あなたの下の名前side
部室のドアを開けた瞬間、
音に押し返されそうになった。
黎のギター。
上手いとか、そういう言葉じゃ足りない音。
でも今日は、
少しだけ強すぎる。
そう言っても、
黎は一瞬こちらを見るだけで、
何も答えずに弦を押さえ直した。
さっきまで、
別の男子と曲の話をしていた。
盛り上がっていたのは事実だし、
悪いことをしたわけでもない。
なのに、
背中に視線を感じた。
私が歌い出すと、
黎の音が一気に近づいてくる。
合わせる、というより
包み込むみたい。
こんな音で寄り添われたら、
ちゃんと聴かないわけないのに。
矢花side
話してるのは、見えてた。
普通のことだし、
口出す理由もない。
でも、
俺の前で見せる顔と、
あいつに向けてた笑い方が違った。
それだけで、
指に力が入った。
音でしか、
気持ちを出せなかった。
あなたの下の名前side
練習が終わって、
気づけば部室には私と黎だけ。
アンプの電源を落とす音が、
やけに大きく聞こえた。
回りくどい言い方。
そう答えたら、
黎は小さく息を吐いた。
すれ違う時、
袖が軽く引かれる。
矢花side
離すつもりだったけど、それだけじゃ足りなくて。
目は合わせない。
合わせたら、
全部ばれそうだったから。
あなたの下の名前side
それだけで、
指が離れる。
音楽より静かなその仕草が、
今日いちばん心に残った。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
最後に戻る場所は、
最初から決まってたみたいに。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ 𝐅𝐢𝐧
リクエストありがとうございました🤍
お気に入り100名様、ありがとうございます!
前回のお話、読んでない方多いので、そちらも読んでください!
新作
前回のお話










編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。