第12話

12話
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2026/02/18 09:00 更新
防音室を出てから、一度も目が合わない。
タカシくんは顔を真っ赤にしたまま、無言で機材を片付けている。
おれも、自分の心臓の音がうるさすぎて、何を喋ればいいのか分からない。

さっきの、カイくんとリョウガくんの顔。
……絶対、全部バレた。
タカシ
……なぁ、シューくん。とりあえず、帰ろか

タカシくんが、おれの手を握ろうとして――一瞬、おれは反射的にその手を避けてしまった。
シューヤ
……あ

タカシくんの手が、空中で止まる。
気まずい沈黙。
シューヤ
……ごめん。……行こう
おれは自分から歩き出した。
ロビーを通る時、カイくんとリョウガくんが何か言いたげにこっちを見ていたけど、会釈だけしてスタジオを飛び出した。

夜の空気は冷たい。
隣を歩くタカシくんの気配が、今はひどく重く感じる。
シューヤ
(……おれ、何してんだろう)
さっきのキス。タカシくんの本音。
嬉しかった。まだ好きだと思った。
でも、それと同じくらいの速さで、あの日の「おれたち、別れよか」って言われた時の絶望感が、フラッシュバックする。
タカシ
…シューくん。怒ってる?
シューヤ
……怒ってないよ
タカシ
じゃあ、なんでそんな顔するん。……さっきは、あんなに……
シューヤ
……わかんない。自分でも
おれは立ち止まって、タカシくんを振り返った。
シューヤ
……タカシくんのことが好きなのは、変わってないと思う。
シューヤ
でもまた『仕事のため』とか言って、急に突き放されるんじゃないかって思ったら…
シューヤ
前みたいに笑って戻るなんて、できないよ

一度冷え切った関係は、そう簡単に元通りにはならない。
期待して、また裏切られるのが、おれは死ぬほど怖いんだ。
タカシ
…そうやな。……おれが勝手すぎたわ

タカシくんが、悲しそうに眉を下げた。
その顔を見たくなくて、おれは視線を地面に落とす。
シューヤ
……今日はもう帰るね
タカシ
…おん。送らんでええ?
シューヤ
大丈夫。一人で考えたいから

おれはタカシくんの返事を待たずに、駅の方へ走り出した。
追いかけてきてほしい気持ちと、放っておいてほしい気持ち。

おれの感情はぐちゃぐちゃになっていた。

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