諸伏「油断すること、すなわち大いなる敵となり」
『なんで、コウメイがここにいるの.....?』
先に考古学館を後にしたのはあなたの一人称。そして、高校時代の話とはいえども、コウメイとあなたの一人称の
足の速さはあまり変わらない。高校時代で大差ないなら、きっと今も大差ないだろう。
それに、車で来たとしても、いまあなたの一人称がいるところは来るまで来れる道から
しばらく歩かなければならない。しかもけっこう山の中の変なところだから、
ピンポイントで見つけられるはずがないのだ。
諸伏「なんで、って怪盗あなたの怪盗の名前を捕まえるために、ですが」
『そういうことじゃなくて。ごめん聞き方が悪かったね。なんであなたの一人称がここに来るより先に、君がここにいるんだい?』
諸伏「先見の明...、いや、心を以って心を伝う、といったほうがよいでしょうか?君の動きなど、すべて掌中です」
『君と以心伝心なんて、今はもうできないだろう。何年会ってなかったと思うんだい?』
諸伏「三つ子の魂百まで、とも言いますし。なにも昔と変わっていませんよ、あなたの名字」
『だから全部お見通し、と?』
諸伏「ええ。珍しく、根拠もなにもなく、直感を信じて動いてみました。そうしたら、こうして君が現れた」
『コウメイの名推理のもと、行動が読まれてたわけではないのか』
諸伏「何年一緒に過ごしたと思ってるんですか。親友の考え、癖、何から何まで把握済みです」
『なにそれ、ちょっと怖いなぁ』
諸伏「お互い様でしょう?君だって、私のほとんどを知っている」
『そうかもね。君ほどじゃないけれど、推理力はあったからさ。確かに、そこそこ君の考えてることはわかったよ』
諸伏「しかし、ふたつだけわからないことがあるんですよ」
『コウメイも分からないことが?』
諸伏「何故、君のような人が怪盗なんかになったのか」
何故、あなたの一人称が怪盗になったか___?
諸伏「何故、私の考えだって読めたはずの君が、こうして追い詰められているのか」
何故、あなたの一人称が逃げなかったのか___?
諸伏「それだけは、分からないんです」
『推理力、足りてないんじゃない?まあそうだよね、コウメイは警察であって探偵じゃない。専門分野は推理じゃないもんね』
諸伏「ノーヒントでは、私も流石にわかりません」
『ノーヒント?何を言ってるのさ。ほぼ答えにも等しい情報を、君はもっている』
諸伏「そんなはず……」
『忘れてるわけないでしょ。予告状に書かれていた日にち。ちゃんと伝わってたじゃないか』
諸伏「約束……フッ、バカですね、君」
『そうだね、正当な道で立派な考古学者になるには、あなたの一人称はバカすぎた。そんなに頭良くなかったからさ』
諸伏「しかし、怪盗になんかならないで、と言ったはずですが」
『昔っから、ダメって言われたことはよくやる子だったでしょ?あなたの一人称』
諸伏「それも、そうでしたね」
『それに、ニュースであなたの一人称のことを見れるのも楽しみにしていたようだったからさ。叶えてあげたってわけ、守ったわけ。コウメイ、君との約束を』
諸伏「望んだ形とは違いましたけどね」
『ほとんど変わんないでしょ。研究所からの発表だったか、怪盗からの予告だったか、たったそれだけの違い。中身は一緒』
君と約束をした日、今から20年前の話。
小学校4年生だった頃の社会見学の日。たしか、日付は今日とおんなじ5月の10日だったっけ。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。