夕暮れの街並みは、黄金色に染まっていた。
風に揺れる藤の花が、どこか遠い記憶を呼び覚ます。
紬野しおりは校舎の屋上で、空を見上げていた。
頬にあたる風は、春の記憶を運んでくる。
手には、古びた絵葉書が握られていた。
何度も何度も見返したその一枚には、藤の花と蝶が描かれている。
「……結芽先輩、あのときの想い、届いたんですね」
小さな声で、自分自身に言い聞かせるように呟く。
光の粒が目の前で揺れる。
まるで時間がゆっくりと溶けていくかのようだった。
次の瞬間、視界の端に白い光が差し込む。
息をのむしおり。
そこに立っていたのは――結芽。
「しおり……やっと会えたね」
結芽の瞳は、あの戦いの記憶を越えたやさしい光に満ちていた。
白い羽織は風になびき、藤の香りが二人を包む。
しおりは少し驚き、しかしすぐに微笑んだ。
「はい……結芽先輩」
自然と敬語が抜け、呼び方が柔らかく変わった。
光は二人を取り巻き、まるで時空を超えた舞台のように世界を染める。
その中心で、しおりはそっと手を伸ばした。
結芽の手も同じように伸び、指先が触れ合う。
「ずっと、会いたかった」
結芽の声は、春の風のように優しく響いた。
しおりも同じ想いを返す。
「私もです……ずっと、待っていました」
そして、光の中にもう一つの気配が浮かび上がる。
淡い桃色の蝶が、ふわりと二人の間を舞った。
その羽は、かつての姉たち――胡蝶カナエと胡蝶しのぶの残した想いそのものだった。
「……お姉さんたちも、見守ってくれてるんですね」
結芽が微笑む。
しおりも頷き、空を見上げた。
光の中で、時間は静かに流れ、まるで世界が二人のために息をしているかのようだった。
「これからは、もう迷わない」
しおりの心に、確かな決意が宿る。
結芽も同じ光を感じ、握った手を強く包む。
風が吹き、藤の花びらが舞い上がる。
光に包まれた二人は、過去も未来も超えて、ただ今この瞬間を生きていた。
──二つの魂は、永遠に結ばれた。
その光は、まるで世界を灯す炎のように、静かに、そして確かに輝いていた。
終章 灯 幕明
♡、☆、フォロー、お願いします!












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。