第21話

地雷踏んだ
152
2026/02/21 04:36 更新
(なまえ)
あなた
オリ...?
あなたの結が寂れた看板の文字を音読すると、楡井がすかさずメモ帳を開いた。
楡井秋彦
楡井秋彦
獅子頭連のアジトは元々「オリオン座」という
潰れた映画館で、今は“オリ”と呼ばれているそうです
篭手切江
篭手切江
看板の文字をそのまま名前にしているんですね
日光一文字
日光一文字
足元にゴミが落ちているから踏まないように気を付けろ、ある...
いつものように「主」と呼ぼうとして暫し考えた日光が呼んだ名前であなたの結は吹き出すことになった。
日光一文字
日光一文字
...お嬢
(なまえ)
あなた
お嬢!?
篭手切江
篭手切江
ぶふっ...w
蘇枋隼飛
蘇枋隼飛
やっぱり極d...
(なまえ)
あなた
違うからね
それではまるであなたの結が極道のお嬢様のようではないか。
(なまえ)
あなた
(あながち間違ってないのが何かなぁ...)
見た目がカタギではない刀を何振りか思い浮かべているうちに、試合会場に到着してしまったらしい。
兎耳山丁子
兎耳山丁子
んじゃ、いっくよー
(なまえ)
あなた
はぁーい...
兎耳山が扉を押し開けると_____
兎耳山丁子
兎耳山丁子
選手入場ーー!
獅子頭連
わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
(なまえ)
あなた
うるさっ
獅子頭連の構成員が一斉に雄叫びを上げた。咄嗟に日光が両耳を塞いでくれたおかげで事なきを得たが、鼓膜が破れたらどうしてくれる。
mob
mob
おらぁ!面見せろ!
mob
mob
梅宮だ
mob
mob
隣のは柊か?
mob
mob
早く始めろー!
mob
mob
やっとか...
mob
mob
後ろの奴誰だ?
mob
mob
知らね
mob
mob
あの女が景品か?
mob
mob
隣の奴ひょろいな。ワンパンでいけそw
mob
mob
あれマジのヤクザか?
mob
mob
さぁな
好き勝手な憶測が飛び交う「オリ」の中。本音を言えばすぐに出ていきたい。
篭手切江
篭手切江
主、出ていきますか?
篭手切があなたの結を気づかって退出を進めてくれるが、あなたの結は首を横に振った。
(なまえ)
あなた
皆が私のために戦うのに、当の私が逃げたら格好つかないでしょ
日光一文字
日光一文字
ふっ...よく言ったな
日光が笑ってあなたの結の頭を軽く叩くように撫でる。誉めてくれる時の仕草はいつも同じだ。
桜遥
桜遥
お前知らねー間に肝座ったな
(なまえ)
あなた
そう?まあ十年近く経てばね。だからさ...
桜に軽く返して、隣でブルブル震えて俯いていた楡井の顎を持ち上げて顔を上げさせる。
(なまえ)
あなた
私も頑張るから、楡井君も顔上げよう
楡井秋彦
楡井秋彦
あなたの結さん...
楡井秋彦
楡井秋彦
はい!
(なまえ)
あなた
うん。男の子
楡井のくせ毛を二回撫でて、あなたの結は前に視線を向けた。相変わらず軽々とした動きで兎耳山がステージに飛び乗った。
兎耳山丁子
兎耳山丁子
さぁ皆!楽しい楽しいタイマン勝負の始まりだよ!!
獅子頭連
ワァァァァ!!!!
(なまえ)
あなた
ここの人達は叫ばないと死ぬの?
蘇枋隼飛
蘇枋隼飛
弱い犬ほどよく吠えるとも言うよ
(なまえ)
あなた
それだ
篭手切江
篭手切江
獅子は猫科ですけどね
日光一文字
日光一文字
言葉の綾だろう
叫び散らかす獅子頭連とは対照的に、梅宮の声は芯が真っ直ぐなよく通る声だった。
梅宮一
梅宮一
まったく、お祭り騒ぎにしちまって...
呆れた声で呟いてから、背後の後輩達を振り返った梅宮の表情には緊張も意気込みも見られない。
梅宮一
梅宮一
いいか?お前ら。こんな大事になっちま
ったが、本命はオレと兎耳山のタイマン
梅宮一
梅宮一
お前らの勝ち負けは勘定に入らないし、
それで隼瀬がどうこうなることもない
梅宮一
梅宮一
気楽に行ってこい!
(なまえ)
あなた
ご心配ありがとうございます。でも、
本人達はそれじゃイヤだと思いますよ?
桜遥
桜遥
そうだぜ。ふざけんな
楡井秋彦
楡井秋彦
あなたの結に視線を寄越された桜がバカにするなとでも言うように梅宮に真っ向から物申した。
桜遥
桜遥
勘定に入ろうが入らなかろうが、負ける気なんてさらさらねぇ
杉下京太郎
杉下京太郎
...
蘇枋隼飛
蘇枋隼飛
だね。負けられない理由もありすぎるし
あなたの結をチラ見した蘇枋の微笑みに、あなたの結も小さく頷きを返す。
(なまえ)
あなた
私もこんな場所には行きたくないので、
皆さんを全力で応援させてもらいます
篭手切江
篭手切江
あなたの結さんの事は我々にお任せを
日光一文字
日光一文字
好きなように暴れろ
柊登馬
柊登馬
...だってよ
呆れと関心を半分ずつ含んだ柊に振り返って言われた梅宮の顔に、勝ち気な笑みが広がった。
梅宮一
梅宮一
つくづく、頼もしいね!
兎耳山丁子
兎耳山丁子
さぁ梅ちゃんやろう!!早くやろう!!
兎耳山がステージの上から準備万端で手を振ったのを、十亀が止める。
十亀条
十亀条
いやいやぁ。大将が一番最初ってあり得ないから
十亀のやんわりとした制止の直後、観客席から手が上がった。
有馬雪成
大将ー、オレからやっていいか?
有馬雪成
さっきからあの長髪がチラチラガン飛ばしてきてうぜーんだわ
あの長髪、とは杉下の事だろう。
蘇枋隼飛
蘇枋隼飛
わー。杉下君ラブコールもらっちゃったねー
(なまえ)
あなた
どっちかっていうと果たし状でしょ。改めての
篭手切江
篭手切江
私の知るらぶこーるとは別のものですね
論評を聞いていない杉下は無言で梅宮を向いて視線で許可を乞う。
梅宮一
梅宮一
ま、いいんじゃない?
(なまえ)
あなた
軽いですね
梅宮一
梅宮一
重くなったってしょーがないからな
(なまえ)
あなた
そういう所尊敬します
梅宮一
梅宮一
あんがとさん
前に進み出る杉下の曲がった背中に、桜が声をかけた。
桜遥
桜遥
おい
杉下京太郎
杉下京太郎
...
桜遥
桜遥
お前とはまだ決着ついてねーんだ。だが...こんな
ダセー奴らに負ける奴なんかとは二度とやりたくねぇ
素直に応援できない桜と要領を得ない様子の杉下。桜の声がだんだん苛立ちを帯びてくる。
桜遥
桜遥
おい!聞いてんのか!!負けんなよって言ってんだよ!!
杉下京太郎
杉下京太郎
......
(なまえ)
あなた
頑張ってね杉下君。応援してるよ
杉下京太郎
杉下京太郎
......おう
桜遥
桜遥
おいちょっと待て!!何でオレは無視でこいつには返事すんだよ!!
篭手切江
篭手切江
言い方の問題では?
桜遥
桜遥
黙ってろ!!
杉下京太郎
杉下京太郎
......
そのままステージに上がってしまった杉下をこれ以上呼び止めるわけにもいかず、不機嫌な桜をぶら下げた一行は一番前の観客席に座った。
mob
mob
やれー!!
mob
mob
有馬ぁー!!
mob
mob
殺せー!!
日光一文字
日光一文字
...
(なまえ)
あなた
ほっとこう、日光
日光一文字
日光一文字
...そうだな
あまりにも無責任に放たれた「殺せ」という単語に反応しかけた日光の腕を引いて隣に座らせる。あの手合いには何を言っても無駄だ。
(なまえ)
あなた
(どうせ、何もわかってないんだから)
篭手切江
篭手切江
...
獅子頭連の無秩序さを諦観したあなたの結と篭手切と日光の横で、楡井がまたメモ帳を開いてページをめくる。
楡井秋彦
楡井秋彦
有馬有馬...あった!
楡井秋彦
楡井秋彦
有馬雪成...かなりのパワータイプのようです...
一撃であばらを数本折ったことがある!?
日光一文字
日光一文字
それくらいは普通ではないのか?
(なまえ)
あなた
日光ちょっと黙って
篭手切江
篭手切江
あくまでここの基準ですから
付喪神である刀剣男士の基準と生身の人間の基準を一緒にしてはいけない。
(なまえ)
あなた
んー...じゃあ小細工無しで火力勝負って事か。
比較的相性のいい相手とぶつかったみたいだね
蘇枋隼飛
蘇枋隼飛
うん。まぁ、杉下君も彼と同じようなもんだからね
梅宮一
梅宮一
いやいや
(なまえ)
あなた
梅宮一
梅宮一
一緒にするのは可哀想だ...
楡井秋彦
楡井秋彦
梅宮の意味深長な言葉に首を傾げたあなたの結と楡井の横で、桜はステージをじっと見つめていた。
有馬雪成
ったく...マジで癇に障る目ぇしてんな...
杉下京太郎
杉下京太郎
......

正面から有馬を睨む杉下の前で、有馬はバッと観客席を振り返った。

有馬雪成
おい梅宮、どうしたんだ!!

有馬の言葉に杉下が焦ったように観客席を振り向く。チラッとあなたの結も梅宮を見るが、至って普通だ。

(なまえ)
あなた
(なるほど。そういう手か)


振り向いて無防備になった杉下の右頬に、有馬の拳が勢いよく突き刺さった。

有馬雪成
ケンカ中によそ見すんなよバカが...
(なまえ)
あなた
あーあー...
桜遥
桜遥
......

拳を杉下の右頬に突き立てたままニヤニヤ笑う有馬の腕を、突然ガッと杉下が掴んだ。ギリギリと人間の骨から鳴っていいラインを外れた音が鳴る。

有馬雪成
あ...が...!?
杉下京太郎
杉下京太郎
さんだ...

拳を頬に突き立てられたままの杉下がグルンッと有馬を振り向いて、固まった有馬の顔面を大きな手で掴む。

有馬雪成
ふぐっ...

杉下が一歩踏み込み、有馬をステージに叩きつけた。

ド  ゴ  ッ  !  !  !  !

力一杯叩きつけられた有馬の後頭部がステージの床板に当たって鳴った鈍い音に、会場の殆どの人間が驚愕した。
あなたの結と日光と篭手切と、桜以外の全員が。
杉下京太郎
杉下京太郎
梅宮“さん”だ。バカが

(なまえ)
あなた
地雷踏んだね...
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