「あのー、」
私の近くまで来たところで、ようやく口を開く。
「俺のところで働いて欲しいんだけど」
あなた「は??」
あなた「か、勧誘ってやつですか。」
「そういうこと。ホストとしてね」
あなた「ホスト...?」
やばいやばい。頭が追いつかない。
勧誘?それもホストの?え、私が?
「ちょっと、立って話したくないから。ついてきて。」
腕を引っ張って歩き出す。
あなた「と、友達が」
「あぁ、ごめんだけどバイバイして。」
後ろを向くと、真由美はもう居なかった。
心配しているとLINEに着信が入る。
なかなかの煽りLINEに腹が立ちながらも、
男に手を引かれて歌舞伎町を早足で歩く。
「着いた...こっち来て」
ヘブン
店名は、ホストクラブ 「HEAVEN」
でかでかと看板が貼り出されている。
店内に入ると、男の大きい声が響いていた。
「え、誰すかあのイケメン」
「やばージャニーズみたい」
受け付けにいるホスト2人がこちらを見てくる。
初めて店の中に入ったが、あまり居心地がよくない。
若い男性らが酔っ払って、次へ次へと酒を手に取る。女性の方も酒を飲むなり謎のコールを歌いだす。
そんな空間だ。
「よし、準備できたから来て」
さっきの銀髪男がドアからひょこっと顔を出す。
個室の部屋に入るなり、男は話を始める。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!