俺は“終わらせる側”やと思ってた。
世界の散らかった舞台を、
静かに整える演出家。
♪ ほーたーるのーひーかーり……
鼻歌は俺の合図。
幕を引く合図。
誰も俺の顔を覚えへん。
誰も俺を止められへん。
そう思ってた。
あの日までは。
⸻
そいつは、真昼に現れた。
人通りの多い交差点。
信号待ちのざわめきの中。
俺の隣に、自然に立ってた。
「きれいに終わらせるの、好きなんやろ?」
笑っとる。
怖がらへん。
初めてや。
「……あんた、誰や」
俺が問うと、
そいつは静かに鼻歌を重ねた。
♪ ほーたーるのーひーかーり……
俺の旋律と、まったく同じ高さで。
背筋が凍る。
「なぁ、自分の終わりは考えたことある?」
世界の音が、急に遠くなる。
信号は青のはずやのに、
誰も動かへん。
時間が止まったみたいに。
「舞台はな、ひとりやないんやで」
そいつの目は、
俺よりずっと冷たかった。
「''Curtain Call''も、いつかは降ろされる」
⸻
気づいたとき、
俺は部屋におった。
見覚えのない、真っ白な部屋。
窓もない。
時計もない。
ただ、スピーカーから流れる音。
♪ ほーたーるのーひーかーり……
俺の声や。
録音された、俺の鼻歌。
壁に文字が浮かぶ。
『終演』
「……ふざけんなや」
叫んでも、反響するだけ。
ドアはない。
出口もない。
世界中のニュースが脳裏に流れる。
“Curtain Call、消息不明”
“連続失踪事件、突如止まる”
終わった。
俺の舞台が。
⸻
暗闇の向こうから、声。
「ようやく片付いたな」
あいつや。
「世界は次の幕に進むんや」
「アンコールは?」
俺が聞く。
静かな笑い。
「許さへん言うたやろ?」
照明が落ちる。
完全な暗転。
⸻
数日後。
東京の駅ホーム。
誰かが、ふと鼻歌を口ずさむ。
♪ ほーたーるのーひーかーり……
でも、声は違う。
少し低い。
少し冷たい。
「ほな、次いこか」
新しい''Curtain Call”が、
ゆっくり歩き出す。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。