翌日、昼のお客さんは平日なのでそこそこ。
たまたま立ち寄ったご新規さんやスーツ姿のお兄さんもいるが
目立って多いのは常連の地元のおじさん達。
店が私に引き継がれたあとも毎日のように来てくれる。
小さい頃から店によく出入りしていた私を
娘や孫のように可愛がってくれる気のいい人達ばかりだ。
下町はやっぱり温かい。
夜も顔なじみの常連さんが仕事の疲れを癒しにやってくる。
いつものようにお酒を出して料理をしてお客さんの話を聞く。
おじさんばかりなので日付が変わる前には帰っていく。
そんな変わらぬ日常を過ごした。
深夜1時半、お客様は0人。今日はもう終了かな。
明日の仕込みをして
終わるまでお客様が来なかったら閉めよう。
そう思い、仕込み作業を始めた。
-ガラガラッ…-
お?
この時間にお客さんってことはシルクくんかな…?
2日連続は珍しいな。
モモモモモモモモトキくんッッ~??!!
なんで?!
そういうとモトキくんは店全体を見渡して
私が作業をしていた目の前のカウンター席に座った。
うわわわわわ…緊張する~…。
どうしてわざわざ目の前に…!推しが目の前に…!!
あー…心拍数がやばいー…。
…違う違う。この人は今はお客様だから。
他のお客様と変わらない…!普段通りに…!
お品書きを受け取ってから
ほとんど目を通す間もなく注文メニューが決まった。
あれ…この組み合わせって…。
心の整理をしながら
糠床からきゅうり・ナス・人参を取り出して洗い
そしていつもより慎重に包丁を入れる。
均等に…なめらかに…。
どんなに抑えようとしても手先にまで伝わるほどの心音。
憧れの人が私の目の前に座っている。
~あぁッ!もっとちゃんとした服着ればよかった…!
化粧も髪型ももうちょっとさ…。
少しでも綺麗な状態で会いたかったなぁ…。
シルクくんめ。今度来たら文句言ってやる。
…ってあれ?
ずっとニコニコと楽しそうな表情なモトキくん。
あーーーー天使が目の前で微笑んでいる…。
なんて幸せな光景なのだろう…。なにここ天国?
いや、もはやこの感情を押し殺して接客しなきゃいけないのは
ある意味地獄かもしれない…!
大丈夫がんばれあなた。お前もいい大人なんだから。
いつも通りのうちの店らしい接客を…!











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!