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第5話

5.向坂椋 , 三好一成
54
2023/11/18 06:31
カズくんに起こされ目を覚ますと、知らない場所にいた。
三好一成
マジやっべー…誘拐的な…?
向坂椋
どどどどうしましょうカズくん…!!
三好一成
むっくん落ち着いて!部屋探索したらなにかヒントあるかもしんないし、とりま探索っしょ〜!
いつも通りでいてくれるカズくんに内心ほっとしていた。

ボクじゃ焦って不安が増すだけだと思うから、カズくんは本当にすごい。
向坂椋
…あれ?あそこに、すごい遠いけど…何か壁にない?
三好一成
え?…あ!モニターじゃね?とりまそこまで行ってみよ〜☆
そう言われカズくんと一緒に走る。
向坂椋
…、
モニターに映し出される文字は。
三好一成
…、どちらかが死なないと、出られない部屋…?
向坂椋
…、ぇ
_どういうこと?
三好一成
…あっ!もしかしたらなんかのドッキリとか〜!?
向坂椋
…え、?
カズくんがいつも通り…いや、いつも通りを装ってそう言う。
三好一成
チカちょんとかだったらこういう部屋手配できそうじゃん!手の込んだドッキリすぎない!?
向坂椋
…そう、だね…左京さんも許可したのかな
震えながら声を出す。
バカ。僕は役者だろ。カズくんみたいに、もっと頑張れよ。
いつも通りで、いいのに。
いつも通りが分からなくて、本当は怖くて。
カズくんだって怖いのに、自分だけ…
三好一成
怯えた顔見よう!みたいな考えだと思うけど、オレたちは簡単に引っかからないよん☆
カズくん…
三好一成
やべー、でもドッキリでもなんかテンション上がるかも!マンガとかでしか見ない部屋にオレたちいるってことでしょ?
向坂椋
確かに…!ドッキリでも、こんなこと普通は無いもんね
カズくんと話を合わせろ。
それでいい。
それでいいんだ。
ドッキリなんだ。
これは、…ドッキリなんだ…
三好一成
部屋探索したらなにか見つかっちゃったり!?
向坂椋
でも、広いから探索は大変そうだね…
三好一成
なら、二手に別れる?オレあっち見てくる☆
向坂椋
わっ、カズくん早い…!じゃあ僕はこっち調べるね…!
三好一成
よろ〜!
向坂椋
…カズくん…
どうして、僕たちがこんな目に遭わなきゃいけないのだろう。
僕が何かしちゃったかな?
それだったら、カズくんを巻き込まないでよ。
もし、カズくんが死んじゃったら…?
MANKAIカンパニーは、どうなるの?分からないよ。怖いよ。
向坂椋
平然を装うのが、正解なのかな。
でも、きっと…カズくんは無理してでも、僕を安心させたいんだよね。
だったら、弱音を吐いてカズくんを困らせちゃったりしたら、ダメだよね。
向坂椋
…大丈夫…、僕は、やれる…
カズくんのように、いつも通りでいよう。
そう決めた僕は部屋を探索し始めた。
向坂椋
…これ…ナイフ?
向坂椋
こっちには、銃…
やっぱり、ドッキリなんかじゃないんだ。
分かってても、辛くて苦しくて、堪らなくなる。
向坂椋
向坂椋
…よし。
戻ろう。カズくんにも報告しておこう。



三好一成
あっ!むっくん、ちょうど終わった感じ?
向坂椋
カズくん。うん、終わったよ
三好一成
そっちに何かあった?オレが行ったところマジで何も無くてさー…テンサゲ
何かあったら面白いのにね、なんて笑うカズくん。
向坂椋
こっちには、銃やナイフがあったよ。秋組で使ってる小道具なのかな?
三好一成
じゃね?でも、小道具まで用意するなんてガチすぎ!
向坂椋
あはは。そうだよね
もっと。
元気がないとカズくんにバレちゃう。
三好一成
暇つぶしって言っても、何も出来ないんだよね〜…スケブとかも無いから、絵描けないし!
向坂椋
確かに…マンガとかもないから、暇だなあ…
三好一成
ドッキリに本気でかかってるフリしてみるとか!
向坂椋
あはは、楽しそう。でも、僕なんかができるかな…
三好一成
むっくんは凄いから平気っしょ!
なんて笑ってくれるカズくん。
…苦しいよ。
向坂椋
…(どうしよう)
そう思いながら、カズくんの話を聞く。
三好一成
チカちょんかな?誰が監視カメラで見てるのかわかんないけど、ドッキリって分かっちゃったから出して〜!!
向坂椋
まだ開かないね…
三好一成
えー!どうするのが正解なの!?
…カズくん…、
向坂椋
(ダメだ。カズくんも限界だ)
見てればわかる。どんどん元気がなくなっていく。
でも、僕を心配させないようにって平気でいようとする。
これ以上続けても、カズくんが辛いだけだ。



_そう思った僕は、そっと持ってきていたナイフを取り出し、心臓部分に刺した。


三好一成
_むっくん?
向坂椋
…、ごめん…ね、カズくん…
三好一成
…、むっくん?ねえ、嘘でしょ?
向坂椋
ひとりで、むりさせて…ごめん…ぼく、かっこわるかったよね…
三好一成
そんなことっ…
向坂椋
カズくんはやさしいから、いつもどおりでいてくれたんだよね。…ありがとう
三好一成
むっくん、待ってよ
カズくんの叫びを無視して、なんとか言葉を言う。
向坂椋
ぼく、ずっとかっこわるかった…
向坂椋
…カズくん、ぼく、……おうじさまになれたかな?
向坂椋
かっこよくて、ひとをまもれる、…おうじさまに…
三好一成
…そんなの、最初っから王子様だよ…
向坂椋
_そっか。
ああ、もうだめかも。
意識が、遠のいていく。
カズくんの顔、みえないや。






ーー
三好一成
…、むっくん?
嫌だ。
三好一成
なんで、
オレ、俺…っ
三好一成
むっくん、いやだ。やだよ、目、開けてよ
嘘じゃないのもわかってる。でも、
三好一成
…ドッキリであってほしかったよ…
むっくん、
三好一成
むっくん。やだ、むりだよ。むっくんは、大事な友達で、家族のひとりなんだよ
ヒョードルも、テンテンも、ゆっきーも、すみーも、くもぴも、監督ちゃんも、MANKAIカンパニーのみんなも、悲しんじゃうよ。
三好一成
俺…っ、むっくんのこと、守れなかった
かっこ悪い。
1番年上なんだから、しっかりしなきゃいけなかったのに。
むっくんが死ぬんじゃなくて、俺が死ねばよかったのに。
三好一成
いやだ…
三好一成
むっくん…
ガチャリと扉が開いても、俺はむっくんの死と向き合えなかった。
苦しくて、辛くて。死にたくて、申し訳なくて。
俺が、俺が死ねばよかったんだ。
むっくんじゃなくて、俺が死ねばよかったのに。
俺がちゃんとできてればよかったのに。
なんで、
三好一成
どうして…っ


__死亡者、5名。

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