意を決して木箱を開けようと手をかけると
鍵がかかっているということもなく簡単に開いた
中に入っていたのは古めかしい折りたたまれた紙と
月が描かれた彩やかな鍔が入っていた
どちらも家で過ごしている時に見たことは無いため
尚更母の意図がよく分からなくなった
そしてそれと同時に、少しだけ期待をしていた私が
諦めと虚しさを抱えて奥底に消えたように感じた
まるで、これ以上期待するなと言わんばかりに
自分が傷付かないために、壁を作るように
まずはその紙だけを取り出し、目の前に広げる
とても綺麗な字で " 月の呼吸の継承について "
と初めに書かれていた
どうやら師範も知らない呼吸のようで
このまま読み進めてもいいものかと躊躇うが
母が何故これを私に渡したかったのか
それを知る為にもまずは読んでみるべきだろう
壱の型 《明月之珠》
弐の型《光風霽月》
参の型《皓月千里》
肆の型《嘯風弄月》
伍の型《日月星辰》
終の型《____________》
伍の型までは全てしっかり書かれているのに
終の型だけ文字がそこだけ抜き取られたかのように
読むことが出来なかった
この紙からは独特の気配がした
今では忘れられた術がかけられているかのような
そう考えると終の型だけ文字が無いのも理解できる
もしかすると本当に " 抜き取られた " のだろうか
この紙には著名者の名前が記載されておらず
一体誰が書き、何故家に置いてあったのかは
依然として謎のままだった
にしてはどこにも傷は付いておらず
人が使ったような痕跡は見当たらなかった
まるで私のために用意されたのではと思うほど
この鍔に不思議と引き寄せられるように感じた
師範の言いたいことは表情から見て取れる
師範は月の呼吸の使い手ではないため、
会得するとしたら私一人でやるしかないのだ
どんな技なのか、どのような呼吸なのか
何一つ分からない状況で会得するなんて
不可能に近いことはよく分かっている
それでも、私は
その時ふいに思ってしまった
これは母が私に課せた試練なのではないだろうかと
私が父と母がくれたものを偽りだと証明するには
これしかないのだと本能的に思った
そんな身勝手で行うには些か難題な気もするが
暗く寂しいあの過去を捨て去るために
どんなことでもやってのけようと決心し
握った拳に再び力を込めた
***
難しい言葉は知らないので型の名前は四字熟語にしました!
今回出すの遅くなって申し訳ないです😿
🪽🪄
それと⇡こちらファンマなので付けてくださると嬉しいです!













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!