前の話
一覧へ
次の話

第22話

二十一
1,020
2024/06/11 12:07




目覚めた直後、急な彼の顔面ドアップに驚き反射的に顔を上げる。
瞬間、私のデコが彼の顎にぶつかってお互い悶絶してしまった。
あなた
いっつぅ…
凪 誠士郎
痛い、無理...死んだ
あなた
死んでないよ凪くん...
ズキズキと痛むおでこを擦りながら、彼にどうかしたのかと聞くが別に用はないらしい。
ないんかいとツッコミたくなったがそれを抑えて時計を見た。
あなた
…あ、もう四時だね
あなた
そろそろご飯作ろうか
凪 誠士郎
俺今お腹減ってない〜
あなた
あ、そう?じゃあ冷うどんでもいいかな?暖かいものじゃないからいつでも食べれるし
あなた
良い?
凪 誠士郎
うん
あなた
ん、じゃあつくるね
冷うどんは簡単だから結構好きなんだよね、寝起きだから体だるかったしめっちゃ助かる。
スマホで冷うどんを検索し、台所へ向かった。
三十分後、出来上がったものを皿に移しラップをして冷蔵庫に入れる。
後は彼がお腹を空かせるまで待つだけ。
正直私もお腹すいてなかったし。
あなた
ん〜、凪くん
凪 誠士郎
何?
あなた
お風呂入ってくるから、私がお風呂に入ってる途中お腹すいたら冷蔵庫にうどんあるから食べてね
凪 誠士郎
うん、りょうかーい
スマホで片手間ではなく、ちゃんと目を見て返事を返してくれた事に少し嬉しくなり彼の頭を撫でてお風呂に入った。




頭を洗いリンスをした後、体すりで体を洗っている途中、太ももの付け根にほんのり赤く少し紫色が混じった小さなアザが見える。
これ、まだ残ってたんだ。
早く消えて欲しいのになかなか消えない、彼に付けられた未だに薄く残るキスマーク。
あなた
……
あなた
もう三年も経ってるのに…、何でまだ残ってんのかなぁ.....
擦っても消えない、この痣はまるであいつから私への過度な執着の表れのような気がして軽い吐き気を催した。
最初から、この業界に入ったのがいけなかったのか...それとも、あの兄弟と出会った時点で.....。
あなた
(いや、これは違う...凛のせいじゃない.....全部全部...私のせい)
あなた
(あいつの嘘に騙されてまんまとついて行ってしまった私のせいだ...)
あなた
今更悔いても遅いのに...未練タラタラだ、私……
でも、それくらい...未だに思い出すと辛くなって、もう一度あなたに逢いたくてどうしようもなくなるくらい...ずっとずっと、凛のことが大好きなんだよ……。
今更許してなんて言わないから、もう一度だけ...あなたに会いたい。




少しお風呂に長居してしまい少し悔やんだ。頭をタオルドライしながら、リビングへ向かうと凪くんがうどんを食べかけで気絶するように眠っていた。

この子は昼寝してないみたいだからね、今日は濃い一日だったから疲れたのかな。
凪 誠士郎
...
あなた
おやすみ
可愛らしく寝息をたてる彼を起こさないよう静かに毛布をかける。
明日はもっとしんどくなるかもしれないから、今のうちにリラックスさせておこう。
私もちょっと、夜風に当たってこようかな。
あなた
そういえば酒のつまみがもう無いんだった
散歩ついでにコンビニで買ってこよう。
隣に置いていたカバンから財布を取りだし、スマホを持って静かに家を出た。




あなた
涼しい...
まだ少し濡れた髪を夜風が靡かせる。
乾かすのが面倒だったからついでで髪の毛乾いて欲しいなーなんて考えながら歩いていると……。
???
あ、あなたちゃん?
あなた
……?
あなた
あ、蜂楽くん
あなた
こんばんは
蜂楽 廻
あなたちゃんこんばんはー!
振り向くと、少し先に蜂楽君がいて挨拶をすると嬉しそうにこちらへ走ってきた。

犬みたいで可愛い...。
なんて考えながら隣に並んで歩く蜂楽君にどうしてこんな時間に外にいるのか聞く。
あなた
こんな時間に外にいるなんて珍しいね、蜂楽君もなにか買うものがあるのかな?
蜂楽 廻
うん、炭酸水買いに来いきた!急に飲みたくなるんだよね〜!
蜂楽 廻
あなたちゃんは?
あなた
私は酒のつまみが無くなったからコンビニに補充しにね
蜂楽 廻
なるほどー、それよりあなたちゃん!...女の子がひとりで夜歩くのは危ないよ〜?
そう言うと彼は可愛らしい童顔を私に向けてくる。
弟にしたら絶対毎日癒される、私の実の弟は冷たいからな〜。
癒しもなんも無い。
あなた
あははっ、もう女の子って歳じゃないよ
あなた
私はもうすぐアラサーだし、こんなおばさんに手を出す男なんてどこにもいないでしょ
『お世辞が上手だね、君は』と、口元に手を添えて笑うと横を歩いていた彼の顔から少し笑顔が消えたような気がした。
蜂楽 廻
あなた
蜂楽く____
蜂楽 廻
あなたちゃんは、その"手を出す男"が俺だったら…どうしてたの?
あなた
…え?
直後、ゆっくりと進めていた彼が歩を止めて私を見る。
反射的に私も立ちどまり、彼の顔を見返した。
その顔は、先程までとは違い…少しだけ大人の色気を含んでいるように見える。
AVの時とは少し違う顔つきだった。
あなた
……
蜂楽 廻
…あなたちゃん、油断は禁物だよ
蜂楽 廻
俺だって、ちゃんと男だから
む、長くなっちまった
今日は私が晩御飯担当他だったから煮物作ったよー!
ちょっと味が濃くなっちゃった
料理で2時間もかかっちゃった...😭

いつもなら一時間半か一時間で終われるのに...
エビチリ以来だ!!

プリ小説オーディオドラマ