第22話

🗝.22
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2026/02/15 02:00 更新
パタちからのメッセージを見た瞬間、ローレンの瞳から温度が消えた。




彼は迷うことなくジャケットを羽織り、私の肩を強く抱き寄せた。








lrn
……あいつ、店に行った。あなた、お前はパタちの家に行け。あいつらには俺が――
あなた
待って、ローレン





私は、彼の腕の中で首を振った。




震えは止まらない。逃げ出したいという本能も消えてはいない。

けれど、このままローレンの背中に隠れているだけでは、私は一生、自分の事を愛することはできない気がした。







あなた
私、……行くよ。行かなきゃいけないの。
あなた
あいつにちゃんと、今の私の姿を見せてやりたい。私はもう、あいつのモノじゃないって





ローレンは驚いたように目を見開いた。少しだけ躊躇うような色を見せたけれど、私の瞳に宿った意志を感じ取ると、彼は一度だけ深く頷いた。





lrn
分かった。離れるなよ。
何があっても、俺が守る






夜の帳が下りた街を、ローレンの車で突き進む。
辿り着いたカフェ・ラポールの前には、数台の黒い車が停まり、異様な空気が漂っていた。









ドアを開けると、カランコロンと、聞き慣れたはずのベルが寂しげに鳴った。



店内に、客の姿はない。




カウンターの奥で顔を伏せているマスターと、その前でふんぞり返る父親。そして、周囲を囲むように立っている、目つきの鋭い男たちが数人。











――おぉ、来たか。愛しの騎士様同伴で、えらく豪華なお出ましじゃねえか




父親は、テーブルの上にあった灰皿に吸い殻を押し付け、下卑た笑みを浮かべた。その顔は、以前よりもさらに痩せこけ、ぎらついた欲望だけが目に宿っている。




あなた、お前も運がいいよな。
こんな上等な男を引っかけるなんてよ。
だが、こちとら商売なんだ。
お前の『初めて』を貰ってやってここまで育ててやった恩、清算してもらおうじゃねえか
あなた
…あいつらに、いくら借りてるの





私が絞り出すような声で問うと、父親の後ろに立っていた大柄な男が、一枚の書類をテーブルに叩きつけた。






借金取り
借金そのものは大した額じゃねえ。だがな、こいつは『担保』に娘を差し出すって言ったんだよ。……風俗でもどこでも、稼げる場所はいくらでもあるだろ?
あなた
……っ…





胃の奥から吐き気がせり上がる。




あいつにとって、私はやはり「人間」ではなく、借金を返すための「道具」でしかなかったのだ。




その時、私の隣でローレンが一歩、前へ出た。
彼の纏う空気が、あまりにも冷酷に、鋭利に研ぎ澄まされる。



lrn
担保、だぁ? 
……笑わせんなよ、クズ共が





ローレンは、父親と男たちを一人ずつ見据えた。
その瞳に宿っているのは、もはや正義感などではない。
自分の「大切な物」を泥足で踏みにじられた男の、純粋な殺意に近い憤怒だった。







lrn
こいつは、光の中にいるって決めたんだ。
……お前らの汚い指一本、触れさせるわけねえだろ




ローレンの手が、懐に忍ばせていた警棒へと伸びる。

不敵に笑う父親と、苛立ちを露わにする男たち。








最悪の対峙が、今、始まった。

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