______ 西暦23XX年。
その日は、ひどく静かな朝だった。
一人の少女は、廃校舎の屋上で空を見上げて呟いた。
彼女の瞳には、まだ鮮やかな「青」が映っていた。
けれど、その青はどこか毒々しく、滲んだインクの
ように空の端からじわりと腐食し始めている。
突如、街のどこかで、聞いたこともないような
美しい音色が響いた。
ハープの弦が弾け飛ぶような、悲鳴に近い旋律。
それが合図だった。
極彩色の蝶たちが、一斉に少女の周りを舞い上がる。
しかし、その翅が触れた場所から、
色が砂のように崩れ落ちていく。
赤い林檎は灰色の石へ。
道端のひまわりは墨を流したような影へ。
少女が指先を伸ばした瞬間、彼女自身の指先からも「色」が剥がれ落ちた。
魔法が解けるように、あるいは呪いが完成するように、音もなく色彩が死んでいく。
わずか数分のうちに、地平線の彼方までが
塗り潰された。
残されたのは、不気味なほどに静まり返った、
白と黒の死体のような世界。
少女は、色の消えた自分の手を眺め、薄く笑う。
その呟きさえも、モノクロの霧の中に吸い込まれる
ようにして消えていってしまった。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。