その言葉に、軽く目を見開く。
星導は珍しい苗字のはず…。
初めて同じ苗字の人を見た。
というか、『星導』が被ることあるんだ。
確かに、同じ苗字では
会話に混乱が生じかねない。
理解して、私も名乗る。
言葉にして確認する。
名前につける敬称も
これで間違いないか確かめるつもりで。
星導さんはウッドテーブルに
肘をつくと、こちらの物言いを
面白がるような表情で『よろしいです』
と笑った。
会話を終えて読書に戻ると、
再び星導さんがカードを切り出した。
リハビリの一環だろうか。
星導さんは飽きることなく
同じ動作を繰り返す。
薄いカードを軽く曲げたり、
指先で弾いたり。
脳電義手を使っているとはいえ
見事なものだ。指先の感覚はないはずなのに。
近年開発された脳電義手は、
従来の筋電義手より飛躍的に
性能が向上している。
その違いは、じゃんけんが
できるかできないかですぐわかる。
筋肉信号をよむ筋電義手は、
大雑把に言うとパーとグーの
動きしかすることができない。
力を入れれば握る、緩めれば離す、
といった程度の単純な動きがせいぜいだ。
対して脳電義手は、チョキの形を
作ることができる。つまり、
各指を独立して動かすことができる。
使用者の訓練次第では、
生身の人間とほとんど遜色なく
動かすことも可能だ。
だからどちらの義手も、
指先の感覚を脳にフィードバックする
ことはできない。
カードの固さや冷たさ、
表面のつるりとした感覚は知覚できないのだ。
…にも関わらずカードを切る
星導さんの手捌きは鮮やかだ。
もたもたとページをめくる
私の手よりずっとなめらかで、
つい視線が引き寄せられる。
本を読もうと思ったのに、
なかなか紙面に視線が戻らない。
カードを切る手は止めないまま、
星導さんが私に声をかけてくる。
本に集中していないことを
気取られたのかと、とっさに
視線を落として頷いた。
カードを持つ星導さんの
手が一瞬止まった。
興味を惹かれたのか、
私の持つ本の背表紙に視線を寄越す。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。