約束の日が、少しずつ近づいてくる。
しかし俺たちは特に変わらず過ごしており、
帰りはこれまでと同じように一緒に帰っている。
そんな中の、ある一日。
『今日は遅くなっちゃうかもだから、先帰ってて』
そんな優吾からのメッセージに俺は、
いや待つよ、気にしないでと返す。
だって、優吾と帰りたいから帰っているのだし。
しかし申し訳ないから、と言って譲らなかった優吾は、
何ターンか攻防戦をしたのちようやく折れてくれた。
『じゃあ俺の部室まで来て、外は寒いから』
『分かった。時間近くなったら向かうね』
そんなこんなで、
俺は優吾のサークル室まで行くことになった。
サークル室が立ち並ぶ中、
優吾の所属しているフットサルサークルまで辿り着く。
俺はこの年でも若干人見知りが抜けきらないので、
こういう規模が大きめのサークルには入れないし
あまり近寄らない。
張り紙の貼ってある白いドアをノックしようとすると、
中から話し声が聞こえてきた。
俺は十年近く前のことを思い出し身構えたが、
その必要はなくて。
今回はあのときのようなものでは、なくって。
「___で、結局髙地は彼に言うの?言わないの?」
…たぶん、髙地の先輩、の声。
…彼?
彼って誰なんだ、何を言うんだろ
思わず口に出してしまった。
でも、中には聞こえてないはず。
髙地が、俺に言えないこと?
俺から言わなきゃ、だめなこと?
もしかして、
俺は単純なので、
可能性をひとつ思いついてしまった。
でも、もしそうだとしたら、
俺は、
すると、
がちゃ、音を立ててドアが開いた。
そう言って俺を部屋に入れる優吾は、
なんだか慌てていて。
俺の勝手な想像は当たっているのかもしれない。
そう思えてしまった。
もちろん確証なんてないから、ただの希望的観測。
優吾の先輩さんは、俺の方を見てにこにこしている。
会釈をすると、向こうも返してくれた。
ほんとだ、イケメンだ。いい人だ。
一応確認をしてから、
先輩さんに挨拶をし、部屋を出る。
なんでもないよ、なんて嘘つき。
だって優吾、自分じゃ見えないだろうけど、
耳が真っ赤になってる。
口には出さず、心の中で愛でた。
俺はやっぱりこの人が好きだ。
そうだったとしてもそうでなかったとしても、
一生一緒にい続けたいよ。
俺の方を見て何を話そうか迷っている優吾に、
今日もほんとに寒いね、と声をかけた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。