投稿主の誕生日につき記念投稿です。
休止中なんだけどこういう特別な日には書きたくなるんですよね…
ちょっと千ト君が可哀想かも…
それでも良ければ!
ため息をこぼす。
思ってもないことを口にする。…いや、思っていたのかもしれない。
だって暴力とか見たくもないしされたくもないし、ましてやりたくもない。
死体とか不潔すぎて目にも入れたくない。
言いかけて止まる。
2人の表情を見てしまったからだ。
落胆、絶望、そんな言葉ではいいあらわせない。
ただはっきり言えるのは、2人とも千トに暗く冷たい敵意と嫌悪感を向けている。
ナイフで突き刺すような言葉に、息が詰まる。
左手がナイフをもってにじり寄る。
右手の手が千トの細い首筋を片手で握る。
息が、詰まる。
…ここで目が覚めた。
過呼吸ギリギリの荒い呼吸を何とか落ち着かせる。
千トはガバッと起き上がった。
気持ち悪いくらい汗をかいている。
汗で汚れた布団でこれ以上寝たくないため仕方なく起き上がると、シーツやら何やら自分の皮膚に触れていたもの全てを剥がして洗濯機に入れる。
そのまま部屋の外に行き、冷蔵庫から適当な飲み物を漁って飲む。
夜も遅いため、あくまでも2人に迷惑をかけないように一切の音を立てない配慮。
ここ最近はこうやって過ごしている。
麦茶を手に取りながら小さく呟く。
2人には話せていないが、ここ最近は毎日悪夢に悩まされていた。
悪夢の中で、必ず千トは「探偵を辞めたい」と記録者の2人に相談する。そしていかなる場合でも、2人は千トのことを殺そうとする。そうして目が覚める。
酷い時には息の根がほぼ完全に止まってから飛び上がるようにして起きる。こうなるとシーツを含めた寝具は汗まみれになってしまい、パジャマも特に背中の方がぐっしょりと濡れてしまう。
多少落ち着かないが、そのまま寝ることはできないのでソファの上で夜更けを待つことが増えた。
悶々と考えているうちに、珍しく睡魔が襲ってきた。
その睡魔に抗えずにソファの中で寝息を立てる。
星喰右手には分からなかった。
一足先に部屋で寝ていたはずの千トが居間のソファで寝ている。
たまたま喉が乾いたから水を取りに来たらまさかの展開。寝ぼけていた頭が一気に冴えた。
夢遊病?徘徊癖?
いや、こんなことは今まで一度だってなかったはず…
いや、探偵というのは結構神経をすり減らすことの多い職業だ。何より、異能力で脳に膨大な負担がかかっている千トにストレスが溜まっていないはずがない。
小さなうめき声が聞こえる。
さっきまで手にしていたコップをそっと置いてソファに近づくと、苦しそうな顔で呻いている千トがいた。
軽く肩を揺さぶると、
千トが目を覚ました。
やらかした。
ソファで寝てしまっただけでなく、右手に心配までかけてしまった。
なんて答えればいいのか分からない。
ぎこちない笑顔で応対する。
右手は困ったような顔でため息をついた。
千トはボロボロと涙を零しながらポツポツと話した。
毎日悪夢を見ること。
夢の中で探偵をやめようとする千トをふたりが殺しにくること。
程度によるが、酷い時は息の根が止まったところで目が覚めること。
右手は一言一句逃さないように、適度な相槌を打ちながら聞いていた。
温かい飲み物を入れてきますね、と右手は席を立ってキッチンの方へ向かった。
いつもの人形をにぎにぎしながら待っていたら、
左手と軽く話しながら、千トに飲み物を渡す。
流れるように千トの隣に座ると、左手も当たり前のように千トの隣に座る。
嬉しいなぁ…なんて思いながら少しずつ味わって飲んでいると、ウトウトと眠気が襲ってきた。
外出した際、買ってきた飲み物を一口。
さも当然、といった顔に弟はげんなりした。
千トの悪夢がバレてから、生活は一変した。
ほんの数分の昼寝でも、目が覚めたら必ずふたりのどちらかが隣に座っていたり添い寝していたりするようになった。
千トはちょこんと左手に寄りかかる。
寄りかかってるはずなのに左手はほとんど体重を感じなかった。
千トは、あの日以来悪夢は見ていない。
少しでも悪夢の片鱗が見えた、と思ったタイミングで双子のどちらかが千トのことを起こしてくれるようになったからだ。
おかげで、最近は安心して眠ることができる。
睡眠が取れるようになったので、少し元気を取り戻したのか、顔色がよくなった。
きっともう、怖い夢は見ない。
それは星に喰われて、跡形もなく消えていった。
リクエストはいつものところに!
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それじゃあまた!かけるようになったら!













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!