あの雨の日から、少しだけ世界が変わってみえた。
理由は分からない。
ただ、テヒョナの隣に座るだけで胸がザワつく。
怪訝そうに眉をひそめるテヒョナ。
僕は無意識に笑顔をつくる。
…よかった。いつも通りで、何も変わってない。
ふと、猫の言葉が頭をよぎった。
考えれば考えるほど答えは1つに収束していく。
昼休み。
屋上へと向かい階段を上りながら決めきれずにいた。
今日は風が強くて、雲が低い。
先に屋上にいたテヒョナが振り返る。
そんなことまで知られてたんだ。
僕はそれを聞いたとき、苦笑した。
柵越しに2人で街を見下ろした。
テヒョナと距離は近いが触れられない。
名前を呼んだだけで心臓が跳ねた。
透き通ってるテヒョナの目が僕を映す。
言うつもりじゃなかった。
こんな形じゃなくて、ちゃんと覚悟が決まってから。
でも、考えるよりも先に口が動いてしまった。
僕らの間に沈黙が流れる。
こんな冗談っぽく言うつもりなかった。
自分でも分かるくらい、軽かった。
テヒョナは、すぐに返事はしなかった。
視線を逸らして、フェンスを見つめている。
自分でそう言ったとき、胸がチクッと痛んだ。
嘘じゃない。…だけど、本当のことでもない。
テヒョナはしばらく黙った後、息を吐いた。
声が、いつもより低かった。
僕はいつものように笑って誤魔化す。
でも空気は変わらなかった。
テヒョナはそれ以上何も言わずに、立ち上がった。
テヒョナの背中を見送りながら、僕は思った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈失敗した。
冗談を言ったつもりだった。
でも、あれは確かにテヒョナに告白した。
放課後。
僕らはいつも通り2人で帰った。
会話はない。
でも距離は変わらない。
それが、逆に怖かった。
別れ際、テヒョナが足を止める。
一瞬期待してしまった自分に嫌気がする。
でも、テヒョナは首を横に振った。
それだけ言って、踵を返す。
夕焼けの中、テヒョナの遠くなっていく背中を見つめた。
もう、知らなかった頃には戻れない。
僕の軽い一言で、興味本位で、踏み込んでしまった。
その日の夜、窓際に猫がやってきた。
猫は楽しそうでも、責めるわけでもなくただ聞いた。
猫はしっぽを揺らして、僕の目を見つめる。
そんなものなんていらなかった。
テヒョナの隣に居られれば、それだけで幸せだったのに。
でももう遅い。
┈┈┈┈┈┈┈1年後。
何が終わるのか。
答えが少しずつ近づいているような気がした。
𝙉𝙚𝙭𝙩 .🐻🐿














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!