第23話

《作者誕生日特別投稿》夢よ、覚めてくれ(千ト+星喰兄弟)
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2025/04/06 16:06 更新
投稿主の誕生日につき記念投稿です。
休止中なんだけどこういう特別な日には書きたくなるんですよね…

ちょっと千ト君が可哀想かも…
それでも良ければ!
皇千ト
はぁ…
ため息をこぼす。
星喰右手
…どうしたのですか?千ト?
星喰左手
ため息とか、らしくねーじゃん?
皇千ト
…もう、ネストを辞めちゃおうかな、って…
思ってもないことを口にする。…いや、思っていたのかもしれない。

だって暴力とか見たくもないしされたくもないし、ましてやりたくもない。

死体とか不潔すぎて目にも入れたくない。
皇千ト
読心のおかげで多少はどうにかなってるけど…不潔なの嫌いだし、僕やっぱり探偵は向いてないんじゃないかなって、思っ、て…
言いかけて止まる。
2人の表情を見てしまったからだ。

落胆、絶望、そんな言葉ではいいあらわせない。

ただはっきり言えるのは、2人とも千トに暗く冷たい敵意と嫌悪感を向けている。
皇千ト
…右手君?左手君?
星喰左手
…うるせぇな
皇千ト
ひっ…
ナイフで突き刺すような言葉に、息が詰まる。
星喰左手
そっちが約束を守れねぇなら、こっちが約束を守る理由もねぇよな?
星喰右手
えぇ。その通りですね。
私たちの関係もここまで、ということです。
皇千ト
そ、そんな…!
星喰左手
そんで、お前は知りすぎた。
生かしておく訳にもいかねぇんだわ。
星喰右手
悪く思わないでくださいね、千ト。
皇千ト
や、やめっ…!
左手がナイフをもってにじり寄る。
右手の手が千トの細い首筋を片手で握る。

息が、詰まる。
皇千ト
…っ!!!
皇千ト
…はっ!!!?
…ここで目が覚めた。
過呼吸ギリギリの荒い呼吸を何とか落ち着かせる。
皇千ト
…ゆ、夢…また、この夢…
千トはガバッと起き上がった。
気持ち悪いくらい汗をかいている。
皇千ト
…またシーツとか洗ってもらわないと…
汗で汚れた布団でこれ以上寝たくないため仕方なく起き上がると、シーツやら何やら自分の皮膚に触れていたもの全てを剥がして洗濯機に入れる。

そのまま部屋の外に行き、冷蔵庫から適当な飲み物を漁って飲む。

夜も遅いため、あくまでも2人に迷惑をかけないように一切の音を立てない配慮。

ここ最近はこうやって過ごしている。
皇千ト
なかなか目覚めないから…今日こそ死んじゃったかと思った…
麦茶を手に取りながら小さく呟く。

2人には話せていないが、ここ最近は毎日悪夢に悩まされていた。

悪夢の中で、必ず千トは「探偵を辞めたい」と記録者の2人に相談する。そしていかなる場合でも、2人は千トのことを殺そうとする。そうして目が覚める。

酷い時には息の根がほぼ完全に止まってから飛び上がるようにして起きる。こうなるとシーツを含めた寝具は汗まみれになってしまい、パジャマも特に背中の方がぐっしょりと濡れてしまう。

多少落ち着かないが、そのまま寝ることはできないのでソファの上で夜更けを待つことが増えた。
皇千ト
(なんかもう夢の中で「探偵を辞めたい」って言ったら「あ、悪夢を見てるんだな」って分かるくらいにはこの夢、見てる気がする…)
皇千ト
(今日は酷いほうだったな…パジャマとか、昨日全部洗い直した後だったのに…)
皇千ト
(2人には絶対に言いたくない…けど、毎日これだとまずい気がする…いつも部屋に戻って寝たフリしてるからバレないだけでいつバレるかも分からないし…)
悶々と考えているうちに、珍しく睡魔が襲ってきた。
その睡魔に抗えずにソファの中で寝息を立てる。
星喰右手
…千ト?
星喰右手には分からなかった。

一足先に部屋で寝ていたはずの千トが居間のソファで寝ている。

たまたま喉が乾いたから水を取りに来たらまさかの展開。寝ぼけていた頭が一気に冴えた。

夢遊病?徘徊癖?
いや、こんなことは今まで一度だってなかったはず…

いや、探偵というのは結構神経をすり減らすことの多い職業だ。何より、異能力で脳に膨大な負担がかかっている千トにストレスが溜まっていないはずがない。
皇千ト
…うぅ…
小さなうめき声が聞こえる。
さっきまで手にしていたコップをそっと置いてソファに近づくと、苦しそうな顔で呻いている千トがいた。
星喰右手
せ、千ト!?
軽く肩を揺さぶると、
皇千ト
うっ…
千トが目を覚ました。
皇千ト
め…右手…君…?
星喰右手
千ト、こんなところでどうしたのですか?
皇千ト
えと、それは…
やらかした。
ソファで寝てしまっただけでなく、右手に心配までかけてしまった。

なんて答えればいいのか分からない。
皇千ト
の、飲み物を取りに来たんだ、
皇千ト
そしたらまた眠くなっちゃって、ごめんね、心配かけちゃって…
ぎこちない笑顔で応対する。
右手は困ったような顔でため息をついた。
星喰右手
千トは、相変わらず嘘が下手ですね。
皇千ト
うぐっ…
星喰右手
ソファで寝ていただけならまだしも、ものすごいしかめっ面でうめき声まであげていたんですよ?
皇千ト
そ、それは…
星喰右手
…話すと良くなることもあります。
皇千ト
皇千ト
…じ、実は
千トはボロボロと涙を零しながらポツポツと話した。

毎日悪夢を見ること。
夢の中で探偵をやめようとする千トをふたりが殺しにくること。
程度によるが、酷い時は息の根が止まったところで目が覚めること。

右手は一言一句逃さないように、適度な相槌を打ちながら聞いていた。
星喰右手
話してくれてありがとうございます、千ト。
皇千ト
ごめんね、こんな話、
星喰右手
いえ、聞きたいと言ったのは私ですから。
皇千ト
け、けど…
星喰右手
…千トは、探偵を辞めたいのですか?
皇千ト
…ううん、そんなことないよ。
確かに、暴力は嫌いだし、事件現場は大抵汚いし、みんな嘘ばかりで嫌になることはあるけど…
星喰右手
私たち…少なくとも私は、探偵を辞める千トを拒みません。もちろん、殺すつもりもありません。だから、安心して休んでください。
皇千ト
ほんとに…?
星喰右手
ええ。勿論です。
温かい飲み物を入れてきますね、と右手は席を立ってキッチンの方へ向かった。

いつもの人形をにぎにぎしながら待っていたら、
星喰左手
…あれ、千トじゃん
皇千ト
ゆ、左手君!?どこ行ってたのー!
星喰左手
あ?うーん…夜の散歩…?
月もまん丸でいい天気だったからなぁ、
皇千ト
こ、こんな時間に…?
星喰左手
千トこそ、珍しいじゃん〜
なに、夜更かし?
皇千ト
い、いやぁ〜、そんなんじゃ…
星喰右手
千ト、ホットミルクが入りました…おや、戻ってきたのですね。
星喰左手
ん?まーな、
兄貴が起きてる方が意外だったわ。
星喰右手
たまたまです。
千ト、火傷しないように気をつけてください。
左手と軽く話しながら、千トに飲み物を渡す。
流れるように千トの隣に座ると、左手も当たり前のように千トの隣に座る。
皇千ト
お、美味しい…あ、これはちみつ入ってる!
星喰左手
おぉ、よかったじゃん。
皇千ト
うん!
嬉しいなぁ…なんて思いながら少しずつ味わって飲んでいると、ウトウトと眠気が襲ってきた。
皇千ト
…すぅ…
星喰右手
良かった、呼吸も安定してる…
星喰左手
ん、やっぱり寝れてなかったんだな、千ト。
星喰右手
…おや珍しい、気づいてたんですか?
星喰左手
まーな、
外出した際、買ってきた飲み物を一口。
星喰左手
とは言っても、俺が気づいたのはつい先日のことだ。青い顔してリビングに向かう千トを見かけてな、その場で声かけようとしたんだけどな、
星喰右手
…かけなかったのですか?
星喰左手
眠過ぎたし、こっちから言っても口を割らなさそうだったからほっといた。
星喰左手
よく見ると随分顔色悪いじゃねーか。
もっと早く問いただすべきだったな、
星喰右手
そうですね…
しばらく様子を見る、と言っても個人の部屋だとさすがに厳しいですね、
星喰左手
しゃーねぇな、ここに敷く布団でも買っておくか
星喰右手
…まさか…
星喰左手
その「まさか」だよ。兄貴も道連れだぜ
星喰右手
…千トのためです。致し方ありませんね。
さも当然、といった顔に弟はげんなりした。
星喰左手
…だからなんでそんなに千トには甘いんだよ…
千トの悪夢がバレてから、生活は一変した。
皇千ト
うぅ…少し眠い…
ほんの数分の昼寝でも、目が覚めたら必ずふたりのどちらかが隣に座っていたり添い寝していたりするようになった。
皇千ト
…あれ、左手君。お散歩は?
星喰左手
ん?あー…気分じゃねー
皇千ト
そーなんだ、
千トはちょこんと左手に寄りかかる。
寄りかかってるはずなのに左手はほとんど体重を感じなかった。
星喰左手
…もっと飯を食え、
星喰右手
今晩は多めにおかずを作ります。
買い物に行くので千トのこと、よろしくお願いします。
星喰左手
はいよー、
皇千ト
…すぅすぅ…
千トは、あの日以来悪夢は見ていない。
少しでも悪夢の片鱗が見えた、と思ったタイミングで双子のどちらかが千トのことを起こしてくれるようになったからだ。

おかげで、最近は安心して眠ることができる。
睡眠が取れるようになったので、少し元気を取り戻したのか、顔色がよくなった。
きっともう、怖い夢は見ない。
それは星に喰われて、跡形もなく消えていった。
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それじゃあまた!かけるようになったら!

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