第3話

夏夜の灯
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2025/07/21 06:13 更新
お盆の時期
鬼殺隊の隊士は任務が一段落すると
それぞれの想いを胸に大切な場所へと向かう

隊士のあなたは任務が一段落して怪我の治療に専念している
もうほぼ治ってきているので私もお墓参りに行こうと思い
準備をして歩き出す

幸いなことに泊まっていた宿からお墓までそう遠くはない
偶然なのだろうか、お館様のご配慮だろうか


宿を出ようとしたところで見知った顔と出会った

あなた
「善逸!!」

善逸
「あなたちゃん!!?」

顔を見るや否や泣きついてきた
どうやら一人で任務をこなしてきたらしい

どうにかなだめて、これからお墓参りに行ってくると言うと

善逸
「この時間から!!?…あなたちゃん待って!」

とっさに腕を掴まれた

善逸
「こんな時間に一人で出歩くなんて危ないって!俺もついて行くよ!」

…え?



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川の水面には月がゆらゆらと移されており
世界を優しく照らしている

村が近いからか道は舗装されており柵まで付いている


あなた
「善逸、なんでついてきたの?ただのお墓参りだしそんなに遅くはならないよ。私一人でも大丈夫だったのに」

あなたがそう言うと、善逸はムッとしたように唇を尖らせる

善逸
「だってさ…いくら鬼殺隊の隊士とはいえ、こんな時間に女の子一人で行かせられないよ」

その言葉に胸が鳴る


彼は普段臆病で泣き虫だ
でも時折見せる優しい強さに
胸が締め付けられるような想いを抱いてきた


でも、善逸は誰にでも優しいし
女の人達には特に甘い言葉を並べる
私の事なんて、ただの仲間としか思っていないだろうな



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墓地に着いた

夏草が青々と茂り
遠くで蝉の声が響いている

墓石の表面には苔が薄く張り付いていた
あなたは持ってきた水と布でお墓を丁寧に拭き始める

全部は少し離れた場所で静かに立って見ていた
いつも大騒ぎしてる彼もお墓の厳かな雰囲気に飲まれたのか
静かにあなたの様子を見守っている

あなた
「善逸、荷物からお線香取ってくれる?」

彼は小さく頷きお線香を取り出してそっと渡してくれた
善逸の指先がほんの一瞬あなたと触れる
暖かくて
ほのかに震えているような感触に胸がまた騒ぐ

慌てて目を逸らし墓前に線香を立てる
煙が細く立ち上り夜の空に溶けていく

過去の記憶が蘇る

大切な人の笑顔、一緒に過ごした時間

それが奪われた時の記憶
胸が締め付けられる

私なんて、生まれなければ良かった______
そう強く思った夜が何度あっただろうか

気づけば目から涙が零れていた
慌てて袖で拭おうとした時

善逸の声が耳に届く

善逸
「あなたちゃん……大丈夫?なんか、泣いてるみたいだけど……」

善逸の声はいつもより低く、優しい
私はハッとして顔を上げる

善逸はいつの間にか隣にいた

涙が止まらない

大切な人に心配をかけてしまった

でも、とても
とても嬉しかった


善逸
「おおおおお俺なんか変なこと言ったかな!!?ごめん!!……俺こういう時なんて言えばいいのか分かんないけど…あなたがそんな顔してると俺、なんか胸が苦しくて……」

ああ
歯止めが効かない

泣きやみたいのに


善逸
「余計泣かせちゃった!!?え、と…なんか、その、俺に出来ることあったら言ってよ!あなたちゃんの為ならなんでもするから!」

泣き止んでほしくて必死だ


あなた
「ありがとう善逸……ちょっと昔のこと思い出してただけ。平気だから」

善逸は少しホッとしたような表情になった



あなた
「さて、立ってばっかりで疲れたよね!お墓参り終わったし、ちょっと休もうか」



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二人で川辺に腰を下ろした


川の水は透明で、底の小石が見えていた


夜とはいえ夏なので蒸し暑い

より一層夜風が汗ばんだ肌を冷やしてくれる


楽しい話がしたくて
最近の任務の話、炭治郎と伊之助のようす
楽しかったこと嬉しかったこと
沢山話した

善逸は身振り手振りで感情を表しながら話をしてくれた

話が面白くておもしろくて沢山笑った





話が一段落して善逸と二人で川の流れを見ていた

しばらくして彼がぽつりぽつりと話しだした


善逸
「あなたちゃんって俺の中でいつも強いイメージがあってさ、強い音がするんだ」


…善逸


善逸
「きっと沢山頑張ってきたんだと思う。でもきっと君だって泣きたい時があると思うんだ、その時は…俺の前で泣いて。そしたらそばにいられる」

泣きたい時は頼ってほしい
一緒にいさせて欲しい

貴方が大切なんだ______


善逸はハッとして

善逸
「あっそのえっと、違っ…くはないけどその、えっと……ごめん!!俺なんかが出しゃばって!!うわ恥ずかしいこと言っちゃった!!今のは忘れて!!」

彼の顔は真っ赤だ
両手で頭を抱える姿に笑みがこぼれる



夜がふけってきた

空が一段と暗く染まっていく

川に映る月がより一層輝く

あなたは立ち上がった


あなた
「よし、帰ろうか!これ以上暗くなると鬼が出るかもよ?」
とちょっと冗談交じりに言ってみた


善逸
「確かに結構長くいるもんな…ってそんな怖いこと言わないで!!ほんとに出ちゃうから!!」

彼は慌てて立ち上がるとあなたの背中の後ろに回る


あなたは笑いながら歩き出した
善逸はすぐ後ろからついてくる


その足音がとても心地よい


彼がこうやってそばに居てくれるなら
私はそれだけで、幸せな気がする



夏はまだまだ終わらない





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