「あたし、そろそろ就職すべきなんかな」
「するかしないかなら するべきだろ」
狭いレジの中で、 繋心を左隣に座っている。
昼間は来なくていいと伝えられたものの、 現在無職のあなたにとって暇でしょうがなかったからだ。
「ねぇーパイセン聞いて聞いて」
「なんだ」
「昨日男の子たちと話しちゃったの! ちょっと遅れた春の幕開けかもしれない」
「ちょっとどころじゃないだろ」
無言も束の間、 繋心は改まった声色をした。
「 …そいつら、 黒いジャージだった? 」
「ん? んー」
「排球部って書いてたか?」
「たしか」
はぁぁー … 、とおっきなため息をつく繋心に、 あなたは真面目に心配しはじめた。
「そいつら … たぶんだが、 俺が最近コーチをやりはじめたとこの部だ」
「え!! 奇跡じゃん! 肉まんいっぱい買ってってくれるなんて、 いいヤツらだね」
あなたは大げさにはしゃぐ。
繋心は またもや ため息をつく。
「肉まんより飯を食えって、 何度も言ってるのによ … 」
「まあでも、 肉まん12コも買ってくれて、 お店も大繁盛でしょう」
「肉まん12コっつってもなぁ … つかそういう問題じゃねえから」
繋心は軽めにデコピンをしたはずだが、 あなたは
" いでっ " と短い悲鳴をあげた 。
「今日もよろしく頼むぞー」
「はいはい」
もう彼女にとっては恒例行事なのか。
ひじをつきながら 客が来るのを待つ。
ガラガラガラ、 と店の扉が開く音が響いた。
「いらっしゃいませ〜」
のびた声を発しながら、 あくびを呑み込んだ。
その直後、 入ってきた客が 早歩きでこっちに向かってくるのを とらえた。
はやっ … アレ … 昨日の子??
涙ボクロの男子だった。レジの前に来ると 、両手を握りながら 一瞬視線をそらした。
「 … 、あのっ 。昨日は ありがとう、 ございました」
勢いよく、 肉まん一つ分の代金をあなたへ渡す。
「 え … ? いやぁっ、 アレはあたしのおごりだって! ヘーキヘーキ。 … なんつーか 、 律儀な子だね」
あなたはやんわりと代金を返した 。
「まあたった120円だし。そのたった120円を、 他の使い道にしなさいよ。まだ学生なんだしさっ」
「っ、ハイ! ありがとうございます!」
少年は 嬉しそうに帰ってった。
「いまの貯金的に、もらってよかったのかも … 」
いかにも聞き捨てならないような独り言を最後に、 あなたは仕事を終えた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。