第6話

5話
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2024/02/12 13:54 更新
昼間あれほど賑やかだった教室も、5時を過ぎれば静寂を取り戻し始める。

春風が木々を揺らす音を聞きながらゆっくり深呼吸。
それと同時にガラガラと引き戸が開かれて、俯きがちな松村くんがボソリと失礼しますとつぶやく声が聞こえた。
あなた
ごめんね、部活抜けて来たでしょ
松村北斗
いえ、全然大丈夫です…
聞こえないレベルに小さい声を拾いながら、目の前の席を彼に促す。

…あんなに頭でシュミレーションしたはずなのに、別に急かされてるとかでもないのに何故か心臓が急いている。
松村くんは相変わらず俯いて何も言わない。

私がリードしないといけないのよね
しっかりしなさい、桜井あなた。
あなた
実は、松村くんと確認しておきたいことがあってね。
新学期始まってすぐ進路希望調査の紙提出して貰ったでしょ?そのことについてなんだけど…
松村北斗
…すみませんでした。白紙なんて…ダメですよね
あなた
ううん。そうじゃなくて、責めてるわけじゃないのよ?
ただ今までずっと金宮高校を目指してたって聞いてさ。急に変わった理由とかあるなら聞かせて欲しいなって思って
自分が提出した白紙の用紙と私の顔を何度も目で往復している。
教卓から見る松村くんは、中学三年生にしては随分大人びているふうに見えていた。
いつも落ち着いているし、真面目で肝が座っている子。

でも今目の前にいるこの子は教卓から見る時よりも小さく年相応に幼い顔をしている。

なにかに怯えるように、様子を伺うような目
松村北斗
……先生は、僕は金宮高校に行くべきだと思いますか?
あなた
……松村くんの学力なら行ける高校だと思うよ。
だけど行くべきかどうかは分からない。それは私が決めることじゃないからさ。


行くべきですか?それは彼は行きたくないという意志の裏返しだろう。

担任なら生徒の学力に見合った学校を勧めなければいけないのは知っている。
でもそれが必ずしも正解では無いって事を私は身をもって証明した。

だから、その目を見て自信を持って言える。
あなた
松村くんに何か夢があるなら、それに向かって進める道に行くべきだと思う。それが金宮じゃなくてもいいんじゃないかな
松村北斗
…先生の夢は、なんだったんですか
あなた
私?私はずっと先生になるのが夢だったよ。だから出来るだけいい高校、いい大学に行くために頑張ってた。


松村北斗
……そうですか


聞いといてなんだその反応、と思わず言いそうになった。
けれど喉元まで来たその単語たちは私の口から発せられることは無かった。

やっと顔を上げた松村くん。長い前髪の中の目は、何かを諦めた人間の目だった。
松村北斗
いいですね。真っ当な夢で
松村北斗
……僕は、レールから外れてる人間です
あなた
……えっ?
彼の言葉が咀嚼できないうちに、松村くんは背中を向けていた。

「真っ当」「レールから外れてる」

人ずてに聞いた彼、私が見てきている彼はレールを外れているような人では無いのに。

松村くんの口からどうしてそんな言葉が出たのか。何が彼をそうさせたのか

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