翌日
病院の主治医に許可をもらい、あなたと俺は気分転換のため病院の屋上へ出ていた
澄んだ青空
優しく吹く風
あなたは俺の隣に歩く
2人は屋上ベンチに並んで座った
しばらく景色を眺めていると、俺はリュックから二冊のスケッチブックを取り出した
あなたにペンを差し出す
それを見たあなたは戸惑う
戸惑う表情に俺が微笑む
その言葉にあなたは何も言えなくなってしまった
そしてあなたは俺に差し出されたペンを受け取ろうとした
しかし
力がなく、カランと床にペンを落としてしまった
乾いた音だけが屋上に響く
あなたは慌てて拾おうとする
それでも手は思うように動かない
何度挑戦しても、握れない
俺は静かにその様子を見つめていた
そして、小さくつぶやく
あなたの肩が震える
俺は落ちたペンを拾い、あなたの方を見た
その言葉にあなたは顔を伏せる
俺はあなたの目の前に来てしゃがみ目を合わせ手を握った
長い沈黙
風だけが二人の間を吹き抜ける
やがて
あなたの目から、一粒の涙がこぼれ落ちた
そしてあなたは事情を話した
先生から余命宣告を受けてしまったということ
延命のために治療を続けてるということ
そして……
もう二度と絵が描けないということ
それを聞いた俺は頭が真っ白になった
けど、あなたの悲しむ姿をみた俺は1度冷静になる
その言葉にあなたは首を横に振る
あなたの頭を撫でた
あなたがどれほど苦しみ、どれほど一人で耐えてきたのか
ようやく、俺はその重さを知る
何も言わず、そっとあなたを抱き寄せた
あなたは優しさを知り、胸で泣き続ける
そういうと軽く背中を撫でる
俺の暖かさにあなたはまた泣いていた
オレンジ色の光が2人を包み込んだ
そして、その日は2人には忘れられない日になったのだ
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎⇝














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!