前の話
一覧へ
次の話

第1話

3
2,756
2024/02/03 12:59 更新




2XXX年


地球上で、あるウイルスが蔓延していた。

それは、人の"恋"に住み着くウイルスで、
その人の人格を変えてしまう恐ろしいものである。

誰かに恋をするとその人はモンスターに姿を変え
自我を失った哀れな怪物は、
愛する人を喰い殺してしまう。


各国は国民に対して「不要不急の外出、人との接触を避ける」事を呼びかけ、国民は孤独な生活を余儀なくされた。
それだけではない。人々が恋をしないために、世界からは愛の歌が消され、ロマンス映画などの愛を想起させるような作品も制作が禁じられた。

幸せだったはずの家庭は、それぞれの命を守るために離れて暮らすしかない。
抵抗するように離れることを拒んだカップルも多くいたが、
無惨にも、愛する人を喰い尽くしたのちに後追いをするという最悪な結末が待っているだけだった。

実際、怪物化した人々が溢れかえり、無法地帯と化した都市も生まれた。

世界の人々は己が怪物となって想い人を傷つけること、そして人から好かれて襲われることを恐れるようになった。


そんな時、
冷え切ったこの世界の中で
最悪の悲劇から人々を守るための特別なグループ、

"CASE"〜Ceasing And Saving Emissary〜 が結成された。











sm side〜〜〜〜〜〜〜〜



「んで、ここを引くと弾が出るから」

やってみて、と拳銃を手渡される。
20メートル先にある的の中心を狙って、パンと撃った。

「おう、いいじゃん。センスあるよ。じゃあ次、怪我人の保護の仕方だけど、、、」

「待って、一回しか練習させて貰えないんですか?」

周りの研修生はアドバイスを受けながら何回か発砲しているのに、僕の直属の上司は1発撃たせただけで射撃場から出て行こうとする。

「まあ、なんとかなるでしょ。現場で経験する方が大事だし」

すたすたと廊下へ向かう。





新卒で出版社に入って1年目で例のパンデミックに襲われて、
うちの会社は恋愛系の文庫とか、雑誌とか、もろに打撃を受けた。結果、リストラに遭って、やむなくCASEに入所することになった。

そして、CASEに入って半年が経った今。

突然の部署移動だった。
大抵、入所した隊員は最初見回り隊と呼ばれる、パトロールが主な仕事となる部署に配属される。
僕も入って半年間、見回り隊に所属していた。
そして3日前、突然トップに命じられて
特攻隊への部署移動が決まった。
特攻隊は文字通り、事件が発生した現場に特攻し、事態を収束させるという最前線の部隊だ。

特攻隊は普通、1年以上は他の部署での仕事を経験してから配属されるというのに、
この時期にいきなり引き抜かれて、研修を受けることになるなんて、、、。

その上、僕が入ることになったチームは特攻隊の中でも最も危険な現場を扱う第一部隊だった。

第一部隊の人たちは見回り隊時代に何度か目にしてはいたけれど、やはりみんな只者ではない雰囲気を纏っていて
1番能力が高いとされる隊員が集まるチームに、自分が混ざって仕事ができるか甚だ疑問であった。





「あの銃で怪物を撃ったら、人間の姿に戻るから。そしたら安全確認して、被害者に近づいて。怪我があれば救護隊に引き渡せば任務完了だから」

「はい、、、。」

「あ、間違えても顔面には撃つなよ。攻撃性は無いけど、弾痕は残るからね。余裕があれば目立たないとこ狙ってあげて」

「分かりました」

ピリリ、とリノさんの携帯が鳴る。


「はい、こちらリノ」

『こちらハン。今いいですか?南通りのショッピングモールで怪物が暴れてるのが発見されたみたいで、応援行けます?チャニヒョン達の方も今手一杯らしくて、、、』

「了解。今新人といるから、研修ついでに連れて行くわ」

『お願いします』

電話を切るとまた早足で歩き出した。

「今から現場に向かうから、取り敢えずこれだけ着てって」

リノさんは防弾チョッキを脱いで僕に投げた。
腰に拳銃を刺してから駐車場に向かい、
停めてあった車に乗り込んでエンジンをかける。
僕が助手席に座ると車を急発進した。







in side〜〜〜〜〜〜〜〜





「あ!リノヒョン来た!」

こっちこっち!と手を挙げると僕の目の前に車が停まる。
ドアが開いて、リノヒョンともう1人、知らない隊員が降りて来た。よくみると首から研修中のカードを下げている。

「お待たせ、怪物はどこ?」

「それが、このモール内なんだけど、、、。相手の方は見回り隊で保護してるから怪我はないみたい。ただ、怪物が中で暴れてるらしくて」

「取り敢えず入るか」

リノヒョンに並んで建物に入る。

「新人さん?」

後ろにいる彼を指しながらヒョンに聞く。

「そう。キムスンミン。イエニより歳上だからな」

「そうなんだ。よろしくお願いします、スンミニヒョン。」

いきなり馴れ馴れしく呼ぶと、彼はポカンと口を開けた。


「あ、いたいた。フードコートのとこ」

モール内の店員やお客さんは既に避難しているみたいで一般人は誰もいなかった。
暴れる怪物と、先に到着して1人で戦闘に入っていたヒョンジニヒョンの周りに椅子やテーブルが散乱している。

「おい、ヒョンジン!」

リノヒョンが呼ぶと、ぱっとこちらを見た。
頭から血を流している。
後ろにいるスンミニヒョンが、ひ、と小さく息を吸った。

怪物がこちらに気がつく。
リノヒョンは迷いなく銃を構えて、怪物の足元目掛けて発砲した。
怪物は呻き声をあげて床に倒れる。
するとすぐに怪物化していたところから元の姿に戻った。
きっと10分もすれば意識を取り戻すだろう。

背後に控えていた救護隊がヒョンジニヒョンに駆け寄る。
額の傷を確認しているみたいだ。
リノヒョンも心配して声を掛ける。

「大丈夫か?」

「ごめん、弾切れしちゃって。かすり傷だよ」

ヒョンジニヒョンが拳銃をカチャカチャ鳴らす。


現場の騒ぎは収束したけれど、僕の仕事はここからだ。

両手を前に出して、集中する。
頭の中で言葉を唱えてから床に倒れる男と、相手のいる方角の間に、心の中で線を引く。

一瞬だけ手のひらが白く光って、目では見えない「バリア」が完成すれば、任務完了だ。


これでもう2度と、この男と相手の間に、愛が生まれることはない。



バリアを張れるのは、本当に一部の限られた人間だ。
これには実力どうこうではなく、センスが関係しているらしい。
僕は戦闘に強くない代わりに、この能力のセンスが高いおかげで第一部隊で活動できている。


バリアを張る隊員は「バリアメーカー」と呼ばれていて、
現場について行って、怪物が人間の姿に戻った後に
事後処理としてバリアを張ることが仕事だ。
一度バリアを張れば、2人の間の恋愛感情は消え去り、2度と好きになる事がなくなる。
怪物化した人と、そのパートナーの間にバリアを張って再発を阻止することは、「絶対である」と国によって定められている。
だから、どんなに当事者が嫌がっても
僕はこの2人の関係を終わらせるために心を鬼にしてバリアを張らなくてはならない。

もう一つ、
怪物化する恐れのある人に事前にバリアを張っておくことも重要な任務だ。

恋心を持つ人間には、頭の上にくるくる回るハート型の影が出るようになる。
これは怪物化の予兆で、危険な状態だ。
こういった人を見かけた場合、相手を特定してバリアを張ることで、怪物化による悲劇を回避することができるのだ。



「お疲れ様。取り敢えず署に戻ろう」

リノヒョンが立ち上がった。

ごめんなさい、と床に倒れた男に心の中で謝ってから
救護隊の人に引き渡す。
リノヒョン、ヒョンジニヒョン、スンミニヒョンと一緒にショッピングモールから出た。







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





CASE143パロディーです

実はずっと書いてみたくて考えていたんですけど
頭の中でうまくまとまらず
ラストまで完全に構想を練れていない状態で書き始めてしまいました😂

設定が複雑だし、色々ツッコミどころ満載ですが
(冒頭のCASEの略語とか、超無理矢理です笑)
続きも読んでいただけると嬉しいです!



プリ小説オーディオドラマ