パタちからのメッセージを見た瞬間、ローレンの瞳から温度が消えた。
彼は迷うことなくジャケットを羽織り、私の肩を強く抱き寄せた。
私は、彼の腕の中で首を振った。
震えは止まらない。逃げ出したいという本能も消えてはいない。
けれど、このままローレンの背中に隠れているだけでは、私は一生、自分の事を愛することはできない気がした。
ローレンは驚いたように目を見開いた。少しだけ躊躇うような色を見せたけれど、私の瞳に宿った意志を感じ取ると、彼は一度だけ深く頷いた。
夜の帳が下りた街を、ローレンの車で突き進む。
辿り着いたカフェ・ラポールの前には、数台の黒い車が停まり、異様な空気が漂っていた。
ドアを開けると、カランコロンと、聞き慣れたはずのベルが寂しげに鳴った。
店内に、客の姿はない。
カウンターの奥で顔を伏せているマスターと、その前でふんぞり返る父親。そして、周囲を囲むように立っている、目つきの鋭い男たちが数人。
父親は、テーブルの上にあった灰皿に吸い殻を押し付け、下卑た笑みを浮かべた。その顔は、以前よりもさらに痩せこけ、ぎらついた欲望だけが目に宿っている。
私が絞り出すような声で問うと、父親の後ろに立っていた大柄な男が、一枚の書類をテーブルに叩きつけた。
胃の奥から吐き気がせり上がる。
あいつにとって、私はやはり「人間」ではなく、借金を返すための「道具」でしかなかったのだ。
その時、私の隣でローレンが一歩、前へ出た。
彼の纏う空気が、あまりにも冷酷に、鋭利に研ぎ澄まされる。
ローレンは、父親と男たちを一人ずつ見据えた。
その瞳に宿っているのは、もはや正義感などではない。
自分の「大切な物」を泥足で踏みにじられた男の、純粋な殺意に近い憤怒だった。
ローレンの手が、懐に忍ばせていた警棒へと伸びる。
不敵に笑う父親と、苛立ちを露わにする男たち。
最悪の対峙が、今、始まった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!