第4話

2.たった120円を、
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2025/07/04 10:00 更新




「あたし、そろそろ就職すべきなんかな」

「するかしないかなら するべきだろ」


 狭いレジの中で、 繋心を左隣に座っている。

昼間は来なくていいと伝えられたものの、 現在無職のあなたにとって暇でしょうがなかったからだ。



「ねぇーパイセン聞いて聞いて」

「なんだ」

「昨日男の子たちと話しちゃったの! ちょっと遅れた春の幕開けかもしれない」

「ちょっとどころじゃないだろ」 



無言も束の間、 繋心は改まった声色をした。


「 …そいつら、 黒いジャージだった? 」

「ん? んー」

「排球部って書いてたか?」

「たしか」



はぁぁー … 、とおっきなため息をつく繋心に、 あなたは真面目に心配しはじめた。



「そいつら … たぶんだが、 俺が最近コーチをやりはじめたとこの部だ」

「え!! 奇跡じゃん! 肉まんいっぱい買ってってくれるなんて、 いいヤツらだね」



あなたは大げさにはしゃぐ。
繋心は またもや ため息をつく。


「肉まんより飯を食えって、 何度も言ってるのによ … 」

「まあでも、 肉まん12コも買ってくれて、 お店も大繁盛でしょう」

「肉まん12コっつってもなぁ … つかそういう問題じゃねえから」


繋心は軽めにデコピンをしたはずだが、 あなたは
" いでっ " と短い悲鳴をあげた 。






 

「今日もよろしく頼むぞー」


「はいはい」


 もう彼女にとっては恒例行事なのか。

ひじをつきながら 客が来るのを待つ。




 ガラガラガラ、 と店の扉が開く音が響いた。


「いらっしゃいませ〜」


のびた声を発しながら、 あくびを呑み込んだ。

その直後、 入ってきた客が 早歩きでこっちに向かってくるのを とらえた。



はやっ … アレ … 昨日の子??



涙ボクロの男子だった。レジの前に来ると 、両手を握りながら 一瞬視線をそらした。


「 … 、あのっ 。昨日は ありがとう、 ございました」


勢いよく、 肉まん一つ分の代金をあなたへ渡す。



「 え … ? いやぁっ、 アレはあたしのおごりだって! ヘーキヘーキ。 … なんつーか 、 律儀な子だね」

あなたはやんわりと代金を返した 。


「まあたった120円だし。そのたった120円を、 他の使い道にしなさいよ。まだ学生なんだしさっ」


「っ、ハイ! ありがとうございます!」


少年は 嬉しそうに帰ってった。







「いまの貯金的に、もらってよかったのかも … 」

いかにも聞き捨てならないような独り言を最後に、 あなたは仕事を終えた。



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