“あなた、カイのことすきだと思うけど”
空きコマ、大学の廊下を曲がろうとして、
聞こえてきた声に足を止めた。
どうやら僕らと同じ学部の子たちが噂をしているらしい、
ここにあなたがいなくてよかったとほっと胸を撫でおろして、
スマホをいじるふりをして死角の壁にもたれ掛かる。
“え、まじで?俺狙ってたのに”
“いやいやいや、仮に違ったとしても
あのカイからあなたは奪えないって”
“だって言ってもただの幼馴染だろ?”
“カイのあなたのこと見る目、見たことないのかよ?
お前刺される前にやめとけって”
そうだよ、やめとけって。
僕が止まれるうちに。
あーーーでも、みんな勘違いしてる。
あなたが僕を好きなんじゃなくて、僕の片思いなのに。
T;「カイ?なにしてんの?」
「あ、テヒョナ」
“…えっ”
“かっ、カイ…いたのかよ…”
廊下を通り過ぎようとしていたテヒョナに声をかけられて、
そんな僕の声に気づいたのか慌てるその人達。
なんとなく察したらしい、勘のいいテヒョナがカラッと笑った。
T;「カイからあなた奪おうなんて百年は早いね〜ㅋㅋ」
“テヒョナまで…”
T;「刺されたくなかったらやめときなよ」
“…〜っ、忠告どうも!”
この空気感にいてもたってもいられないらしい、
吐き捨てるようにしてバタバタと去っていったその人達に
手を振って見送る。
やだなあ、僕があなたのことになると人刺すみたいなの。
刺しはしないってば、刺しは。
T;「うーん、僕もあなた、カイのこと好きだと思うけどね」
「え?」
T;「もう告白しちゃえばいいのに」
「いやいやいや、…え?」
T;「当たって砕けるくらいのつもりで行かないとさあ」
T;「すぐ取られちゃうよ?
ほら、この前もあの先輩、あなたのこと狙ってるって
噂あったじゃん、えっと…」
「スビニヒョン?」
T;「あー!そう!スビニヒョン!」
「やだな〜、あの人彼女いるってば」
T;「あれ、そうなの?」
T;「まあでもあなたがモテるのは事実なんだから、
早くしなきゃ取られちゃうって」
T;「そうやって、幼馴染ってだけで隣を確保できるのにも、
限度があるよ」
…わかってる、わかってるけど。
それでも、安泰なところで見守っていたい、
なんてのは僕のわがままで。
「…告白、ねえ…」
そうやってため息をつくように吐き出した僕を尻目に、
テヒョナは呆れたように笑った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。