見知った、何も関係がないと思っていた彼が、どうしてここに。
名前を呼びかけると、自分の意思とは反対に口が勝手に閉じる。
唸ってみても意志を移した声は出ない。
ただひたすらにくぐもった音しか出てこず、喉に触れて違和感を声に出そうと踏ん張る。
踏ん張るも、何も変わらない。
隣で転がされ、苦しげにするおんりーもまだ目覚めてない。
手出しができないのか、机につく白、黒、ドズルさん、Menも不安げにしている。
特にドズルさんは顔面蒼白になり、見たことがない顔をしていた。
取り敢えず今は声が出ない口だ。
暫く悶えていると、上…佇むぼんさんの横にいつの間にか立っていた人影が、笑いを含んだ声でこちらに語り掛ける。
あぁ、この感じ。
纏っているオーラがぼんさんと一緒だ。髪には紫紺の色も含まれている。
つまり、ぼんさんの仲間だということが証明されて。だからぼんさんが敵なのだとしたら、ペンギンも敵であると。
それは、友人との別離を示す声音だった。
ぼんさんが声をかけて、ペンギンが手をかざした瞬間、僕の口が開いた。
声が出る。思うように出せる。
だから、叫ぼうとして。
僕の言葉に被せた大きな声が響き渡った。
声は優しさを隠し、ただ焦燥を帯びている。
ドズルさんだ。驚いた顔をするMenの横から、壇上のぼんさんに向かって声を張り上げている。
怒っている、ように見えた。
何に対して?
そもそもこの2人に関係があったことさえあまり知らなかった。ぼんさんとペンギンは生徒会長と副生徒会長だけれど、特にドズルさんとの関係は持っていないはず。
もしかしたら、どこかで仲良くなっていたのかもしれない。
そうだとすると、ドズルさんは何に怒っているのか。
友達になってくれたぼんさんが普通の人ではなかったこと?
『裁判官』という謎の立場をずっと隠されていたこと?
ペンギンが裏切ったこと?
自分をここに呼び出したこと?
一人顎に手を当てて考え込む。
と、ぼんさんがまたも木槌を振り上げた。
乾いた音が一つ、二つと鳴り響く。
そう笑うぼんさんの頭上には、ただ黒い輪が浮かんでいる。
つまり、彼は天使であり天使ではない。
死神にもならない、中途半端な存在。
視線がちら、と苦しむおんりーに向く。
眉を顰め、夢でも見ているのかここに呼び出された時から目覚めていないため、会話ができていない。
情報の処理でパンクしている僕。
信じられないと叫びそうなドズルさん。
冷徹な表情をしているMen。
暇そうに足を揺らす黒。
黒を咎め、真剣な表情で裁判を見る白。
ぼんさんの後ろに傅くペンギン。
全員を一瞥しながら、ぼんさんは高みで言い放つ。
微笑むぼんさんは、何故か____どこか苦しげな顔をしていた。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。