『山田先生』
「ん?おお、あなた先生」
山田伝蔵は、すっかり忍術学園の教師用の装束を着こなしている青年をみとめて、その目を緩めた。
「どうしましたかな?」
『…その、あの……』
「ん?」
まだそう何度も言葉を交わした間柄でもないが、それでも稀に見るこの青年の歯切れの悪さに伝蔵は首をかしげた。
『……』
「ん?」
『…お力を、貸して戴きたいのです…』
***
「こんっの……馬鹿タレ共がー!!!」
「「「「「「「「「「わあぁ!?」」」」」」」」」」
「ほら、言ったじゃないか…こんにちは山田先生」
「おおこんにちは庄左ヱ門。…じゃなくてだな…お前ら、こんなに大勢で押しかけてどういうつもりだ!あなた先生も困っているだろうが!」
そう、小平太たちが去ってからまだ幾分もしないうちに、あなたの部屋は一年は組で溢れかえってしまったのだった。
「っスけどぉ~」
「皆で一緒なら楽しいと思ってぇ」
「「「「「「「「「ごめんなさーい」」」」」」」」」
「本当、すみませんでしたあなた先生」
『君はいいよ…。君達…せっかく来てくれたのに済まないが、騒がしいのは苦手なんだ…』
あなたがはっきりと、でも少し申し訳なさそうに一年は組をみる。
「…ご迷惑でしたかぁ~?ふえぇ」
「ちょっと喜三太泣かないでよ。僕も泣きたくなっちゃうだろ」
「お腹すいた…」
「カラクリ見てもらおうと思ったんですー」
「ごめんなさぁい」
それぞれがしょぼんとして謝りはじめ、流石に子どもを泣かすのはどうかと思ったのかあなたが付け加えた。
『…でもまあ…時々、二、三人ずつなら…』
「本当ですか!」
「やったあ!」
「じゃあ委員会がないときに来ますね!!」
「「「「「「「「「「わーい!」」」」」」」」」」
すっかり元気を取り戻してきゃっきゃと騒ぐ一年は組を見ながら、小さく肩を落としたあなたに伝蔵は「すいませんねえ…」といいながら、少し同情した。
『…いえ…』
***
「…ということがあったんですよ」
背筋を伸ばして座った一年は組の頭脳、庄左ヱ門が湯呑みを手に先程のことを話していた。
「へえー。あなた先生も気の毒だなあ」
いいながら楽しそうに笑って煎餅をパリ、と齧ったのは尾浜勘右衛門。
勘右衛門はちらりと畳に寝転ぶ同輩に目をやった。
「……何だよ」
「別にー?」
勘右衛門の視線に気がついた三郎がむくりと起き上がり、不機嫌そうな様子を隠さず勘右衛門を睨む。
「ただ誰かさんが気になってるんじゃないかなあと思ってさ」
「誰があんなやつ…」
「別に三郎とは言ってないけど?」
「勘右衛門」
冗談だってー、といいながら勘右衛門がまたひとつ煎餅を摘んだ。
「鉢屋三郎先輩、あなた先生はお強いらしいですよ、相当。金吾が七松小平太先輩が大興奮で大変だったと言っていましたから」
庄左ヱ門の言葉に、勘右衛門が頷く。
「なんでも七松先輩を下級生を扱うみたいに打ち負かしたらしいね」
「そうなんですか?凄いですね」
その会話を実につまらなそうに聞いていた三郎が、ぽつりと呟いた。
「あいつ、私の変装が一瞬も通用しないんだ」
「…え?それほんと?」
「本当だ!こんな嘘つくか!」
「…ああ、それで」
驚く勘右衛門を余所に、庄左ヱ門が冷静に頷いた。
「通りで鉢屋先輩が拗ねてらっしゃるわけですね」
「…拗ねてるって…庄ちゃん厳しい…」
「拗ねてるだって!あはは三郎!」
「勘右衛門黙れ」
今福彦四郎が少し不安そうに庄左ヱ門をみる。
「庄左ヱ門、あまりそう言う事をはっきりいうなよ」
「彦ちゃんまで思ってたんだ」
「あ、いえ、僕はそんな!」
いいよいいよ、と三郎が再度寝転がった。
「私は拗ねてるんだよ!面白くない!それどころか悔しいし!もーやだよあのひと!」
庄左ヱ門と彦四郎は爆笑する勘右衛門を窘めながらも顔を見合わせた。
「あなた先生、凄いね」
「うん…」





![忍術学園の "七年生" は [参加型]〆](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/lG5FpDTsuZUvKsUoJtOmW9n2aLW2/cover/01KQBWM82G4AK9TTQJH6ZM8RRZ_resized_240x340.jpg)





編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!