カズくんに起こされ目を覚ますと、知らない場所にいた。
いつも通りでいてくれるカズくんに内心ほっとしていた。
ボクじゃ焦って不安が増すだけだと思うから、カズくんは本当にすごい。
そう言われカズくんと一緒に走る。
モニターに映し出される文字は。
_どういうこと?
カズくんがいつも通り…いや、いつも通りを装ってそう言う。
震えながら声を出す。
バカ。僕は役者だろ。カズくんみたいに、もっと頑張れよ。
いつも通りで、いいのに。
いつも通りが分からなくて、本当は怖くて。
カズくんだって怖いのに、自分だけ…
カズくん…
カズくんと話を合わせろ。
それでいい。
それでいいんだ。
ドッキリなんだ。
これは、…ドッキリなんだ…
…
どうして、僕たちがこんな目に遭わなきゃいけないのだろう。
僕が何かしちゃったかな?
それだったら、カズくんを巻き込まないでよ。
もし、カズくんが死んじゃったら…?
MANKAIカンパニーは、どうなるの?分からないよ。怖いよ。
平然を装うのが、正解なのかな。
でも、きっと…カズくんは無理してでも、僕を安心させたいんだよね。
だったら、弱音を吐いてカズくんを困らせちゃったりしたら、ダメだよね。
カズくんのように、いつも通りでいよう。
そう決めた僕は部屋を探索し始めた。
やっぱり、ドッキリなんかじゃないんだ。
分かってても、辛くて苦しくて、堪らなくなる。
戻ろう。カズくんにも報告しておこう。
何かあったら面白いのにね、なんて笑うカズくん。
もっと。
元気がないとカズくんにバレちゃう。
なんて笑ってくれるカズくん。
…苦しいよ。
そう思いながら、カズくんの話を聞く。
…カズくん…、
見てればわかる。どんどん元気がなくなっていく。
でも、僕を心配させないようにって平気でいようとする。
これ以上続けても、カズくんが辛いだけだ。
_そう思った僕は、そっと持ってきていたナイフを取り出し、心臓部分に刺した。
カズくんの叫びを無視して、なんとか言葉を言う。
ああ、もうだめかも。
意識が、遠のいていく。
カズくんの顔、みえないや。
ーー
嫌だ。
オレ、俺…っ
嘘じゃないのもわかってる。でも、
むっくん、
ヒョードルも、テンテンも、ゆっきーも、すみーも、くもぴも、監督ちゃんも、MANKAIカンパニーのみんなも、悲しんじゃうよ。
かっこ悪い。
1番年上なんだから、しっかりしなきゃいけなかったのに。
むっくんが死ぬんじゃなくて、俺が死ねばよかったのに。
ガチャリと扉が開いても、俺はむっくんの死と向き合えなかった。
苦しくて、辛くて。死にたくて、申し訳なくて。
俺が、俺が死ねばよかったんだ。
むっくんじゃなくて、俺が死ねばよかったのに。
俺がちゃんとできてればよかったのに。
なんで、
__死亡者、5名。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!