もわもわと湯気が立つ湯宿で、孌はゆっくりと夜の雪景色を見上げた
六花が、熱気に当てられて溶けてゆく
すっかり湯船に浸かった孌は、居心地の良さと背後に潜む夜の影への抵抗感で身動ぎを繰り返す
なんだか、落ち着かない
流石、孌の護衛である
名を馳せた櫻宮の臣従達である、何がなんでも孌を脅威から守るという固い意志が感じられる
そんな二人を微笑ましく思う
コンッコンッ
脱衣場の方から男の声がする
煙雨の夫である鷲脅だ
家に免れた際に紹介された、腰が低く物腰柔らかい男という第一印象だった
気配が無くなる
忍びの妻なら、忍びの夫
あの優しそうな瞳の奥に、何か鋭利な刃物の破片が埋め込まれているようで身が震える
敵の塒にのこのこと入り込んできた三人は
まだ、味方の存在に気付いていない













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!