ジョンウォンside
「一体何処に連れていくんですか?」
何度問いかけても、職員たちは無言のまま僕たちの腕を引いて歩き続けた。
(僕はどうなってもいいから、とりあえずニキだけでも…)
そう思いながら、連れられてきた場所は普段の検査室よりも更に地下にある部屋だった。
(こんな場所があったなんて……)
薄暗くてよく見えなかったけど、舞うホコリと空気のよどみで、ここがどれだけ使われてない場所かだけは伝わってきた。
「…おい。こんなとこで何する気だよ」
ニキが睨みつけながらその言葉を吐いた。
「さっきはあなたさんが居た手前、恐がらせるようなことが言えませんでした…。なんせ彼女は私たちが長らく求めてきた実験対象ですから…」
「ニキさん?施設ではそんな乱暴な言葉遣い教えていませんよね?」
不気味な笑顔を浮かべながら、職員がニキの目線に合わせてしゃがむ。
「うるせえよ…!」
「さっきから貴方の行動には、目が余ります……。私だってこんなことしたくてしている訳じゃないってことは理解してくださいね?」
職員が近くに置いてあった木材を手に取り、ニキに降りかかった。
「ニキっ!!!!」
叫びながら、ニキの上に覆いかぶさった瞬間、背中に鈍い痛みが走った。
「ッッ……」
「ひょん!!!」
ニキが僕のことをゆっくりと抱き抱えてくれたけど、痛みのせいで目がチカチカしてはっきり見えない。
でも誰にも聞こえない小さな声で、「まあジョンウォン坊ちゃんでもいいか。結果が分かればそれでいい」と呟いた声だけはしっかりと耳に届いた。
「どうして!俺なんかのために!!」
「怪我は……ない…ですか?」
「…ない……」
そう言ったニキを見ていたら、何だか子供の頃の様子が思い浮かんだ。
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…あれは僕が5歳くらいの頃かな
懐かしい…あの頃のニキ可愛かったな………今も可愛い僕の弟なのは変わらないけど……
僕が今見ているこの景色はポラロイド写真のような色あせていて、それが現実ではないことを物語っている。
「ジョンウォニひょーーーん!見て見て!」
「ニキくん何ですかー?これ」
「これね、ひょんにあげるプレゼント!!」
「僕に…?」
「今日ひょんの誕生日でしょ!」
ニキは屈託のない笑顔で三本の花を差し出してきた。
「これねー、ソヌひょんに花言葉教えてもらったんだ~!」
「あれ?今ソヌひょんって花にハマってるんでしたっけ?」
「うん!昨日からね!なんかねー、お菓子作りは難しくてやめちゃったんだって!ジェイひょんが怒ってた!」
「ソヌひょんらしいですね笑 ところでこれってどんな意味なんですか?」
「んーとね、あのね…これがブルースターっていうの!意味はね、信じ合う心だって!これはアイビーって言ってね、友情だって!それでそれでこの最後の花はね、ダリアって言うの!意味は感謝!」
そう言うと、ニキは急に抱きついてきて僕のことを上目遣いで見つめながら、もう今は見せることの少なくなったあの眩しい笑顔で言った。
「ひょん!いつもありがとう!」
だんだんと周りの景色が白飛びしてきて、現実に引き戻される感覚がした。
(ニキがあの頃の笑顔を取り戻すためにも…!僕たちがしっかりしないと!僕がニキやあなたを守るんだ!)
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我に返ってふとニキを見つめると、僕の顔を覗き込んでいた。
「あぁ、よかったジョンウォニひょん…なんか意識あるのに反応無かったから…」
そう言っているニキの後ろには振り上げられた木材があった。
「危ない!!」
僕はニキを押しのけた。
その瞬間、さっきまで痛かったはずの背中は動けるまで回復していることに気づいた。
(…これがヴァンパイアの力……?)
そう思いながら木材を掴むと、職員は「もう動けるくらいに回復したんですね。流石です。進行が速くて調べ甲斐がありますね。」と笑った。
「いい加減にしてください!」
狭いその部屋に僕の叫んだ残響だけが残った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。