎」

「分かるように言ってやる…あの媒体の汚れた悪魔__」



『…。』



バリッ…!



「っ⁉︎」



『……うるさい。』
「あなたさん…」

『イェレナ。君が持っているその銃を貸してくれないかい?』

「……どうぞ。」

『ありがとう。』



あなたさんがイェレナから銃を受け取る。

その瞬間,あなたさんはグリスの頭に向けて撃った。





「っ⁉︎」

『……悪魔の末裔だかなんだか知らないけど…』

「あなたさん…?」



『…サシャを侮辱するのはやめてくれないか?』




凄い目…

あなたさんの"この目"を,僕達はあまり見た事がない。

"この目"をする時は…本気で怒っている時だ。



「…あなたさん…」

『ありがとう,イェレナ。』

「…」



あなたさんがイェレナに銃を返した。



「…ヴッ…」

『あれ,外した?』



グリスが疼くと…イェレナがグリスに3発撃った。



「「「!」」」

「……すみません女王陛下。貴女のような素晴らしく美妃の方に,お手を汚させてしまい」

『…』

「彼の非礼をお許しください。もう貴方がたを"悪魔"と罵る輩は,この島に必要ありません」

「「「っ…」」」

「そして信じて下さい。我々の真の目的は,マーレ襲撃などと空虚なものではありません。」

『…』

「世界から苦しみの連鎖を断ち切り,エルディアもマーレでさえも救う事が目的なのです。」

「「「…」」」

「包み隠さず,全てをお話ししましょう。」

『…』

「長話の前に1つ。あなたさん」

『…何?』




「貴女は,誰ですか?」




「「「!」」」

『…』

「貴女はアットループ王ではありませんよね。」

「何言ってんだよ,この人は__」

「待て,コニー」

「あ?」

「……あなたさん。何か違うんだよ」

「僕もそう思う。いつもと喋り方とか,雰囲気とか違うと思う」

「私も…」




『……あははっ!』




「「「!」」」

『いやー,やっぱり口調を変えた方が良かったのかなー?』

「その喋り方…」

「もしかして…」

「ハンジさん⁉︎」



あなたさんが…ハンジさん…?

どういう事なんだ?



「…一体…」

『簡単な事さ。私があなたに変装してるのさ』



あなたさんが髪をかきあげると…



「!…」

「「「!」」」



「やぁ,イェレナ。」



「ハンジさん…貴女はフロックに連れられたはずですが?」

「うん。もちろん今は馬に乗って,ジークの拘留地に向かっているよ。あなたがね。」

「ハンジさん,どうしてそんな事⁉︎」

「ていうか,いつからですか⁉︎」

「なーに。"始めから"さ。」

「って事は…」

「レストランに行く前からね。面白い事するだろう?」

「面白い事って…」

「大事な女王様を麻痺させて,動かせなくする事は出来ないからね。我々の切り札がなくなってしまう」

「…だから,入れ替わって少しでも安全なところにあなたさんを移動させた,と?」

「そういう事だ。」

「……撤退させていただきます」

「どーぞ!」




イェレナ達は牢屋を出て行った。




「ハンジさん…」

「一体…」




『……んな訳ないでしょ』







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