第3話

翌日
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2023/07/12 03:25 更新
翌日、昼のお客さんは平日なのでそこそこ。
たまたま立ち寄ったご新規さんやスーツ姿のお兄さんもいるが
目立って多いのは常連の地元のおじさん達。
店が私に引き継がれたあとも毎日のように来てくれる。

小さい頃から店によく出入りしていた私を
娘や孫のように可愛がってくれる気のいい人達ばかりだ。
下町はやっぱり温かい。

夜も顔なじみの常連さんが仕事の疲れを癒しにやってくる。
いつものようにお酒を出して料理をしてお客さんの話を聞く。
おじさんばかりなので日付が変わる前には帰っていく。

そんな変わらぬ日常を過ごした。
深夜1時半、お客様は0人。今日はもう終了かな。

明日の仕込みをして
終わるまでお客様が来なかったら閉めよう。

そう思い、仕込み作業を始めた。














-ガラガラッ…-











お?
この時間にお客さんってことはシルクくんかな…?
2日連続は珍しいな。
あなた
いらっしゃ…ぃ…。
モトキ
あ、こんばんわ~。
モトキ
まだ大丈夫ですか?




モモモモモモモモトキくんッッ~??!!
なんで?!




あなた
…。
モトキ
あの~…?
あなた
あ、すッ…すみません!
あなた
大丈夫です!
お好きな席へどうぞ!
そういうとモトキくんは店全体を見渡して
私が作業をしていた目の前のカウンター席に座った。



うわわわわわ…緊張する~…。
どうしてわざわざ目の前に…!推しが目の前に…!!
あー…心拍数がやばいー…。

…違う違う。この人は今はお客様だから。
他のお客様と変わらない…!普段通りに…!
あなた
お品書きです。
載ってないものでも材料があれば
お作り致しますので、お声がけください。
モトキ
じゃあ…
ビールと本日のお漬物とモツ煮をお願いします♪
お品書きを受け取ってから
ほとんど目を通す間もなく注文メニューが決まった。

あれ…この組み合わせって…。
あなた
…。
モトキ
あ、気づきました?w
モトキ
ここによく食べに来てる
シルクってやつ、わかります?
あなた
あ、はい。
この時間の常連さんですw
モトキ
俺、シルクの友達で
アイツに「俺の隠れ家教えてやるよ」って言われてw
あなた
…ここ隠れ家だったんだ…w
モトキ
そう言ってましたよw
モトキ
んで、今頼んだ3つは鉄板だから
初回は絶対頼めって言われててw
あなた
なるほどwシルクくんらしいですねw
モトキ
いや~いい店ですね。
アイツがお勧めしてきた理由わかるなぁ。
懐かしい雰囲気ですごい落ち着く。
あなた
ありがとうございます…!
そう言って頂けるとすごく嬉しいですw
あなた
祖父母から受け継いだ大切なお店と味なので…。
モトキ
…いいですね。そういうの。
モトキ
店継いでくれて
そんなこと言ってくれるなんて
おじいちゃんおばあちゃんにとって
おねえさんは自慢のお孫さんなんでしょうね。
あなた
…!
あなた
そう、思ってもらえてたら嬉しいな…。
あなた
じゃあ準備するのでしばらくお待ちを…!
モトキ
は~い♪


心の整理をしながら
糠床からきゅうり・ナス・人参を取り出して洗い
そしていつもより慎重に包丁を入れる。
均等に…なめらかに…。

どんなに抑えようとしても手先にまで伝わるほどの心音。
憧れの人が私の目の前に座っている。

~あぁッ!もっとちゃんとした服着ればよかった…!
化粧も髪型ももうちょっとさ…。
少しでも綺麗な状態で会いたかったなぁ…。

シルクくんめ。今度来たら文句言ってやる。

…ってあれ?
あなた
あ。
あなた
ごめんなさい!
モトキ
え?
あなた
先にビール出すべきでした…!
モトキ
あぁwだいじょぶですよ慌てなくてw
モトキ
全部準備出来てからでいいんでw
おねえさんのペースでやってくださいw
あなた
すいません~…。
ずっとニコニコと楽しそうな表情なモトキくん。

あーーーー天使が目の前で微笑んでいる…。
なんて幸せな光景なのだろう…。なにここ天国?
いや、もはやこの感情を押し殺して接客しなきゃいけないのは
ある意味地獄かもしれない…!

大丈夫がんばれあなた。お前もいい大人なんだから。

いつも通りのうちの店らしい接客を…!

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